光と闇の争い

 まばゆい光とともに現れたルフ(仮名)。ズビシッとシェイド(仮名)に指を突き付け高らかに言い放つ。

「とうとう見つけたわ!」

「ぐ、ぐぬぬ……見つかったか……」

「うふふふふふふふふ、とうとう来たのよ、この時が!」

「……それはならぬと何度も言っただろう」

「もう我慢できないのよ、それならこんな世界どうなってもいいわ!」

「おい、一応創造主の片割れとしてだな、自覚はないのか?」

「なくなった! だって全然文明発展しないし、供え物はまずいし、しまいには同族同士で争い始めるのよ? やってられますかって!」

「そこな勇者はだいぶこの世界の在り方を変えたようだが?」

「そうね。そこは評価してあげてもいい。けどね? やっぱりたまりたまったストレスはもうどうしようもないのね?」

「だからっつて全部リセットするてのはどうかと思うぞ?」

「あーもーうるさーーーーーーーい!!!」

 うわヒスッたよ。創造主の女神っぽいのがヒスッた。まあ、ギリシャ神話とか神様がやたら人間臭いしな。そう言うものかもしれない。

 というか、あまりにあまりな光景に再びみんなポカーンとしている。神様同士の痴話喧嘩と言うものも珍しい。

「これってもしかして、壮大な夫婦喧嘩?」

「どうもそうみたいだなあ。と言うかあほらしい」

 なんというか、みんなやれやれと言った風情だ。

「というかだ。ルフ様、貴女の望みは一体?」

「うふふふふ、そこの旦那と一つになって原初に還るのよ。とりあえず全部やり直すの。こんな飯のまずい世界はもうまっぴらなのよおおおおおおおおお!」

「お供え物がされてるところをよく見ましたが、それがそのまま貴女の食事に?」

「うん。というかね、コンビニで美味しいご飯が広まったじゃない。けど、てめーらときたら、旧態依然としたかったいパンとかうっすいスープしか供えないってどうなの? イジメ?」

「今までそれを供えていたので、急に別のものをお供えして失礼があってはいけないということらしいです」

「ふざけんなあああああああああああああああああああああ!!!」

 あ、キレた。そしてじりじりとシェイド(仮名)の方ににじり寄る。

「やめろ、寄るな! 来ないでええええええええええええええ!!」

 あ、さっきまでの威厳かなぐり捨てて半泣きで逃げようとしてる。なんという大魔王。

 というか、どこでもその家庭の最強は嫁なんだよなあ。俺も頭上がんないし。

「と言うか助けろ、世界を無に還すのはまずいってさっき言ってたよね、お願い、助けてえええええええええええええええ!!!」

「往生際が悪いわよ! 潔くあたしと一つになりなさい!」

 んー、なんだこの手籠めと言うか、なんというか。プルプル震えてるのはおっさんで、そこにうら若き乙女が肉食系の笑みを浮かべてにじり寄る。

 なんというリバースカップル。って笑ってる場合じゃないな。

「んー、身につまされる光景だねえ」

「なんじゃジェイド、何が身につまされると?」

「いや、なに。こっちの話さ」

「ふん、生きて戻ったらバルドとソフィアに弟か妹を作るんじゃからな?」

「お、おう。任せておきなさい!」

「そこ、一応世界の危機のクライマックスにのろけない?」

「旦那様、私もそろそろ二人目がじゃな」

「おう、任せろ!」

「あなた、バルド様ばかりずるいです」

「はっはっは、大丈夫だ!」

「てんちょ、人の事言えない……」

「言うな。言わないで」

 そうこうしていると、ルフ(仮名)が玉座の前まで来ている。とりあえず、タブレットを手に取り魔剣を放つ。

「ふん、小癪な。シェイドの力がこもった神器ならば私に通じると思うたか」

「だめっぽいな。というか、封印と言うか、あんたから身を守るための結界だったわけだ。んで、結界を維持する力を吸い上げたと」

「ふん、良く気付いたと言ってやろう。そういうわけで、私の力はシェイドの4倍程か。しかも当人が弱体化しておるでな」

「うむ、抵抗何ぞできるわけもなく」

「偉そうに言うなボケェェェェェェェ!」

「というか、あの女狐の口車に乗った奴に言われたくないわ!」

「ぐぬ、痛いところを」

「そう思うならその人間離れした魔力でちったぁ食い止めろ!」

「時間稼いだら何とかなるのか?」

「なんか考える。というか、力を奪い返せれば何とかなるんだが」

「ああ、元は拮抗していたのか。というか、力が釣り合えば一方的に吸収されることもない?」

「そうだな」

「これを使え」

「なんだこれ、ブラッドソード?」

「与えたダメージを吸収する。攻撃力は見た目0だけど、相手の最大HPとかMPに比例してダメージが計算される」

「相手が強大であるほど強くなるということか」

「そう。足止めするからそれでズバッとやっちまえ。刃はついてないから傷はつかない。というか、嫁に刃を向けるとか考えたくもない」

「ふむ、これで死ぬことは?」

「無いと思うが、うまくやれば一撃消滅は……たぶん大丈夫」

「目をそらすんじゃない。しかしまあ、これで光明が見えたか」

「んじゃ行くぞ。はああああああああああああああ!!!!」

 魔力弾を乱射する。だが光の結界に阻まれて相手には届いていない。

「ふ、無駄無駄無駄あああああああああ!」

「そうかね? んじゃこれはどうかな?」

 俺は掌を上に向け、指を直角に曲げて突き上げる。

 地面から魔力弾が現れルフ(仮名)に直撃した。

「ぐぬ、やってくれるではないか。ちょっと煤けてしまったぞ」

「あらー、ダメージとおってないか」

「ちょいと驚いたぞ。しかしここまでかの?」

「というかだ、あんたがそこまでブチ切れた理由、食い物だけじゃないだろ?」

「なぜそう思う?」

「食い物の事情は、あっちも変わらん。飯の事は置いておいて、それ以外になんかあったろ?」

「ふん、自らの巫女にうつつを抜かし、鼻の下を伸ばすドスケベには鉄槌が必要じゃ!」

「やっぱりそれかい!?」

 俺は思わずシェイド(仮名)を振り向くと、彼は残像ができそうな勢いで首を横に振っている。

「浮気者!」

 ルフ(仮名)が涙目でにらんでいる。

 なんだろう、世界の危機なのにこの緊張感のなさは。もはやあきれ返り始めてきたが、とりあえず口を開いたルフ(仮名)の言葉を拝聴する態勢に入るのだった。

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