第3話


 こたつの中は、まるで空みたいだな、と思う。


 六畳ほどのワンルームで、彼氏の斜めに座る私はそんなことを考えている。テレビでは猫の動画が流れていて、タレントが当たり障りのないコメントをしていた。彼氏はというと、コンビニで買ってきた漫画雑誌を広げている。テレビの音は聞こえていないだろうし、私のことも視界には入っていないだろう。

 今日の夕飯どうしようかな、と頭の中で考える。昨日はポテトサラダと豚肉の炒め物だったし、今日は余り物でカレーでいいかな、と思考がめぐる。ふと、私たちって何なんだろうという思いが浮かぶ。付き合ってはいるし、仲も悪くない。けれど、結婚の約束はしていないし、将来を約束してもいない。プロポーズもされていないけど、ディズニーには行った。

 うーん、と伸びをすると、こたつの中で足ものびた。こつん、とつま先が柔らかい感触を覚える。何のことはない、彼氏の足だ。彼は気づいた様子もなく、漫画雑誌を読んでいる。ふと、こたつぶとんが雲に思えた。そのむこうにはあたたかい電熱線。そういや、こたつの中からならパンツ丸見えだな、と思い、おらおらおらと彼氏の足をつつく。私のつま先が彼のジーンズをつかんだ。

 反応なし。何となく腹がたつ。

 そのまま掴んでゆする。こいつの上半身はゆれたが、視線はコマ割りを見つめたまま。

 ゆする力を強くすると、同居人の素足が反抗を示した。つま先を丸め、私のふくらはぎをくすぐる。

 そんなものきくかおらおら、ふ、ふふ、これでもどうだ、ふふ、がしがしがしさすさす。

 こらえきれず、仰向けに倒れて天井を見上げて笑う。彼氏が漫画をみつめたまま、しししと笑っていた。

 そうだ。こいつの足は器用なのだ。


 まあいいや。なんでも。


 カレー作ろ。福神漬け、あったかな。











2017/02/27

東野ミヤコは「曇り」「コタツ」「見えない関係」を使って創作するんだ!ジャンルは「SF」だよ!頑張ってね!

#sandaibanashi

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