No.02

「ミンティアなのか……?」

しかも、この感触的に言えば、量はさほど減っていない。というか、何も変わってなく捨てられているのではないだろうか……。

「み、ミンティアて……」

一口食べたいという欲求に、酷く駆られ、すぐに口を開け、中に入れた。


それは、俺の中で、何かを変えた。


(体内の細胞が活性化しているのか?体が熱くなり始めたぞ……。)

ふと思い、よく分からないが、走りたくなった。なので、理由もなく走ると……、俺の知っている俺の体じゃない、そんな速さの走力を発揮し、後で知ったことだが、その速さは、オリンピックの選手より、素早かった、気がした。

……だが。

「ぐえっ、だあっ!!」

速さに自分が乗り切れず、民家の壁にぶつかり、転がっていった(幸い、壁は壊れていなかった、よかった)。

「……ど、どうしたんですか?大丈夫ですか?」

転がった先で、近くから声がした。その声に反応しようと、起き上がる。

「あぁ、大丈夫ですよ」

そんな事を言ったが、かなり派手に転がったため、見ると、擦り傷が多く、体に、痛みはない。

(……ん?痛くない?)

そんな疑問がよぎるが、取り敢えずこの人と別れるか、だが、そう思ったが、

「いいえ、ダメです。傷を負っているではないですか!こんなに多く!付いてきてください!私が傷を治します!」

そう言われてしまい、手を引っ張れ、何も言えずに女性に連れていかれる。

(誰なんだ、この人。で、どこに向かっているのだろう……)


*7分後*


「さぁ、着きました。ここが、私の家です。庭にて、待っててもらえませんか?」

滅茶苦茶豪邸な家。一軒家ではあるがローンが溜まっているウチの実家とは大違いに金稼いでんのかな。

庭のベンチに座って待つ俺。マジで何してんだろ。……と、そう思ったら直ぐに、目から涙が滲み出た。

(痛っ!!?うっ、ぐうっ、痛いって!どうして急に痛みを感じ始めたんだ!?)

意味が分からない痛みに襲われ、必死に耐える。すると、女の人が家から出てきた。

「あ、やはり痛かったんですね。今、治しますからね。……神の名の下に、この者を治癒せよ、ヒーリング!」

(厨二か。何言ってんだ、期待して損した。はぁ、)

そう思った次の瞬間に、痛みは消えて、無くなった。

「ん、ん?」

(痛くなくなった、それどころか、擦った傷跡も無くなっている。え、こりゃ何なんだ?)

「え、あんた、魔法使えるんですか」

魔法にしか思えなかった。非科学的な事を信じる事は余りなかった俺だったが、どうしても意味不明で、聞いてしまっていた。

「……うん、と、魔法とは違うものですかね。私の、いいえ私達の力は、神様に力を借りていますので」

答えてくれた。まだ意味は分からなかったが、そんなのは別にいいと思った。

「そう、ですか……」

「あの、一つ質問していいですか?どうして、こんなに酷い怪我したんですか?」

不思議そうに聞いてきた。俺は素直に答える。

「知らないですね。走ったら壁にぶつかって怪我しただけですよ」

「知ってるじゃないですか!?」

(あ、確かにな。)

「まぁ、良いですけど……、はい、治癒完了です!」

(……お、おお、すげえな。)

「あ、俺からも一つ質問していいですか?」

と、名も知らぬ女性の目を見ると、

「はい、いいですよ」

と、答えてくれた。なので、質問しようと思う。

「厨二病ですか」

「ひええっ!?」

変な反応をして仰け反る。

「ちゅ、厨二病?なわけないじゃないですか!」

大きな声で叫ばれた。

「お、おお。じゃあ、何ですか?異世界から来た魔導士?」

「ふえっ!?」

また変な反応をして大きく仰け反った。なんなんだ、一体。そう思っていると、女性は恥ずかしがって喋り始めた。

「そんなんでもないですよー……わ、私は神より授かったこのネックレスでこの世界に漂う微量な魔力をですね、操れるようになった、能力者なのです!」

最後ははっきり自信を持って言っていたが、つまり。

「厨二病だな」

「ちーがーいーまーすー」

また変な反応をしたので笑ってしまう。

「笑わないでくださいよ……」

そう可愛い顔でお願いしてくるもんだから、動揺してしまう。

「うっ、あ、ああ」

一呼吸置き、立ってから。

「じゃ、もう俺はバイトに行かなきゃいけないから、怪我直してくれてありがとな。……最後に名前だけ聞かせてくれないか?」

そう問うと、すぐに答えてくれた。

「はっ、はい。私は、井波奏音(いなみかなね)です。奏でる音と書いて、奏音です」

そして、そんな奏音さんとの会話は終わり、俺はバイトに向かった。

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