第8話 邪神と聖剣
カタカタカタ、と何かの音がする。何か軽い物質同士をぶつけたような音。レジスをうろつく魔物のうちの一体、スケルトン。動き回る人骨は弓や槍、剣を持って人を襲うが、そこまで強くはない。
スケルトンたちは逃げ惑う人々を追いかけて、武器を振りかざす。
「魔物だ! やっちまえ!」
「おらっ!」
が、それを阻む人々がスケルトンを取り囲む。遠くから弓を引き、先に弓使いのスケルトンを狙う。その隙に複数の冒険者が近接戦を仕掛ける。
「はぁっ!」
「たぁっ!」
掛け声と共に、剣や斧を振り回してスケルトンの頭部を狙うが、そう簡単に倒せるものでもない。魔物はすべて、どんなものでさえ人間よりも身体能力は高い。なんとか数で勝っている冒険者がスケルトンの動きを封じている程度だ。
「お前ら、一旦下がれ!」
一人の男性の指示により、冒険者は後退する。それ目掛けて、スケルトンが弓を引こうとするのを矢を当てて防ぐ。矢が当たっているのは弓のスケルトンのみ。近接武器を持つスケルトンはそのまま追いかけてくる。
それを待ちわびていたかのように、冒険者たちは笑う。勝利を確信した笑みを浮かべて、スケルトンと対峙する。
それと同時に、スケルトン目掛けて炎や光、氷などのものが降りかかる。魔法だ。魔法によって、ダメージを負ったスケルトンへ、冒険者たちは一斉に畳み掛けてスケルトンをすべて倒してしまう。
弓使い、魔法使い、そして近接武器使いの冒険者たち。彼らはたまたま、ラディアが戦闘中に発動した"ダストデビルストライク"を目撃して、集まってきた者たちだった。ラディア・ハイレディンという冒険者は強い。彼女と協力して、ここから脱出しようと目論んでいた連中がたまたまある地点で合流した。
「よし、お前ら。まだまだ行くぞ」
彼らを引っ張るのは、大柄な男。冒険者というよりは、まるで盗賊の親分でもやっているような風貌をしているが、冒険者ギルドのマスターを勤めている。ラディアを探しにやってきた冒険者たちはギルドマスターによって統率されていた。
「で、マスター。どうします? これだけ数がいても、なかなか厳しいと思いますよ」
「せめて、ラディアが生きていればな……」
「……」
重い空気が辺りを漂う。
彼らも、ラディアの死を目撃してしまった。腹に穴の開けたラディアの死体が転がっているのを見たからこそ、ラディアに頼れないのならここにいる者たちでなんとかしなければならないため、こうやって団結している。
「シュバルツ探さないのか?」
「確かに。今のままだとなあ」
「ラディアを殺ったやつがいるんだ。数が多くても、この集団だけじゃ殺られちまう」
「魔物はなんとかできても、魔族をなんとかするのは無理だろうな」
「ずっとこの調子で戦いを続けてたら魔力が持たねえ」
周囲は敵だらけで助けてくれる英雄がいるわけでもない。みんな、不安にかられて口々にそれを吐き出すように言う。全員の不安が暗い空気を形作る。
「おい、みんな! 朗報だ!」
それを打ち破る声が響く。
「王女カティアが動いた! 義勇兵を募ってレジスに来るそうだ!」
「なんだって!?」
「第一王女が直々に!?」
「ははは、王女様が活発だという噂は聞いたことあるけど、まさか民を救いにわざわざ来てくれるとはな」
まだ、レジスが襲われてから数時間しか経っていない。国王はそのうち何かしらの決断を下すだろうが、それは当分後になるだろうと思われていた。
それに、もしかしたらここにいる全員を見殺しにしてレジス全域を焼き払うという可能性すらあったのだ。なのに、王女から直々に義勇兵を率いてレジスまで来てくれるという。生き残る可能性の高いチャンスが巡ってきた。
その知らせに、冒険者全員は心踊らせた。やる気をもりもりと上げて生き残るために奮闘する。
「こりゃ、何がなんでもやるしかねーな」
