第3話
#3 明里vs美月?!/泰の出会い
週明けの月曜日。幼なじみである明里
に相談した事をメールで伝えて忘れた俺は、本人に直接言おうと櫻川美月を探していたところだった。
「なんか、恥ずかしいなぁ…櫻川さんと話してる俺って周りからどう映るんだろ」
多分見た人全員が不釣り合いだって思うだろうな…。
「藍島くーん!」
どこからか俺を呼ぶ声が聞こえた。
「櫻川さんか。よかった。ちょうど探してたんだ」
すると「私もだよ」と櫻川さんも言う。
ちなみに、周りの視線がすげぇ痛い。
近くの男子生徒が「なんであんなマヌケ面に櫻川さんが…」とか言ってる。
しらねぇよ。俺だってもっとイケメンがよかったよ。
でもなぁ、イケメンじゃなくても普段の行いが良いと女子の方から寄ってくんだよ!ざまぁみやがれ!!
「ここじゃ何だし、移動しようか」
そう言って場所を移動する。
中庭で土日にあった出来事を伝える。
ーーーーーーーー
「と、まぁそんな事があってさ」
すると櫻川さんは目をキラキラさせ、
「藍島くんの幼なじみちゃんも入ってくれるの?!嬉しいなぁ〜!」
と、ご機嫌である。
「じゃあ、部員はあと一人でいいんだね」
「まぁね。仮にあと一人が決まったとして顧問の先生には何て言うんだ?」
彼女は大きい胸を張ってこう言った。
「それはね、学生の本分である学業をメインに学生の時しかできない事を模索し、それを実行する部です。って言うのを考えたんだけど、どうかな?」
ー要するに、青春したいですってことか…。
というか、後半ほとんど聞いてなかった。胸を張ったせいで…あの大きい双丘の膨らみに目を奪われていた。
「良いんじゃないかな」
そう言うと、彼女は笑顔を咲かせ「よかった〜」と言っている。
胸見ててほとんど聞けてなかったのに…なんか罪悪感が…すごぉい。
ーまぁそれはおいといて
俺には一つ気がかりな事があった。明里の事だ。
ーあいつ、何考えてるんだろうな。変な事しなきゃいいけど…変なとこで頑張り屋さんだからなぁ。
「あぁ、お昼休みそろそろ終わっちゃう!ごめんね、お昼まだだったよね?!」
「別に気にしなくていいって」
それじゃ、と言って俺はその場を去る。
ー昼は購買の余り物のパンかナ!
午後の授業をパン一個で乗り切り、俺は帰り支度をする。
ーあ〜、でもどうしようか。中間テスト近いしな…。まぁ、いいか。いつも通り家帰ってからやるかな。
最初の中間でまずは学年一位だな。
そう決心し、俺は帰路に着いた。
「ただいまぁ〜」
「おかえり〜」
明里が迎えてくれる。
俺の家は両親ともに海外で働いており、親が帰ってくる事など滅多にない。明里の家は両親共働きで帰りはいつも遅い。なので、俺たちは二人で飯を食ったりしている。
「ねぇ、ゆうくん」
リビングで数学をしている俺は「んー?」と生返事である。
「櫻川さんってどんな人?」
んん?そうだな…大和撫子?なんかちょっと違うな…。何て言えばいいか。
「そうだなぁ、意外とワガママ、かな?」
「大人しそうなのにワガママなんだね〜」
何故か少し見下してる様子の明里さん。
ーいやいや、お前も大差ないよ明里ちゃん。
口に出したら飯抜きにされそうなので言わない。
「そういや、お前も部に入るって伝えたら喜んでたぞ」
そう伝えると、
「その笑顔いつまで続くのかなぁ?」
と、怖い事を仰る。
「お前…なんもすんなよ?」
「しないよ〜、多分?」
何で疑問系なんだよ。
「お前は何をそんな櫻川さんに突っかかるんだ?仲良くしろよ」
「だってゆうくんに寄り付く悪い虫じゃない」
ーはぁ。明里は時々こうなのだ。俺を心配し過ぎてちょっと怖い方向にいってしまう。
いわゆるヤンデレ?怖ス。
そんなに心配されんでもなぁ。
もう子供じゃないんだし。
「ゆうくんには私の気持ちはわからないよねぇ」
そう言って、スライムみたいに机に突っ伏す。
「気持ちってなんだよ?」
そう聞くと、ため息をついてさらに溶けてしまう。
俺はその海城スライムの大きい胸が潰れるのを見てちょっと…
ーなんでスライムのくせに発育がいいんだよ。
なんて思ったり。
まぁ、何も起きなきゃいいけど。
そう、願ってる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
私の周りに変化が起きた。
それは春に高校に入学してからだろうか。
その変化とは言ってしまうと、
ー幼なじみが女の子といちゃついてる。しかも可愛い美少女と!
それを知った時の私は酷く動揺したものだ。
私の幼なじみ、藍島泰はお世辞にも顔が良いとは言えない。
顔面偏差値は多く盛っても45。
ーそんな彼に、彼女?
あり得ないと思った。
何故なら彼といちゃついてる女の子は、一年B組の櫻川美月さんだったからだ。
そこら辺の美少女とは訳が違う。
そこら辺の美少女が可愛くないわけではない。美少女って言ってるくらいだし。
でも、彼女、櫻川美月は違う。
オーラというか、世界が違う。
そんな彼女が冴えない顔面偏差値45のゆうくんにいちゃつくなんて。
ーきっと、遊びなんだろうなぁ。
遊び。
ゆうくんをたぶらかす悪い女の子。
許せない。あんなにも優しいゆうくんで遊ぶなんて!
