第2話
#2 ワガママな相談相手
櫻川美月にある告白をされた次の日。
「ふぅ、今日が土曜でよかったぜ…」
休みを挟んでくれないと、俺も櫻川さんに言われたことの対応に困るからな…
「ゆうく〜ん!」
家の一階から俺を呼ぶ声が聞こえる。
ーあぁ、あいつか…
「おはよ〜ゆうくん。土曜だからってずっと寝てちゃダメだよ?」
俺を軽く説教したこの子は、幼なじみである海城明里だ。明里は隣の家に住んでいて、よくご飯だのなんだの身の回りの世話をしてもらっている。
ー俺…女に家のことやらせてるダメな男みたいじゃん…。
「なぁ、明里。毎日起こしに来てくれたり、飯作ったりしなくていいんだからな?」
と、言っても
「気にしなくていいよ〜、好きでゆうくんのお世話してるんだもん」
この有様である。申し訳ないと感じてしまう。今度お礼をしなくては。
ーーー
「そういえばゆうくん昨日帰りちょっと遅かったよね?何かあったの?」
「あぁ、ええと…」
教えていいものかと考えていると明里がこう言った。
「もしかして、告白?」
そう聞かれて思いっきり牛乳を明里の方へ吹き出す。
「ばっ、バカ!そんなわけあるか!」
「ちょっ、ゆうくんのせいで牛乳かかっちゃったじゃない!」
しまった、朝から女の子に白いモノをかけるとは。
他の人が見たら通報待ったなしだ。
「それで、さっきの反応は何?」
牛乳を拭いた明里が俺に問いただしてくる。
「えっと、実は…」
明里は口も堅いし、信用できるので正直に言うことにした。
あの櫻川美月に屋上に呼び出されていた事、恋をしたいから部を作りたいと言われた事、それに協力して欲しいと言われた事。
全てを話し、それを黙って聞いていた明里はーー
「恋するために部活ってちょっとおかしいよね〜」
と、申された。
ーだよな、これが正しい反応。あの時の俺は間違っちゃいないんだ。
明里の意見を聞いて自分の反応が間違っていない事に、ホッと安心する。
「それで、ゆうくんはどうするの?」
いきなり悩んでいたポイントを突いてくる。
「協力を求められているし手伝うけど…部って四人必要なんだぞ?俺と櫻川さんが入っても二人足りないだろ」
すると明里さんは恐ろしい事を口にした。
「じゃあ、私も入るよ〜」
「ほ、本気か?!」
熱あるのかな…?!俺が毎日甘えてるからか??ど、どうしよう。ど、どうすればぁぁぁぁぁぁ!!!
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
明里は優しくそう言う。
「ゆうくんの事…取られたくないしな…」
「ん?なんか言ったか?明里」
「なんでもないよ〜」
なんて言ったんだろ。声が小さくて聞こえなかったな。とりあえず櫻川さんに伝えておくか…。
明里に相談して一歩部の設立に近づいた…のか?
「じゃあ、また後でねゆうくん」
「ああ、また後で」
明里はマイペースだし、おっとりしてるし、何考えてるかたまにわからないんだよなぁ。
これを櫻川さんに伝えたら、どんな反応すんだろ…。喜ぶ…のかな??
ーーそう単純なものだと考えていた。
でも、櫻川さんと明里。この話を櫻川さんにして、実際に会うときまで俺は二人が「混ぜるな危険」という事を知らなかった。そして、俺の幼なじみも「ワガママ」という事を思い知らされる事になるのである。
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