マスターも、巨大な斧を担いでニッと笑う。
「行きましょうぜマスター」
「こうなったら、何が何でも生き残るしかないですよ」
「魔物がなんだ、全部ぶっ倒してさっさとレジスから逃げましょうぜ」
沸き上がる歓声。武器や魔道具を手に取って、冒険者たちは生き残るために、カティアが来るまで魔物を退けてレジスから逃げることを選んだ。
◆
光の粒がふわふわと周囲に漂わせている不思議な剣、白銀で所々に刺繍の施された輝かしい光沢のある傷や曇りのない綺麗な鎧。それに身に纏ったユーミットの見た目は、本人の言うようにまさに勇者を思わせるものだった。
ただ、アリアは唖然としていた。勇者がいるということは前々から知っていて、その登場を望んでいた時でさえあったのに、いざ登場されてしまえばそれを喜ぶよりも先に戸惑った。
レジスという町はベルナルドの中でも端に位置している。そんなところに勇者なんているわけもない、と勝手に思い込んでいた。
確かに、急に武器と鎧を召喚なんてしてしまえば何者かはわからないが只者ではないと思うものだろう。たった一人で危険な依頼をこなしていたという話も勇者ならば納得がいく話だ。
「アリアさん、行きましょう」
スッ、とユーミットは変身を解いて、ぐいっとアリアの手を引っ張って、ユーミットは歩き始める。
「わわっ」
力強く引っ張るユーミットの手を振りほどくことも出来ずに、そのまま引っ張られていく。女神だから、普通の人間よりも力が弱いが、それでもユーミットの力は強すぎる。さすが勇者、と言ったところか。
それにしても、痛い。いつも癖で体に纏わせている"プロテクト"があるから大丈夫なのだが、その上からかけられる圧力が内部にも伝わってきて、アリアの腕に地味にダメージが蓄積されていく。
「痛いですよ!」
「あ、ご、ごめん」
「今度からは気を付けてくださいよ!」
と、唇を尖らせてプイッとそっぽ向く。
アリアからしてみれば本気で怒っているわけではない、という合図だ。ユーミットがいい人であることはアリアも重々承知しているので、きっと悪気はないだろうと思っているからだ。
なのに、ユーミットはそんなアリアの様子を見て、目を丸くして驚いている。心なしか、その顔は紅潮しているようにも見える。予想外の反応に、思わずアリアは問いかける。
「な、なんですか?」
「だって、アリアさんの反応が可愛いから」
ユーミットは笑ってそう言う。
前から好きだとか、直接的に好意を告げてくる相手だったけど、面と向かって可愛いと言われるとさすがに恥ずかしい。
「そ、それはどうせ私が女神になった時に容姿も変わっただけで……」
顔が少し熱くなっていくのを感じる。その様子を見て、さらにユーミットは笑う。
「僕は容姿じゃなくて、反応のことを言ってたんですよ? やっぱり、可愛い人ですよアリアさんは」
「や、やめてくださいよ」
「まあ、この話はこれくらいにして。今はさっさとアリアさんの仲間を探しに行きましょう」
直ぐ様、真剣な表情になる。その雰囲気の変わり様は先程までアリアをからかっていた人と同じとは思えない。
「そうですね。さっさと、シュバルツを探さないと」
「……ん? 魔導師シュバルツバルトだけですか? ラディア・ハイレディンを探さなくてもいいのですか?」
「っ……ラディアさんは……」
「ふふっ、ラディア・ハイレディンは死んだよ。魔族に殺されちゃった。お腹に槍をぶっ刺されて、見事にぶっ殺されちゃった」
クスクス、と笑う声がする。ラディアの死を嘲笑うその言動。聞き覚えのある声に、思わず振り向く。
「っ……ルルフ、ラディアさんを侮辱するような真似はやめてください」
「だってさ、私は君を食べたいのにいつまでも邪魔が入るんだもの」
髪も肌も不自然なその容姿。ニッ、と嫌な笑みを浮かべたアリアにとって忌避すべき存在――ルルフだ。
