第02夜 美容院
美容院の中にいる。
なかなかに良い雰囲気だ。
オレンジ系でまとめられた店内は広々としており、軽やかながらもリッチな雰囲気が漂っている。
背もたれが倒された散髪用の椅子に座り横たわっていると、ふと思い出す。
あれ、ここは美容院じゃないか。
俺はQBハウスに行こうとしていたはずなのに。
美容院に来たとなれば時間はかかるし料金も高くついてしまう。
特にここは中々に良い美容院のようだし、どれくらいの値段がかかるだろう……。まったく検討もつかない。5000円か、10万円か……。
まぁしかし、入ってしまったのだから仕方がない。
1万円以下ならよしとしよう。
……ああそういえば、ここは美容院だからシャンプーもしてくれるんだな。
そう考えると、次の瞬間には若い女性の美容師が自分の右指に手を触れていた。
「爪を洗いましょうか」
彼女はそう言って細長い銀のマドラーのような道具を取り出し、爪にあててスウッと引っ掻く。
高級な美容院では爪も綺麗にしてくれるのかと関心していると、そのマドラーをあてられた部分の爪がだんだんととろけていった。
痛くはないし、痛いという意識もないが、爪を溶かされるのは嫌だったので、
「やめてもらえますか」
と言うと、女性の美容師はどこかへ引っ込んでいった。
サービスの内容に含まれていても、不要だと言えばあっさりやめてくれるのだ。
そこが虫歯の治療などと違って良いところだ。
(背もたれが倒れるタイプの椅子に横たわっていたのでどことなく歯医者を連想していたのだろう)
そんなことを思っていると、サイドテーブルに料金表が置かれていた。
手にとってみる。
筆記体の金文字で書かれているのでいかにも高そうだったが、6000円だった。
まぁ高いと言えば高いが払える範囲内の金額で安心した。
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