第22話 自己治療

 目覚めると心が多少軽くなっていた。思考力が低下していた時は、霞がかかったように思考の輪郭が曖昧になり、鬱が襲って心を掻き消していく。考えても無駄だったので思考を放棄していた。


 これから日記をつける事にした。書く事が苦しくなれば休めばいい。文字にすると忘れない。何よりも久しぶりにやる事ができて嬉しかった。心のどす黒いものを吐き出すようにして机に向かった。


 相変わらずの身体の倦怠感は続いていた。友人の名前などの固有名詞がなかなか出てこないが焦ってはいけない。時間だけはたっぷりある。


 朝食を食べてを散歩して、日光を浴びた。久しぶりの運動でお腹が空いたのでランチも食べた。夜は食べないようにした。水分補給をまめにして一日の終わりに日記をつけた。


 洗濯は一週間に一度コインランドリーのあるビデオ個室で済ませ、その時に映画とお笑いDVDを借りた。ジブリ作品は心に沁みて、アメトークでは声を出して笑った。


 三日に一度はスパに行き大きな湯船に体を沈め、手足を伸ばしてリラックスした。身も心も洗われて気力が満ちていく。体重計に乗ると十キロ増えていた。鏡に映すとお腹がぽっこり出て顔がむくんでいる。マットで寝すぎたために背中に大量の汗疹あせもができていた。風呂上がりはコーヒー牛乳を飲んで、その後は食堂で秋刀魚定食を頼みビールをチビチビ飲んだ。ゆっくりよく噛んで時間をかけて食事を楽しんだ。


 気晴らしの散歩で寄った花園神社でおみくじを引いた。小吉だった。


「教え」世の中で一番醜いことは、他人の生活を羨むことである。悩み事あり思うにまかせません。全て控えめにして時の来るのを待つのです。身を守ることを忘れてはなりません。

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