「と言いつつ、あなたは私のことを襲ったりはしませんよね。最初の時も、私に魔法を使わせようとしてたみたいですし」
「そうだね。君が、しっかりと闇に染まってくれれば易々と食べられたんだけどね」
この少女は何を考えているのか、未だによくわからない。思わず、ラディアの遺品のナイフを握りしめる。全身にはまだ風が纏われている。いざとなれば、攻撃に移るのもやぶさかではない。
「ルルフ、聞いたことのある名前ですね」
冷たい声で、その間にユーミットが入ってくる。黒い髪の合間から覗かせるその瞳はどこか冷たい。
「確か、邪神でしたか。どこかで崇拝されていて、さらにはかなりの被害を出した、とか」
服の袖を巻くって、腕輪を見せる。胸元から、ペンダントのようなものが飛び出てくる。十字架のものだ。
「十字架のペンダントに勇者の腕輪……神殿の勇者、ね」
ユーミットの様子を見て、興味深そうに呟いた。
【神殿】というのは宗教組織だ。この世界にはキリストも唯一神だって存在しないが、代わりのように信仰の対象が存在する。"聖の神"と、一般的に呼ばれているその神を崇め、その信者を纏めあげた世界を股にかける大組織だ。
他にも色々とあるのだろうが、アリアはそれを知らないが、きっと邪神などの存在は神殿にとっては許すべき相手ではないのだろう。
そして、あの腕輪。見た限りではあれは勇者に変身するために使っていた。きっと、あれが人を勇者にするためのアイテムなのだろう。
ということは、ユーミットは女神によって勇者にされた人間ということだ。
「昨今、一度勇者によって撃退されていたから、邪神ルルフの名を効くことはなかった。でも、今こうして目の前に現れたのなら、討つしかない」
そして、ユーミットは腕輪に触れる。目映い光に包まれて、光輝く剣と白銀の鎧に身を包む。
「やっぱり、腕輪付きだ」
勇者になったユーミットを見ても、ルルフはやけに愉快そうにしている。
「――あなたの魂を、神の御許へお送りしましょう」
ユーミットは、剣の切っ先をルルフへ突きつけた。
「……へぇ、やけに嫌な剣を持ってるね」
その剣は刀身が発光していて、いつでもその目映い光を放っている。離れていても、その剣の存在感はひしひしと伝わってくる。
まるでそれは神の奇跡に立ち会ったかのように、体の底に直接伝わってくる。本能でわかる、これが神聖な代物であるということが。
きっと、邪悪な存在であるルルフには天敵なのだろう。
「さあ、聖の神の名の下に邪神へ天の裁きを下しましょう」
そうして、ユーミットは踏み込んだ。剣を構えて地面を蹴り、ルルフへ接近する。ルルフへその剣が迫る。
「君じゃ無理だよ」
振り下ろされる剣は、暗く濁った膜によって遮られる。激しい衝撃音が辺りに響く。遠く離れたアリアの肌にもピリピリと伝わる。剣の刃はルルフに届くこともなく弾かれてしまった。
「……なるほど」
"プロテクト"と似た防御魔法。見た目はともかく、その性能はまさにアリアの使う防御魔法を遥かに凌駕している。ユーミットに攻撃を許さない絶対の防御がルルフを守る。
「どうしたの? 勇者様」
ニタニタ、嫌な笑みを浮かべる。ルルフはあの程度の攻撃ではこれを破ることができない、とわかっていたのだろう。
「なるほど、以外と面倒くさい相手ですね。でも、この程度なら……!」
それでも、ユーミットは落ち着いたまま焦ることもない。
一歩下がり剣を握り直し、目を見開いて剣の柄を強く握りしめる。剣の光が一段と増す。光輝く剣が弧を描く。
「たぁぁぁっ!」
再び、ユーミットは剣を振り下ろす。
まるで、バターでも切るように濁った膜に刃が入り込み、膜がひび割れて破壊される。
「もう、激しいね君は……」
