第6話
「さてさて、LFOの世界に行くとするか」
試験を終わらせ、即行で大学から家に帰って来た俺は早速BGを被ってLFOの世界へと向かう。
LFOの世界へと向かえば、俺はグリンダールの町の中心部、つまり仕事斡旋所の真ん前にいた。
成程、どうやらゲーム再開時にはここからのスタートになるようだ。
ではでは、今日もまずは装備を色々と見て回るとするか。
昨日はバザーエリアを見て回ったから、今回はショップだな。
俺は地図を頼りにここから一番近いショップを目指す。
「って、あれ?」
その道すがら、マップにいきなり店が登録された。
店の名前は『NITO’S SHOP』。昨日まではなかった筈だけど、もしかして今日オープンしたのか?
確か、このゲームではプレイヤーを店を持つ事が出来る仕様になっていたな。
流石にNPCの店が日を跨いでオープンする事はないと思うから、十中八九プレイヤーの店だろう。
折角だから、まずはこの店でも見てみようかな。プレイヤーメイドの装備やアイテムにも興味あるし。
ボガァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ‼‼
何て思いながら店のドアノブに手を伸ばすと、中から凄まじい轟音が響いてきた。
「な、何だ何だ?」
慌ててドアを開けば、中には黒い煙が充満していた。
何だよこれ? 何で視界が黒煙一色になるんだよ? と言うか、目が痛い。普通に涙出て来た。流石はVR.こう言う所までリアルだな。
「けほ、けほっ、あっはっはっは、失敗失敗」
と、奥の方から笑い声が聞こえる。声からして女性だろう。
「取り敢えず、換気をするとしよう。えぇっと、窓を開いてっと」
黒煙がドアの外へと一気に流れて行く。どうやら女性が窓を開けた事によって空気の通り道が出来、黒煙が排煙されているようだ。
黒一色の視界は段々と色を取り戻していく。
黒煙が晴れれば、確かに中は店と言えるものだった。値札の貼られた装備品が商品棚に陳列され、会計カウンターには普通にレジスターが置いてある。
あとバックヤードへと向かうだろう扉もある。その扉は開けられており、そこから黒煙が出ていた。煙の出どころはそこか。
で、更にその扉から煤まみれの女性が出て来た。
「ん? あぁ、お客さんかい?」
オーバーオールに長袖のシャツ、それに革の手袋とブーツを履いた女性の傍らには例の投影機が浮いているのでプレイヤーだと分かる。首元を守るようにスカーフが巻かれ、長い髪を後ろで一纏めにしている。
「いらっしゃい。『NITO’S SHOP』へようこそ。私はここの店長にして唯一の店員のニトだ」
にかっと愛想の良い笑みを浮かべる女性プレイヤーニト。どうやら、この店は個人経営のようだ。
「どうも。俺はレン。昨日はなかったから立ち寄ってみたんだけど、ここって主に売ってるのは装備?」
「そうだな。装備も売っているが主製品はそれじゃないな」
「そうなのか?」
「あぁ、装備はあくまで主製品を扱えるために準備した者でな、こういったアイテムの専門ショップを立ち上げたのだよ」
そう言ってニトは投影機からメニュー画面を出して操作し、己の手にとあるアイテムを出現させる。
細長い円柱型で、先端に捩じれた紐が取り付けられている。それが計五本纏めて縛られており、紐も一つに合せられている。
この形状、見た事あるんだけど。
「ダイナマイト?」
「おっ、その通り。まぁ正確には、ダイナマイトを模したボムなのだがな」
そう言うと、ニトはおもむろに紐……と言うか導火線の先端を指でこすり始めた。
すると、導火線に火が点き、ジジジという音と共に火がダイナマイトへと近付いて行く。
「このようにすると点火し、だいたい十秒後に爆発する」
「成程。と言うか、実演した意味は?」
「……おっと、これはうっかりだ。本当は点火する振りをするつもりだったが、間違えて点火してしまったよ」
「おい!」
「あっはっはっは」
「いや、笑いごとじゃないだろ!」
笑って事を済ませようとするニトに俺は突っ込みを入れる。
「それ早くどうにかしろよ!」
「それもそうだな。取り敢えず、あっちに投げれば問題ない」
そう言って、ニトは向こうの部屋へと向けてダイナマイトを投げる。
しかし、何を間違ったのか投擲したダイナマイトは後方一メートル――丁度俺とニトとの中間地点に落ちた。
どう見ても、普通に前へと投げた筈なのに、何でそのフォームで後ろに投げられるんだ?。
そして、暫しフリーズ。
「おっと」
「おっと、ておいっ!」
ニトの呟きで硬直から解放された俺は急いでその場から駆け出そうとする。
だが、逃げるには距離が近すぎる。このままだと俺とニトは爆風に煽られる羽目に……。
ボガァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ‼‼‼
駆け出すよりも速く、凄まじい爆風が襲い掛かってくる。
ただ、救いなのは全く痛みが来ない事だろう。あと、爆風を受けても吹っ飛ばされないし、爆炎をその身に受けても焼かれない。
爆炎が晴れれば、髪が若干パーマに変貌して肌が黒い煤で覆われているニトの姿が。
多分、俺もパーマになってるんだろうなと思い、おもむろに頭を触る。やけにふんわりとした感触があったので、やっぱりパーマになったんだな。
「済まない済まない。私はどうも遠投するのが苦手なようだ」
あっはっはっは、と笑いながら謝罪してくる。
と言うか、これはもう遠投が苦手とかそう言うレベルじゃないだろ。どうして普通に投げたら後ろに飛ぶんだよ?
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