第7話

 取り敢えず、俺とニトは頭のパーマを手櫛でさっと治す。何か撫でただけですぐに戻ったんだけど、流石はゲームと言った所か。


「なぁ、一つ訊くが何で俺達ダメージを受けてないんだ?」

「この町中では、どうやらダメージは発生しないようなのだ。なので、こうして爆発を直に喰らっても平気と言う訳だ」

「成程」

「あと、町中であればアイテムも建物などのオブジェクトも破壊不能扱いになっている。なので、今の爆発で商品や内装に破損と言う被害は出ていない訳なのだ」


 あっはっは、と笑うニト。

 つまり、ゲームの仕様か。まぁ、リンクドスーツが自動で解除される場所だもんな。ダメージが発生したら問題ありか。

 その代わり黒い煤が付着しているが。まぁ、それは拭えば問題ないか。


「さて、折角来たんだ。我が店の商品の紹介でもしておこう。先程言った通り、この店は爆弾――このゲームではボムと表現されているそれらを扱っている」

「ふむふむ」

「ボムの特性は見たまんま爆発する事にある。ボムの種類によって爆発の威力、方向性、附随効果がまるで違ってくるので戦局に合わせて使い分ける事が出来る。まぁ、それに関しては他の武器にも言えるし、その分アイテムスロットを圧迫してしまうがな」

「まぁ、確かに」

「それ以外にボムの利点は装備ではない事だ。装備ではないのでリンクド回路に関係なく、そしてEPを消費せずに扱える。威力もATKに影響されずに一定のダメージを与える事が出来る。欠点は消耗品と常に一定威力という事か。それなりの数を用意すれば、それなりの値段が掛かってしまうからな。また装備での攻撃ならATKを上げれば威力も増すが、ボムでは使うボムの種類を変えない限り威力の変動はない」

「成程成程」

「では。そろそろ我が店で取り扱っているボムを紹介していこう」


 そう言うと、ニトは軽く煤を払って陳列されている商品のうち、野球ボールのような丸いボムの説明を始める。


「これはスローイングボムと言ってな、ここのスイッチを押すと五秒後に爆発する。威力はマキナリザードを五体纏めて吹っ飛ばせる程だ。爆発範囲はおよそ直径二メートル」

「そんなに小規模なのか?」

「あぁ。ゲームだからか、その範囲外にはダメージが発生しないのだ。爆風によって多少はよろめくがな。値段は一つ500ネミーとなっている」

「それは安いのか?」

「ボムの中では一番安いな。私の店ではNPCのショップでも売っているボムと同じ値段設定にしている」


 続いて、とスローイングボムの隣りに置かれていた、皿のようなボムを手に取る。色は二種類あって青と赤だ。


「これはセッティングボムと言って、見たまんまの地雷だ。踏んだり衝撃を与えると爆発する。青い方は広域爆破、赤い方はこの黄色の印を移動させる事で指向性を持たせて爆破させる事が出来る。値段は1200ネミーだが、スローイングボムの三倍の威力はある」

「スローイングボム買うよりも安上がりだな」

「まぁな。だが、一度セットすると回収する事は出来ないので、何処にセットするか、どのようにセットした場所に機械獣を誘導するか等、スローイングボム以上に考えて使用しなければならないがな」


 あとは、とニトは半透明な少しごつごつとしたものを手に取る。それの中で紫電のようなものが蠢いている。


「これはパラライズボム。ボタンを押すと五秒後に爆発し、三メートルの範囲に紫電が飛び散る。この紫電にダメージ判定はないが、機械獣を麻痺させる事が出来る。麻痺時間は機械獣によってまちまちだが、マキナリザードやマキナスコーピオンなら十秒は動きを止められる」

「いちいち麻痺させるよりも爆破させた方が早くないか?」

「まぁ、それはケースバイケースだ。機械獣に囲まれた時は普通のボムよりも重宝する。なにせ、パラライズボムの紫電はプレイヤー……と言うよりもリンクドスーツに影響を及ぼさないからな。囲まれた時は自分の近くで発動させれば機械獣だけ動けなくなる。その際に脱出するなり何体か倒して仕舞えるしな」

「あぁ、成程」

「プレイヤーに影響が及ばない分、先の二つよりも値段が高く2000ネミーもするがな」

「高いな!」

「それだけ機械獣相手に有効なボムという事だ。……と、この三つが現在商品としておいているボムだ」


 そう言って、ニトはパラライズボムを商品棚に戻す。

 って、三つ?


「……あれ? あのダイナマイトは?」

「あぁ、あれに付いてはまだ素材の大量確保が出来ていないので、まだ私が使う分しか作成出来ていないのだ」


 あ、原材料の問題で量産出来ていないのか。なら仕方ないか。


「因みに、ダイナマイトの威力ってのは?」

「スローイングボムの五倍だな」

「それは、凄いな」

「その代わり値段は3000ネミーだがな」


 ふぅ、と軽く息を吐くと、ニトはボムが並んでいる棚とは別の商品棚へと向かう。

 そう言えば、そこの棚には何か布が掛けられてるな。なので、どんなアイテムが置いてあるのか分からない。


「さて、商品としておいているボムの紹介も終わったので、続いて別の商品の……我が店の本命の紹介をしようと思う」

「本命?」

「あぁ、つまり、バスターの紹介だ」


 そう言って、ニトは布を取り払う。

 確かに、そこにあるのはバスターだ。

 でも、何でバスターが本命なんだ?

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