第11話

「……あぁ、死ぬかと思った」


 俺は地雷の連鎖爆発からぎりぎりで生還し、大の字となって砂漠のど真ん中に倒れている。

 リンクドスーツのHPは最早風前の灯火。取り敢えず回復アイテムを使用してHPを回復させる。


「いやぁ、済まなかった」


 俺と同様に大の字になって天を仰いでいる相棒は軽い調子で謝罪をしてくる。


「相棒はノーコンなんだから、ボム使う時はBバスター使えよ」

「うむ、それは私も分かっているが、咄嗟の時には直ぐに出来る事が優先されてな。どうやら私の中では投げると言う動作の方が咄嗟に出来るらしい」

「……なら、バスターを使う動作を咄嗟に出来るように反復で使いまくってくれ」

「あい分かった」


 俺は苦笑しながら相棒にそう進言する。相棒は首を縦に振るが、果たして咄嗟の時にバスターが使えるようになるのは何時になる事やら。


 俺が相棒と組んで早三週間が経過した。

 最初の頃は素材を集めて、装備を作って、試射してと言った感じのサイクルで動いていたけど、段々と互いに遠慮が無くなり、呼び方も変化して行った。

 俺はニトの事を相棒と呼び、ニトもまた俺の事を相棒と呼ぶようになった。


 相棒と俺が経営する『NITO’S SHOP』の客入りはそこそこ多い。赤字は出さずに利益がきちんと出るくらいに繁盛している。

 目玉商品は様々なボムと、ボムを発射出来るバスターだ。

 ボムは市販品よりも少しばかり安い。また、市販のボムとは違うカスタムボムも取り扱っている。

 ここに存在していた巨大な蠍型の機械獣――ヒュージマキナスコーピオンというボスを倒すのに使用した地雷もカスタムボムの一つであり、従来品は一度設置すると取り外す事は出来ないが、相棒が改良したそれは自由に取り外す事が可能で、回収出来るようになっている。

 まぁ、今回使った地雷は取り外しは可能だけど威力はその分低くて、爆発で足止めをする事を目的にしていた。だけど、連鎖爆発&単純に数が多かったので威力が相乗的に上がってそのまま倒しちゃったんだよなぁ。

 ……結果オーライという事でいいかな。


「では、そろそろボックスからアイテムでも取るとしようではないか」

「そうだな」


 俺と相棒は起き上がり、爆心地に無造作に転がっているボックスへと近付く。

 ボックスは普通の機械獣を倒した際に出て来るものよりも二回りほど大きく、装飾も何処か豪勢な物になっている。

 それが二つあるので、俺と相棒でそれぞれ一つずつ開ける。


『GET!

 ・ヒュージマキナスコーピオンの動力炉×1

 ・ヒュージマキナスコーピオンの外装×3

 ・ヒュージマキナスコーピオンの歯車×4

 ・ヒュージマキナスコーピオンの鋏×1

 ・ヒュージマキナスコーピオンの脚×2

 ・スコルピオバスターMrk.1

 ・Eエナジーハイ×3

 ・6400ネミー             』


「おぉ」


 何か結構な数のアイテムを手に入れたぞ。

 素材アイテムが大部分を占めてるけど、ユニーク装備が一つ手に入ったのは個人的に嬉しいな。

 まぁ、これをそのまま使わずに、性能を確認して相棒に改造してもらおうかな。改造は改良版Bバスターと同じようにボムが発射出来てチャージバスターに対応した物が個人的にいいなぁ。


「して、相棒よ。君はどんなアイテムを手に入れたんだい?」

「ん? あぁこれら」


 俺は今し方手に入れたアイテムを相棒へと見せ、そして素材アイテムを相棒に預ける。


「ふむふむ。素材は私が手に入れたのと同じだな。素材の総数は君の方が多いが、その代わり私はEエナジーハイが五つとユニーク装備が二つ手に入ったぞ」

「おぉ~」

「ユニークアイテムの一つは君と同じスコルピオバスターMrk.1。もう一つはスコルピオブレードMrk.1だそうだ」

「ブレード……つまりサーベル系の武装かぁ」

「まぁ、君はこの頃バスターしか使っていないからな。ブレードは私が使うか、改良や分解して似た性能の物を複製出来るか試すとしよう」

「うん、その方向でいいんじゃないか?」

「では、そろそろ戻るとしよう。今回得たアイテムで色々と試作したいものだ」

「了解」


 ボスを倒し、アイテムを手に入れた俺と相棒はグリンダールに構える『NITO’S SHOP』へと戻る為に歩を進める。

 グリンダールはこの三週間で結構な発展を遂げた。斡旋所によるイベントクエストをこなしたり、各々のプレイヤーが店や拠点を建てたり、市場を拡大したりしてより賑わいが出て来た。

 街自体の大きさも一・五倍程にまで拡大され、それに伴ってNPCの数も増えた。

 そんなグリンダールへと戻ると、プレイヤーが忙しなく店に駆け込んだり、斡旋所へと向かったりとする姿が多くみられる。


「あぁ、そう言えば三日後だっけか」

「運営主催の公式イベントの事か?」

「そうそうそれ」


 このβテストもあと一週間もせずに終わりを迎える。

 その為、最終日目前に運営が公式イベントを開催すると発表した。

 イベント内容は大まかに二つ、討伐と大会に分かれる。

 討伐はこのイベント限定の機械獣を他の参加者と共に狩る事を主軸にした内容で、大会はトーナメント形式で個人およびチーム戦で対戦大会を行う。

 討伐と大会のイベントは二つとも参加可能で、俺と相棒も両方参加している。大海の方はチーム戦の方に参加登録している。


「まっ、いい結果を出すよりも折角の最初で最後のイベントだから楽しもうぜ」

「うむ、そうだな。だが、背格だから討伐では機械獣を倒し、素材で何かしらは作りたいものだ」


 俺と相棒はそんな事をだべりながら『NITO’S SHOP』へと入る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

LINKED FORCE ONLINE 島地 雷夢 @shimazi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