創世の物語

「そう、あれは何時の事だったか……」

「まさに神代の昔、だな」

「そうそう、ってそういうツッコミはいらないの!」

「あーはいはいー」

「真面目に聞く気あるの?」

 あるわけねーだろとツッコミを入れるのを全員が全力で制止した。これ以上変な風にもめるのはごめん被る。

「わたしとシェイドは互いの眷属を競わせてこの世界を発展させようとしていた。互いの発明や発見を共有して、互いの民を導いていた」

「まあ、あれだ、はじめは互いの生活範囲が重ならないのでな。問題はなかったのだ。我らの糧は信仰心と供物、そして世界を巡る魔力」

「魔力とは、この世界の生きとし生きる者の総量に応じて増えるの。その魔力を用いて奇跡を起こし、さらに人々の発展を促す。そうしてこの世界は回ってきた」

 アクト〇イザーかよ、と言うツッコミはさておく。

「そうして魔力の循環が命の循環となり、少しづつ生き物が増える。荒野は草木に覆われ、水の流れは河川や湖となる。水から様々な生き物が生まれ広がってゆく。大地は様々な生き物を育む」

「創世神話のとおりじゃのう。二柱の神あり、互いに助け合って命の源を育んだと」

「まあ、そうね。そうして、眷属を選び、彼らに知恵を与えた。その候補はすべての生き物より選ばれる。そうして様々な獣人と人が生まれた。また。魔力の作用によってエルフやバンピールなどの亜人種もうまれた。けれど彼らの違いは個性であって差別ではない。すべての種族は神の下で平等なの」

「そうして神の奇跡を目の当たりにし、信仰に生きるだけであればよかったのだが……」

「お互いの眷属の生活圏が触れ合ってしまった。そこで互いの神官、巫女らが互いの神を邪神と断じてしまったの。そうして、競い合うのではなく、相争うことになった」

「まあ、それはそれでよかったのだ。競争は需要を産み、発展に拍車がかかる。そう期待していたのだ」

「けど、互いの民を捕らえた後、奴隷としあうこととなった。もしくは生贄として供物に捧げることを思いついたものが出始めた。そんな生贄は私たちの糧にはならないのにね」

「争いの連鎖は憎しみなどの昏い感情を呼び起こす。そうして黒い感情に染まった魔力が循環しだした。人は死ねば魔力に還る。だがその還った魔力が憎しみなどに汚染されているとしたら?」

「それが魔物ですか」

「そう、魔法技術は発展していった。主に攻撃魔法だがな。そしてその中で汚染された魔力を呼び起こしそれを纏うことで人ならぬ力を身に付ける者が出始めたのだ」

「君たちはそれを真祖バンパイアとかリッチとか呼んでいたがね」

「眷属たちは互いに相争うがそのさなかに魔物が殴り込んだ。完全に第三勢力だね」

「まあ、全く想定されていない攻撃だったのでな、脆いこと卵殻の如しじゃ。もうな、ぺきっとひねりつぶされた」

「それゆえ我らは高まった信仰を力に変え、勇者を召喚した」

「そう、それがある意味間違いの始まりだったのじゃ」

「お前はそういうけどな。あれをしなければ眷属が滅ぼされていた。そうなれば信仰を失った我らは緩慢なる死を迎えていたのだぞ?」

「いっそ、そうなればよかったと思うておるよ。あなたがあの勇者に心奪われなければな?」

「だっかっら! 違うっつってんだろーがよ?」

「うるさい、小娘にデレデレしてたところ見たんだからね?」

「してねーっつの!」

「じゃあ、あの勇者の剣を授けるときに何でいちいち手を握る必要があったの?」

「あ、あれはだな。ほら、魔力を同調させる必要があったんだよ」

「そんなのいくらでも遠隔でできるでしょう?」

「慎重にやりたかったんだよ」

「慎重に口説いてヤリたかった? この破廉恥男!」

「なんで勝手に変な行間をつけたすよ? そんなふうに考える方が破廉恥じゃねーか!」


 なんか鼻先がほぼ1ミリメートルの距離でにらみ合う二人というか二柱。お前らもうちゅーでもしちゃえよ。犬も食わねえよこんなの。ってチューしちゃったら食われるのか。意味深だなおい。

 ぎゃあぎゃあ言い合うこいつらを見てると、この世界って実は平和なんじゃないだろうかと考えてしまう。

 と言うかどこら辺から脱線した? ああ、勇者に旦那が惚れたとか言い出したあたりか。


「ていうか、今更だけどな。あの勇者、男だぞ?」

「え?」

「ほれ、あの当時の記憶だ。ちなみに、後日一緒に旅した剣士の少女と結婚して幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたしってなってんだろうが?」

「男に欲情してたのねこの変態!」

「なんでそうなるんだよ!?」

 もうね、笑えてきたんですがどうしたら?

 ちなみに、初代勇者はキリッとした男装の麗人っぽく見える男の娘でした。というかどことなくバルドに似てる気がする。

「旦那様。当家の由来にだな、勇者の供をした剣士が魔王討伐の功によって騎士に叙任されたとある。その剣士がそうなのかはわからぬが……」

「よくあるパターンだと僧侶の少女とかじゃないのか?」

「僧侶は、旅が終わった時点で41歳だったそうじゃぞ? あと、男だと。メイスを振り回して信仰を説きながら、まつろわぬ者の脳天をカチ割ることを至上の喜びにしていたとか」

「そんな狂信者要らねえええええ!?」

「まあ、うちの家系に勇者の血が混じっていったのだろうなあ。旦那様に惹かれたのも、ご先祖様が異世界人と言うか、故郷の雰囲気に引き寄せられたのかもしれぬ」

「まあ、それは結果論でね。おれはそういう感覚はなかったけど、バルドの事は綺麗だと思っていた。そのまっすぐなまなざしに惹かれたんだよな」

「そんな、照れるのじゃ……」

 そうやってバルドと会話していると、ジトッした目線を感じた。なんか女神(笑)がこっちを見て恨めしそうにしている。

「むう、うらやましいのです。あんな優しい言葉とか一切なかったのです。眷属を導く姿には尊敬も感じましたし、素晴らしいと思いましたが……」

 その言葉を聞いて俺は神様(笑)を引っ張って耳打ちする。

 その耳打ちに意を決したように口を開くのだった。

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