11「オレらまた出された!」
「オレらまた登場させられた!」
「リーダー……、リーダー。ほら?」
「リーダーじゃねえよ! わ、わ、わ……私! これでいいんだろ! てゆうか! なんでまたオ……私ら出してんだよ! 違うの書くって言ったろ! あれはウソか! ウソだったのか! だましたのか!」
「ちゃんと違うの書いたじゃないですか。異世界ファンタジーで……、勇者と魔王で……、あとなんでしたっけ? ……オーダーって?」
「ボカスカウォーズ!」
「うん。ほら。バトルだって、やってるじゃないですか。ミノタウロスと、ガチバトルやってますよ。熱いですよ。OKですよ」
「そんなことじゃなくて! そっちは確かにその通りだけど――! だけど、私ら、また登場させられてるだろ! おまえそこ卒業しろよ!」
「出すなとは言ってなかったじゃないですか。キャラはみんなを出したほうが、楽なんですよ」
「楽って言った! おまえはいま小説道を激しく冒涜した!」
部長が激オコなので、言い換えることにした。
「じゃあ、実在の人物をモデルにしていたほうが、物語に、より深みが出るんです」
「じゃあってなんだ! じゃあっていうのは!」
「真央。一度になにもかも変えろというのは、ハードルが高いのではないかな? 君のオーダーをいくつも取り入れて大幅に変えたのだから、そのままの部分が残っていても、仕方がないと思うよ」
「そうですよー。僕。小説書くの、初心者なんですから。ハードル下げてくださいよー」
「う……ん。ま、まあ……、そうなんだケド」
「なにかまだ不満があるのかな? あるならこの際、述べたほうがいいと思うけど」
「オレ……じゃなくて、私、なんか、勇者にさせられてるんだケド?」
「ああ。そこ。勇者じゃなくて、元勇者ですよ。おいしいものを食べるために、勇者やめて、冒険者やってますんで」
「なにその超設定!? いいの!? 人類救わなくて! 勇者が食い道楽していていいの!?」
「私は魔王にさせられているんだけどね」
「あ。だめでした?」
「いや! シイのやつは、魔王でいいな! まさに魔王以外の何物でもないな! こいつの腹黒いところを、延々、一時間でも二時間でも語ってやるぞ! どうだ聞きたいか!?」
「ふふふ。我々の業界では、それは最高の褒め言葉になるね」
「あ。OKなんですね。ちなみに魔王さまは、毒味役が検分したあとの冷めた料理ばかりで、美味しいものを食べたくて、魔王やめて、冒険者になりましたー」
「なるほど。素晴らしい理由だね」
「……キララもアサシンさんで、OKですかー?」
「ん。かわいい。」
綺羅々さんは、さっそく、スケッチブックにクレヨンで絵を描いている。
おお! 僕の書いた小説にイラストがついた!
リーダーと魔王さまと、あと、アサシンさんが、可愛く、描かれた。
「なんでキララのやつ。アサシンとかゆー、あいつのアバター。ちっちぇーの? おっきくねーの? これ私とおんなじくらいじゃね?」
「べつに現実で大きいからといって、物語の中でも大きくなければならないってことはないですよね」
「じゃあなんで私は、ちっちぇーままなの?」
「部長が大きくなってしまったら、それはもはや別人じゃないですか」
「なに!? オレのアイデンティティ!? ちっちゃいとこなの!? そこ取ったら! なんにも残らねーの!?」
「部長……。部長っ。ほら?」
「わ、た、しっ! ――これでいいんだろ! てゆうか! 私は現実でおまえに〝オレ〟を直せとか言ってねえ! キョロのくせに生意気だっ! ――ムガーッ!!」
「うわ! 噛んだ! 噛んだ!? マジで噛んだ! この人ほんとに噛んできた! 部長部長! やめましょうやめましょう! リアルで噛んでたら! 単なる頭のおかしい人ですってばーっ!」
「ムガーッ!!」
部長の顎が外れるまでには数分もかかった。作中じゃ、甘噛みなのにー。しっかり歯形までついていた。
「それ。もっと書け。そしたら……、許す」
部長がそっぽを向きながら、そう言った。
「GJ部シリーズ」も好評だったけど。「GEφグッドイーター・シリーズ」も好評のようだった。
ちなみに「GEφグッドイーター」の「φ」のところって、〝マンガ肉〟のつもりだったんだけど……。
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