光と闇の和解
シェイドは意を決してルフに向き直る。
「ルフよ。私はこの世界が愛しいのだ。なぜなら」
「ああん? いまさら何よ? とってつけたように言いだしても信用ならないんですけど?」
「聞いてくれ。俺の言葉に納得がいかないなら、俺を消滅させるがいい。今の力の差なら指先一つでダウンだ」
「いいわ、聞くだけ聞いてあげようじゃないの」
「俺がここまで消滅を避けるのは別に命が惜しいわけじゃない。この世界を消したくないからだ」
「ふうん、なんでよ?」
「この世界を生み出したからだ」
「あんまり理由になってない気がするけど?」
「そうだな。そしてあえて問う。この世界を生み出したのはだれだ?」
「あなたと私ね。混沌から光と闇が生まれ、永劫の時の果てに意思を持つに至った。それがわたしたち」
「そう、俺と、お前だ。我らは触れ合っても交じり合うことなき存在、それゆえに互いの存在は常に隣り合わせにして背中合わせだ」
「そうね、その禁を破れば互いに対消滅する。だから眷属を通して接触していた。ある意味、今この状況も禁忌を犯していると言えるわね」
「そうだな。そしてここからが本題だ。俺たちは最も遠く、そして最も近しき存在だ。そしてこの世界は、俺とお前の子供のようなものだと感じている。
いつからか、眷属の民同士が結ばれ、子をなすさまを見てそう思うようになったのだ」
「なななななななによ!? 何が言いたいの」
すげえ、あんだけ言ってもわからんのか。いや、わからないふりをしてもっと直接的な言葉を誘い出そうとしているのか。なんてめんどくさい奴だ。
まあ、そうでもなきゃ、嫉妬に狂って世界を滅ぼそうとしないか。
「お前は俺を浮気者と呼んだ。そう呼ばれるには前提として、そうだな伴侶になっていなければならない。と言うことはだ、お前もそういうつもりだったのだな。お互いが唯一の存在であると」
「む、難しいこと言ってごまかそうとしてるんじゃないわよ!」
うん、すっごい動揺してるし耳まで真っ赤だ。そして言葉を紡ぐのに必死で気づかない朴念仁。お似合いだよ。っていうかなんか砂糖でも口に叩きこまれたような気分だな。
「では、わが身が滅ぶまで口にするまいと思っていたが、言葉にして伝えよう。ルフよ、お前を愛している。我が無限の生涯。共に歩む者として、互いが互いを支え、そして競い、切磋琢磨する者として」
「わ、わたしも……あんたが好き」
「おお、それは良かった。なんというかだな、暗黙の了解になっていたし、口に出して何かが壊れるような気もしていたのだ」
お前らは思春期の高校生か?
「ばか、言葉にしなきゃ伝わらないじゃない。バカああああああああああ!!」
ルフは両手を広げてシェイドのもとに駆け寄る。と言うか、触れ合ったら消滅させられるんじゃ?
「そうだな、すまなかった。そして今だが力の差がありすぎるのでお前に触れると私はその光に飲み込まれてしまう。許してくれるなら力を返してはくれまいか?」
「そうね、もうこうなったら本気でも子供でも作ってやりましょ」
「できるのかね?」
「やってみなけりゃわからないわ。けどね、試す時間もたくさんあると思うのよ」
「そうだな。その通りだ」
ルフは掌を合わせ離すとその間には混沌とした力の塊が現れた。そしてそれをそのままシェイドに向けて放つ。
シェイドはそれを真っ向から受け止める。まあ、あれがだまし討ちの攻撃魔法だったら世界が滅んでたな。まあ、力を解析してみたらすごいもんだった。原初の混沌そのものだという。
あれを解析できればすべての根本にアクセスできる。アカシックレコードと言うやつだな。
まあ、それで無限の力を持ったとしても使い道はないし、世界の管理者とか面倒この上ないことはやりたくない。
そして、どうもこれで問題は解決したようである。世界の危機と聞いていろいろと動いた結果がただの痴話げんかとかもうね。戦争になって多くの人が死んでいったんだがなあ。
あと四天王とかどうなったんだろう? 最後のワンセットいたはずなんだが。って、え? 海老男君が最後の一人だった? へえ。そういえば彼は……起きて唐揚げ弁当をがっついてた。そういえば捕虜にはいっぺん旨い飯を食わせてそれで胃袋を掴んで懐柔するって方針だったな。
「ほう、こうなってみるとわかるぞ。我が息子よ」
「ゑ?」
今こいつ何とほざきやがりましたか?
特大の爆弾を投げ込んでくれた神様の言葉にみんな興味津々だ。特にバルドとか。
「お前の記憶をさかのぼればよい。さあ、時の因果よ、その歯車をしばし巻き戻せ!」
そうして俺の時間は巻き戻る。その意識は過去に向かい闇に落ちていった。
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