が、膜を断ち切った刃がルルフに到達することはなかった。なんとかアリアが視認できるほどの速度で迫る刃を軽々と、ルルフは避ける。振った剣圧によって起きる風が、ルルフの頬を撫でる。
「……結構ユーミットさんめちゃくちゃだなぁ。それにしても、さすが勇者」
アリアはポツリと一人呟いた。明らかに強固な防御魔法を力づくで打ち破ってしまったその力はさすが勇者というべきだろう。その一撃ですら、きっとアリアは防ぎきれずに一太刀を浴びて見事に真っ二つにされてしまうだろう。
「さてさて、やられっぱなしってわけにもいかないよね」
にっこりと笑って、ルルフは背後に魔方陣を展開する。
「させないっ! "身体強化"」
それを未然に防ぐために運動性能を向上させて、一気に距離を詰めるユーミット。
だが、届く間もなく魔法は展開される。
「っ!?」
魔方陣から放たれた、黒く泥々とした糸のようなものが無数にユーミットに絡み付く。振り払おうとしても、離れずにユーミットの行動を制限する。上段に構えて、これからルルフへ叩きつける寸前で邪魔が入り、剣があと一歩のところで止まる。
「ふふっ、惜しいね」
ルルフは嘲笑する。勝ち誇った笑みだ。この勇者は自分にとってはとるに足らない存在なのだろう、と確信しているのだろう。
それにしても、ルルフはアリアを食べようとしていた存在だ。それは、アリアの予測では弱っているからだと考えていた。シュバルツと遭遇したときもすぐに接触することをやめていた。
だが、今の光景を見るに、そういうことはないらしい。アリアを補食する理由は、ただ美味しいと思ったからなのだろうか。
結局、ルルフが何なのかはよくわからないが、気にしないでもいいだろう。
きっと、ユーミットが倒してくれるのだから。
「惜しい、ですか。そうですね。あなたが満身などせずにさっさと僕にダメージを与えていればよかったのに」
ユーミットの纏っている白銀の鎧に絡みついているルルフの魔法が、急に弾かれた。ユーミットを拘束していた部分だけ、かき消された。目的を失った魔法は自然と消滅する。
「なっ、なんで……!?」
ルルフは目を見開いて、驚いている。
「この鎧はある程度の魔法を弾く力があるんですよ」
「腕輪付きの勇者が、"ギア"を二つも取得してるわけっ、がああああっ!」
拘束の解けたユーミットは、あと一歩届かなかったその剣を、そのままルルフに向けて振るう。喋っている途中のルルフの右目を軽々と切り裂いて、彼女の帰り血でその刀身を血で滴らせる。
「くそっ、これだから……聖剣とか、持ってる連中は……嫌なんだよっ!」
右目を押さえて、流れる血で手を血に染めて、ルルフは叫ぶ。大地が揺れ、ユーミットの左右の地面に穴が空いて、そこから巨大な腕が生えてユーミットを掴もうとする。後ろに下がってそれを避けると、同じようにルルフも距離を取る。地面から生えた腕がユーミットをルルフに近づけさせないように暴れ、ユーミットはそれを掻い潜ってルルフに近づいてく。
――これは、なんとも都合のいい展開だなあ。
と、そんなことを心の中で思いながら見てしまう。
あの、煩わしかったルルフが一太刀を浴びせられて、少しだけ押されている。
決して、ルルフが弱いわけではない。"身体強化"まで使っておいて、まだユーミットが与えたのは鎧の能力によって不意打ちに近い一撃のみ。
現在は、ルルフは地面から次々と腕を生やして、自分に近づけまいとし、間一髪のところでユーミットがそれをなんとか躱している。
傷を一つ与えたユーミットの方が優勢とは言え、運動性能まで上げたのに追い詰められつつある。戦いはまだ長引きそうだ。
いまいち信用できないが、なぜかこちらに友好的に接してくれていただけの人がまさか勇者で、自分にまとわりついてくる邪神を倒さんとしている。
まるで、運命に愛されているようだ。
――だが、そんな心情とと裏腹にユーミットも死んでくれないか、と思ってしまう。
