第3話 失踪

 一時間ぐらい呆けていた。両親、友人、仕事の関係者に合わせる顔がない。今頃みんなどうしているだろうか? 空腹感と凄まじい眠気に襲われる。とにかく疲れた。林を抜けて駅まで戻り、福井駅で降りて立ち食いそばを食べた。空腹を満たして考える。このまま田舎に戻り両親に全てをぶちまけてやりたくなったが、自分が情けなさすぎてどうしてもできなかった。馬鹿だ。死んでしまえ。

 見知らぬ土地に行く気も起きず、東京に戻りネットカフェに泊まった。とにかく横になりたかったが、その日は興奮していてよく眠れなかった。


 翌日、自首するつもりで働いていた会社近くまで来たが、結局足がすくんでしまった。どうしようもない。


 再びネットカフェに泊まる。そこで初めて風呂に入っていない事に気づいた。汚れたスニーカーと、足の裏の土。脂ぎって固まった髪とテカった顔。暴れた時にできた身体中の傷と草のついたパーカー。鏡に映すと酷い姿だった。無精髭もすごい。熱いシャワーが傷にしみた。久しぶりにさっぱりして泥のように眠った。

十二時間眠れた。でも起きてしばらくすると激しい鬱が襲ってきた。起き上がれない程の体の倦怠感。


 ネットを使い自分の症状を調べる。検索ワード「鬱、ストレス、心の病気、死にたい、生きるためには、死ぬ方法、失踪」などを休みながら何度も何度も調べて心が壊れそうだった。ネットの無料ストレスチェックでは「すぐに病院に行け」となった。しかし私は心療内科の医者をどうしても信用できなかった。

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