3 ステータスを確認しましょう
朝だと思っていたけれど、実は昼だったということに声を出した後に気がついた。時間というものはどうしようもないくらいに早く過ぎるものだ。
まあ、大学行かないよね。
そもそも大学という教育機関が間違っている。そもそも教育というもののあり方が間違っている。きっとそうなんだ。そういえば、有名な大学の教授もこの間のワイドショーでそんなことを騒いでいた。大学という機関は研究が優先されるべきでどうたらこうたら。
結局のところ自分の意見を正当化したいだけだと内心わかってはいるけれど、それを押し込めて、自分にとって良い方向に向かう意見を述べる自分にまた嫌気がさした。
そんな自分から目を背けるようにして、窓から差し込む光を眺める。それは僕に希望というものを連想させた。
希望? なにそれおいしいの?
と、そんな思考になる。未だに希望というものを求めたことはない。希望は『奇跡』とかそういうようなまれに起こる事柄のような響きを持っているように僕は聞こえる。そんなものは、結局のところ、自分にはどうしようもないことをどうにかする(あるいはどうにかしたい)ときについつい考えてしまう、自分にとって都合のいい想像だ。
希望とか奇跡とかそういうものはたぶんどこにも落っこちていない。それは三流大学に入学したバカな僕でもわかる。この世界にあるのはただ欲にまみれた人間と変えることのできない残酷な現実だ。嘘をつくことで自分の立場を高く見せたり、何かを手に入れたいからと言って他者をだましたりする人間がいる世界だ。生まれながらに敗者になるものがいたり、他人を見下すことのできるような地位に就く勝者がいたりする世界だ。
ただ、僕はそういう世界を恨むとかそういうことをしたことは一度として無い。それは無意味だと理解しているから。どれだけ世界を変えたいと願う奴がいたとしても、そういう奴からいいように何かを搾取している奴の方が多いから、世界は変わることがないと知っているからだ。
だから、ただ、無気力。何をしても、きっと僕は敗者のままだろうな。なら、努力してもしょうがないじゃん、とかそんな風に考える自分にまた嫌気がさした。
普通になりたい、とひたすらに思う。
そう。僕はきっとただ普通になりたいと思ってるんだろう。角砂糖を五個ほど入れた紅茶くらいに激甘なラブソングを聴いて「はぁー、こんな恋愛したいわ〜」とか思ったりしたり、彼女がいる友達を見て「なんだこいつ」と彼女がいることに嫉妬したりするも時々女の子と一緒に合コンやったり、彼女と別れた後にとてつもなく切ない失恋の歌を聴いたりして「ヨリ戻してくれなぇかな」とかバカな想像をしたりする、それなりに充実した大学生活を過ごせるような大学生になりたかったんだろう。違うかな、いやそうだろうな。
でもそんな生活はここにはない。敗者である僕には敗者なりの生活しか待っていない。だから、僕は僕がなれなかった理想の大学生を見ていやな気持ちになる。そして、嫌気がさしたり、自律神経を乱したりして大学に行くことができなくなる。
あ、そういうことだったのか。結局、他人を通して自分の惨めさを痛感するから、それから逃避するために大学に行きたくなくなったのか。勉強できないし、友達いないし。
自分が大学に行かない(あるいは行けない、行く気力が無い)理由がわかってまた、自分という人間に嫌気がさした。何もする気が起こらなくなった(それが理由というわけではなく、あくまで理由の一つというだけだが)。何が悲しかったとかいうわけではないけど、涙が流れた。涙は簡単には涸れなかった。
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