何せ、アリアは転生してからずっと生への驚異的な執着がある。死を強く恐怖している。一度は、仲間を得て人助けをするヒーラーとして数日過ごして安らいだが、それが壊れた今、またむくむくとそんな心が膨らんできている。
だから、生きたいと強く願う心が"信用できない"という理由だけでユーミットの死を願ってしまう。
でも、そんな心が浮かんでくる度にアリアは一つずつ無理矢理押さえつけて潰していく。
だって、生へ執着するのも死へ恐怖するのも、アリアはやり過ぎてしまうから。他人の生へ嫉妬して殺意が芽生えたり、自分へ危害を加える可能性があるだけで死んでくれないかな、と考える行為は「笑って生きて」と言ってくれたラディアの言葉とは相容れないからだ。
こんな風に生きるんじゃ、笑えない。ラディアから冒険者として生きた証を受け取ったからには、彼女の最後の言葉を実行するのが、彼女の死へ報いる方法だろうからだ。
それに、風の妖精からもラディアの死を無駄にしないで、と言われている。加護まで受け取ってしまった。無下にできるはずがない。
それと同時に、そのラディアの――この世界ではじめて助けてくれた人の命を奪ったあの槍の少女への憎悪を込めて、生への執着をバラバラにして噛み砕く。
アリアの心情は大いに変化していた。
そうして、心を落ち着けて再び戦いへ目をやる。
ルルフは地面から腕を生やすだけじゃなく、遠距離から、黒い弾を連続で射出している。何かの魔法だろうか。
対するユーミットは腕を躱して、その黒い弾を剣で弾いている。
「はははっ! ギア二つ持ちの癖に、私に一撃しか与えられないなんて、なんとも頼りにならない勇者だよ、あっはははっ!」
その膠着している状態で、とても愉快そうにルルフは笑う。片目を抉られつつも、なんとも余裕そうだ。
「選ばれた勇者ではないですから。それでも、かの邪神を追い詰められるのなら十分ですよ。あなたはさっさと、魂を神へ捧げるべきです」
対するユーミットは、ルルフの攻撃を的確に対処している。笑うユーミットを気にすることもなく、攻撃をすべて弾くなり避けるなりして、なんとかしていくがその表情は厳しい。ルルフの攻撃が激しく、攻勢に転じる隙がない。防戦一方になってしまう。
「はははっ、なんだ勇者って言ってもたいしたことないじゃない」
「俺からしたら、邪神の方がたいしたことないって言えるんじゃないかと思うんだけどな」
「……その……声は……」
二人の攻撃の最中に、聞こえてくる声。聞いたことのある声。会いたかった相手だ。
「まさか、勇者がいるとは思わなかったけどな」
「シュバルツっ!」
ルルフの表情から笑いが消えた。表情が一気に険しくなる。それと共に、ユーミットへの攻撃も弱まる。
「さすがに、二人相手は無理だ……っ」
ルルフは黒い弾を地面に叩きつけて、土ぼこりを巻き上げる。視界が土ぼこりに包まれる。逃げるつもりだ。
「逃がしませんよ」
ユーミットは剣を上に掲げた。光が、剣に集まる。だんだんとその光は強くなり、まるで刀身そのものが光で構成されているかのように錯覚する。
まさに、邪を裂く浄化の剣。――聖剣と呼ぶのに相応しい。
「――怒り狂え、バンダースナッチッ!」
そして、その剣を上段に構えて振るう。剣から放たれるのは集まった光。膨大な光が束となって、土ぼこりを吹き飛ばしてルルフへ向かう。
「なっ!?」
圧倒的な光の奔流、それがルルフを飲み込む。収束する光によって、ルルフを通り越して遠くまで突き進んでいく。
「ああああああっ!」
甲高い叫び声、それは勇者の剣がルルフに効いたという証。
勇者の剣から放った光線が、ルルフを焼き払った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます