第3話

 出現するマキナリザードや蠍型の機械獣マキナスコーピオンを倒して進み、その御蔭でアイテムもいくつか手に入り、リンクドスーツのレベルも2に上がった。

 そして、ついに町へと辿り着いた。

 五メートル程の壁に囲われ、そこを起点に半透明なドームで上部を囲っている。

 で、壁の一部が門となっていて、そこから人や車が出入りしている。

 俺もそちらの方へと向かう。現在門は解放されているけど、なんか半透明な何かが壁となっている。

 しかし、行き交う人や車はそれを意に介さずに普通に通過している。

 門番いないし、俺もそれに倣って半透明の壁を抜ける。

 抵抗も無く、すんなりと入れた。すると、自然とヘルメットとリンクドスーツが光となり、投影機へと吸い込まれて行った。

 リンクドスーツなしじゃ砂漠の熱にやられるんじゃ? と一瞬思ったけど、肌には心地の良い温かさが伝わって来るだけで、暑くはなかった。

 どうやら、この町を覆っている半透明の壁は熱をある程度シャットアウトする機能があるみたいだ。だからリンクドスーツは必要がないと見て自然と脱げたのか。


 因みに、リンクドスーツを脱いだ状態の俺はちょっと裾のほつれたズボンにブーツ、長袖のシャツに手袋をした状態となっている。

 リンクドスーツを脱いだ時の状態も初期設定である程度弄れたのでこのような格好にしている。

 どうして脱いだ状態を設定出来るのか分からなかったけど、成程、町中を歩く際に必要だったからか。


「おぉ」


 門を完全に抜けた俺は、目の前に広がる町の風景を見て感嘆の声を上げる。

 煉瓦、いや岩材かな? それで作られた建物は綺麗に並び、地面も同質の素材で舗装されている。あと、所々でコンテナっぽい金属の建物も見受けられる。

 いくつか建物の前で日差し避けの布を掛け、そこで金属やEエナジー、武器等を置いて露店をしてる人達もいる。

 行き交う人達も俺と似たような格好の人達が多く、その人達の大部分に投影機が付随している。投影機と一緒にいるのはプレイヤーと見て間違いないな。

 また人だけじゃなく車や駱駝型の機械獣もいる。駱駝の機械獣はエネミーではないらしく、手綱をつけられ、背中に荷物を載せて人に連れられている。


『グリンダールをマップに登録しました』


「んお?」


 突如、投影機から看板みたいなホログラムが出現する。どうやら、この町がマップに登録されたらしい。そして成程成程、この町はグリンダールと言うのか。

 俺は早速登録されたらしいグリンダールの全体像を見る事にする。

 グリンダールは東西南北の四つの区画に別れており、現在俺がいる場所が東地区に当たるらしい。

 で、町の中央には仕事斡旋所なる建物があるそうだ。

 取り敢えず、そこに行ってみる事にしよう。


 俺は真っ直ぐと町の真ん中を目指して進み、仕事斡旋所へと辿り着く。

 見た感じは二階建ての建物で、大きさはバレーボールコート二面分ある体育館くらいかな。

 中に入れば、結構人で一杯だった。やはり、プレイヤーはここで仕事を請け負って金を稼いでいるのだろう。

 因みに、入り口付近に会った見取り図によると、一階の半分は酒場になっていて、もう半分が仕事斡旋の受付。二階は職員専用のスペースになっているそうだ。


「さてさて、どんな仕事があるのかなっと」


 取り敢えず、貼り紙の貼られたスペースへと向かう。見取り図曰く、仕事はそこに貼られた依頼書から自分に合ったものを選び、依頼書を剥して受付に持って行く必要があるらしい。

 人の合間から依頼書を確認し、まずどんなのがあるのか確認する。

 機械獣の討伐に、金属パーツの納品、あとはお使い系に生き物の捕獲なんてのもある。

 ここはリンクドスーツのレベル上げの為にもまずは機械獣の討伐でも受けようかな。

 機械獣討伐の中で、今の俺の装備でも問題無さそうなのを選ぶ。

 内容はマキナスコーピオン三十体以上の討伐。討伐数は指定されているけど、期限は設けられてないから切羽詰まる事はない。あと、マキナスコーピオンならここに来るまでに何匹か倒したし、そこまできつくないだろう。

 俺はマキナスコーピオン討伐の依頼書を剥し、それを受付へと持って行く。暫し並んで、俺の番になったので受付の人に依頼書を渡す。


「すみません。これお願いします」

「畏まりました」


 受付の人は依頼書に何やら印を押すと、俺の近くを浮かんでいる投影機へと依頼書に押された印を近付ける。


『マキナスコーピオン×30以上討伐の依頼を請け負いました』


 すると、投影機からそんな文が書かれたホログラムが映し出される。

 成程、こうやって依頼を受けるのか。

 と言うか、何かと便利だなこの投影機。


「既定数以上の討伐を終えましたら、再度受付までお越し下さい」

「あ、はい。分かりました」


 俺は受付の人に頭を下げて、受付を離れる。


「よし、じゃあさくっと狩ってくるとしますか」


 仕事斡旋所を出て、俺は町の外へと目指して歩き始める。

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