だから私は今日、櫻川美月と話すことにした。
ーゆうくんをこんな女の子に渡すもんか!
そう心の中で叫び、突撃の準備をーー
ガラッ
目の前で扉が開く音がした。
「へ」
突撃しようとしたすぐ後にまさか現れるなんて。
扉の前に立っていたのは櫻川美月だった。
「えっと、一年B組になにか御用ですか?」
「あ、私は藍島泰の、ゆうくんの幼なじみです。」
すると彼女は目を開き、
「え!藍島くんの?ということは海城さんですか?!」
ーなんでこんなに食い付いてくるの?
有名人というわけではないのに。
「私の部設立に協力してくれるって藍島くんから聞きました、ありがとうございます!」
「あぁ、うん、どういたしまして。その事で櫻川さんに聞きたい事があったんだけど、いいかな?」
「?良いですけど…なんでしょう?」
中庭にバトル会場を移動させた後、私はストレートに切り出した。
「なんで、あなたの部設立の協力者がゆうくんなの?」
櫻川さんは気まずそうに目を伏せた。
「えっと、簡単に言ってしまうと彼が私に似てて…それで協力してくれるかなって」
ーそんな理由で!?
「なんで、似てるって思ったの?」
櫻川さんって意外と大胆?なのかな。
「藍島くんって、何と言っていいか…その、失礼だと思うんですけどいつも一人じゃないですか」
ー?!!
ゆうくん…友達少ないの見透かされてるんじゃ…。
「私もよく一人で、友達が少なくて…。」
意外だと私は思った。
美少女の櫻川美月がぼっちだなんて!
綺麗すぎて近寄りがたい、んだろうなぁ。
「友達がいなくてどうしようって思ってたときに私、怪我しちゃったんですよ」
怪我の原因は紙で結構深く指を切ってしまったらしい。
「入学したばっかりで、保健室の場所が分からなくて廊下をウロウロしてたら床に血が落ちちゃってたみたいなんですよ」
「それに気づいた藍島くんが声をかけてくれたんです。「大丈夫?」って」
ーさすがゆうくん。優しい。
「それから保健室に案内してもらって絆創膏を貼ってくれたんですよ」
ゆうくん保健室の場所わかってたんだ…。入学して二週間くらい経ってるけど私、まだわからないや…。
「その時、「あぁ、優しい人だな」って思って、お礼を言うために彼を少し観察してたんですよ」
なるほど。困っているところを助けたせいで友達が少ないのバレちゃったんだ…。なんだか複雑だね。
「それで恋について学びたかった櫻川さんはゆうくんを選んだってこと?」
「大体そうです」
ーそれでなんで部設立になるんだろ。
「部を設立したいって思ったのはですね…ええと」
思わず私はびっくりした。
心の声漏れてる?!と思ったほどに。
そうドキドキしていた時、ドキドキを加速させる言葉を彼女は言った。
「部という形を通して、その…藍島くんとお話できたらなって…」
私は衝撃を受けた。
お話ししたいから部活って。
ーって、その感情は櫻川さんにとって恋ではないの!?
異性とお話したいって思うって大体恋なんじゃないだろうか。
でも、
「良かった」
「え?」
櫻川さんは目を開く。
「最初はね、櫻川さんのこと悪い人なんじゃないかって思ってたんだよね」
「ど、どどうしてですか?!」
慌てふためく櫻川さん。男子にはこういうところがポイントなんだろうな。
「だって、ゆうくんってイケメンじゃないでしょ?ゆうくん使って遊んでるのかなって」
彼女は手をブンブン振り、
「そ、そんな遊ぶだなんて!それに…藍島くんはか、かっこいいと思いますよ?」
ーえ
「藍島くんは覚えてないと思いますけど、困っている人を助けられるってとてもかっこいいと思います」
櫻川さんって本当に完璧なんだなぁ。人を見た目で判断しないなんて。良い人。
「わかったわ!私も全面的に櫻川さんに協力するわ!」
「えぇ!あ、わわ。ありがとうございます…!」
こんなにもゆうくんの良いところをわかってるだなんて!協力してあげたくなっちゃうよ。でも、ちょっとだけ対抗心があるなぁ。
だけど、二人でゆうくんの良いところを共有していこう!
ー良かったね、ゆうくん。こんな可愛い女の子に理解してもらえて。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ヘブシッ!」
あぁ、今日はやたらくしゃみが出るな。風邪かな?テスト前に体調を崩すものか。最初のテストだ。出だしが大事だからなこういうのは。
ー俺は今学校の図書室で勉強中だ。
桜庭高校は進学校でもないし、テスト前に図書室で勉強する奴なんていない。
「まぁ、それだけ静かで捗るってことだけど」
櫻川さんに言われたこともあるがそれはそれ。これはこれだ。
そう考えていた時、本棚の方から大きな、本が崩れ落ちる音がした。
「あ、あわわぁ〜〜!」
本が崩れ落ちる音と共に女子の悲鳴。
ー大丈夫だろうか?というか、人いたんだ。知らなかった…。
大量の本に埋もれている女子を発見。
「大丈夫ですか?」
その女子のタイの色を見ると、
ー赤?二年生か。
「あぅぅ、ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして」
ーあれ?この人って…二年生で髪の色が銀髪なのは一人しかいない。全校生徒の間でも有名なお嬢様、この人はー
「私は二年の白鵜雪菜と申します」
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