#34

 とにかく疲れた。

 人間以外のものと付き合うこと。

 特殊な性質のものが固まって、一つの目標を達成しようとすること。

 自分がリーダーの役割を買って出たわけでもないのに、そう決められたわけでもないのに、勝手にあれこれ酷く悩んで、精神的に困憊している。

 私は愚かな人間だ。そして尚且つ、何も達成できていない。

 ヒッキーの影響を凄く感じる。旅館の部屋を出るのも辛い。一々口に出して言いはしないけれど、部屋から出ようと思うと体が酷く重いのだ。怠けていたいが、一方で、娘さんのことが心配でならない。辛い。蝶々のことを思い出す。屋根の向こうに消えて行った蝶々。それを追う私は、今思えば、無邪気で幸せ者だったように思う。

 もしかしたら、思い違いかもしれないが。

『今思えば』という部分に言葉と記憶のトリックが隠されているのだろう。

 私は何者なのだろうか。

 ああ気持ち悪い。

 頭がぐちゃぐちゃだ。

 これは、これが、思春期の病というものなのだろうか。

 ペッチペチの母は相当に衰弱している。

 見ていて胸が痛い。

 時々、平手で叩かれて、でもまだ生きている虫のような、ぎこちない動きをする。

 私は2、3言声をかけたりもするが、何の役にも立てるわけではなく、前を向いて、さあ行かなきゃという格好をするだけだ。


 行く場所なんてないのに。 


 そうすることが、まるで良いことみたいに。

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