第3話 警備員とメール

マリンと別れてから俺は今晩の宿を探していた。とりあえず雨風防げる場所ならどこでもいいので、

適当に探しているところだ。

「イリアさんも宿については何も書いてくれてないし、誰かに聞くか」

そう思い、道の周りを見ると軽装備の同じくらいの青年が壁に寄りかかっているところを発見した。

「よし声、ちょっと声をかけてみるか。すみませーーん」

俺の声に反応したのか顔を上げてこちらを見る。

「ん?ええっと、僕に話しかけたのかな?」

「ええ、少しお尋ねしたいことがあるのですが、お時間よろしいですか?」

「ははは!そんなかしこまらなくていいよ」

感じのいいやつでよかった。見たところ、中性的な顔立ちで一瞬迷ったが多分男……だよな?

同じくらいの年かな……とりあえず聞いてみよう。

「そうか、実は今日泊まる宿がなくて困っているんだ。どこか安くてもいいから場所を教えてくれなか?」

文字が読めないというのがここまで苦労すると思わなかった。建物の看板を見ても何を書いているかがわからない。

……今までこんなことなかったしなーー

「あーーそれは大変だねーー、そうだな……何か紙なんか持っていない?」

「紙?ああ、こんなものならあるけど……」

とイリスさんからもらった紙の裏側を見せる。

「ごめんね!ここの持ち場を離れるわけにはいかなくて……簡単な地図で勘弁してくれる?」

「いや、大丈夫だ。悪いなーー仕事中だったのか」

「うん、ここら辺の監視みたいなものなんだよ。あ!僕の名前はドルジだよーー」

「ええっと、俺はユウマだよろしく」

「うん、よろしく!」

軽く自己紹介しながらも地図を書く手は止まっていない。

てか、うまいな!!字は読めないけど、絵も描いてくれてとてもわかりやすい。

「はい!できたよ!ここから西に行って三つ目を曲がって……」



「おけ!多分大丈夫だ!」

「そう?ごめんねついて行けなくて……」

申し訳なさそうにドルジが謝る。

「いやいや!むしろここまでしてくれて感謝だよ!」

いやほんと、親切なやつでよかったよ。適当に案内されたら文字が読めない俺にとっては意味がないからな。

「そ、そう?よかったーー」

とドルジが笑顔になる。

……一瞬惚れそうになったがなんとか理性は保てたぞ

「ああ、ほんとありがとな。こっちこそ悪いな、仕事の邪魔をして」

「ううん、気にしないで。そうだ!ねぇねぇ!今ギルドカード持ってる?」

「ギルドカード?あるけどどうした?」

「ふっふーん、このギルドカードにはね、友達と連絡取れる機能があるんだ!」

「マジか!?そんなことできるのか!?」

メールみたいなやつなのか……と考えていたら

「うん!めーるって言うんだけど最近追加された機能でさーー!ギルドカードで手紙みたいなのが遅れるんだ!」

ギルドカードをいじってみると「メール」っていう機能を見つけた。

……ここ世界にこんなものがあるってどういうことだ?もしかして……

「ねぇ聞いてるーー?」

「え?ああ!聞いてる聞いてる」

「もう!ここに相手のギルドカードの番号を入れると登録されて、ここを押すとこんな画面が出るんだ!」

ドルジが操作するとギルドカードが携帯みたいに文字が浮かび、これをうって文章を作成するっぽい

……ただやっぱり読めない

「ああすまん!こういうのよくわかんなくてな、登録してもらっていいか?」

とギルドカードを渡す。

「うん、わかった!」

と、少しぎこちない様子だが、うまくできたようだ。

「はい!オッケーだよ」

「おう、サンキュー!じゃあ今度お礼するからまた連絡するわ!」

「わかった!じゃあ気をつけてねーー!」

そう言って俺たちは別れた。

少し後悔したのは、歩いている途中でメールがきたが、何を書いているかわかららず、すぐ返信できそうにもないことだった。

よし!宿に着いたらなんて書いてあるか聞こう

……しっかしこの機能、明らかにこれは俺がいた世界のものだ。

おそらく、文字の配列もパソコンのキーボードと同じに違いない。

「もしかしたら……他にも、俺がいた世界から人が来ているのかもな……」

もしそうなら……思い出話でもしてみたいものだ。


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