45「ラブいの⑨ 綺羅々の品評会」
「ラブいな」
「ラブいね」
「ラブいですー」
「…………」
「ラブラブなのです」
最後の綺羅々さんの話を書き終えて、ノートを皆に渡して回覧も終わって――。皆が口々に感想を口にする。
「あのー? なぜ綺羅々さんだけ、無言なのでしょう?」
「バカメ。察しろ。真っ赤だろ」
あー……。耳たぶが、真っ赤だー。
「あのな。おまえ――」
部長がじろっと僕を見やる。
「――こっちのキララはなー。GJ部みたいにワイルドじゃねえの。恥ずかしがり屋さんなの。わかってんの? おまえ?」
「あ、はい」
GJ部の綺羅々さんは大きくてワイルドだけど、こっちのKB部の綺羅々さんは、大きいけれど内気な人。共通点となっているのは、無口なところ。あとは力持ちなところ。
「さて……。これで皆の分が出そろったわけだが」
そう言った部長は、コタツの一面でぐだーっとなってるタマを見やる。
「タマ、ミソッカスでいいです。センパイとラブとかフィクションの中でもカンベンです」
「あのねタマ。べつに僕はラブをやったつもりはなくてね。自分じゃぜんぜんわかんないから、とりあえず普通に書いてみて、皆に判定してもらっているだけでね」
「おいタマ。――おまえはどれがいっちゃんラブいと思うんだ?」
部長が聞く。タマは即答する。
「もちろんタマのやつですよ」
「オイ」
「書いてないから! てゆうか! 書かなくていいってタマ言ったよね? 言ったよね?」
「だから書かなくていいって言ってるですよ。甘ったるくてジンマシン出ちゃうですよ」
「おい。なんかコイツが戦いもしねーで、勝利宣言出してやがるんだけど?」
「えー? こっちどうですかー? 恵ちゃんだめですかー? ラブじゃないですかー?」
恵ちゃんが恵ちゃんを推している。
「いやいや待ってくれたまえ。世界のなかでただ私にだけイジワルをしてくれるキョロ君が、もっともラブいということは、これは言うまでもないことであり――」
紫音さんは紫音さんを推している。
「オイオイオイ。オレなんてな! だっこされてたぞ!?」
「だっこ。なら。きらら。も。」
「おまえはだっこされてたんじゃなくて、だっこしてたんだろーが」
なぜ皆様は張りあっていらっしゃるのか。なぜ部長まで参戦なさっていらっしゃるのか。
「あのー? 皆さん? これってトップになったら、なにか賞品でも出るんですか?」
「おま。当事者のくせに、余裕だな」
「え? 僕って当事者だったんですか? いやだなぁ。争いに巻きこまないでくださいよ。どれが一番だったのか、部長たちで決めてください。僕は言われた通り書いただけなんですから。闘争と関係ないです。僕、平和主義者なんですよね」
「タマ思うんですけどー。もー、全員一番で、いいんじゃないデスかー? ブタ野郎センパイとみんな一番ラブいで、いいじゃないですかー」
「さらりとブタ野郎言われましたー」
「おま……。すごいことさらりと言いやがったな……」
「ねえ、ひどいですよね。ブタ野郎ってないですよね。部長も言ってやってくださいよ」
「そっちじゃねえよ。タマ、いいか? これはGJ部のキョロが、誰とケッコンするのかって話だったろ」
「そういえば、そんな話だったよーな気もするです」
「全員とケッコンすんのか? そういうエンディングかっ! カオスだなっ!」
部長がウケてる。
「ちょ――それじゃ僕本当にブタ野郎じゃないですか。誰とも結婚しないで普通に他の人と結婚するっていう可能性はないんですか?」
「バカモノ! そんな物語があるかっ!」
「全員と、っていうほうが、もっと無茶だと思います。それ法律どうなっているんですか」
「はーい。お茶が入りましたー」
恵ちゃんが紅茶を運んでくる。
大騒ぎしている皆を見ながら、部活動をしているなぁ、と、僕は思った。
書いたものをみんなで読んで、みんなで和気あいあい……なのかな? これって?
賑やかに品評しあって、創作とそれにまつわる楽しいことが起きて、時間がゆったりと流れてゆく。
あっ――、そうだ。
僕はスマホを取り出した。言い合ってるみんなが入るようにして、一枚……。ぱしゃっ。
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すいません。またしばらく休載となります。
こんどはなるべく早く連載再開するようにしまーす。週一くらいでゆるゆる連載するのが目標です。
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