出陣のとき

 神器授与が始まった。杖はまずラズ君に。彼はノースウッドの防衛戦ですさまじい戦果を上げた。ぬかるみに敵部隊を引っ張り込んで、そこに雷撃魔法を叩き込んだのである。6名のパーティが300の兵を撃破する武勲である。名杖カドゥケスを授与した。

 また、レナさんは前からコンビニの聖女の名声が高かった。ラグラン本店でヒーリングの窓口を開いていたので、冒険者の間にも人気が高い。医療をつかさどるアスクレピオスを授与。

 まあ、単純に士気を鼓舞する効果を狙ったわけではある。

 そしてここから冒険者選抜。貴公子然とした風貌と、流れる金髪、どこのカイザーだよって感じだ。黒騎士カミュ。グングニルを授与。

 勇者パーティの一人、弓兵ヨイチ。東方の英雄那須与一が使った重藤弓。

 赤の弓兵ロビン、短剣も使いこなし、敵の返り血で鎧は赤く染まったと言われる。女神アルテミスの弓。

 あと、魔導書グリモアは自分で使うことにした。これはどこからも異論が出なかった。出せる度胸が誰にもなかったとか言うな。


 さて、大魔王と勝手にレッテル張りをしているが、実は属性が違うだけで同じようなことを言っていることが判明した。言語阻害の魔法を解除すれば、普通に会話も成立する。なんてこったい。

 これがこちら側の認識である。悪の大魔王を倒すと言ったテンションではなくなっていた。ただ、ノースウッド近辺ではすでに何度も戦端が開かれており、多くの敵兵を倒してしまっている。要するに恨みつらみが蓄積しており、今更話し合いができる雰囲気ではなくなってしまっていた。

 となると、もう事態は北の拠点を解放し、大魔王と直談判しかないような状況である。

 光の聖霊とやらの思惑も見えてこない。というか、もはやあちらの言い分は破たんしている。このまま座視するのがいいのか、それとも動くべきか、もうどうしろとっていう状況である。


「さて、どうしたもんですかね?」

「事ここに至っては突き進むしかないと思うがの?」

 俺のボヤキに魔王様が応える。まあ、そうだよね。

「と言うかだ、異郷の地に躯を晒した数多くの同胞に、勘違いでしたとか今更言えぬ」

「ですよねー。レイル王の言うことももっともですよねえ。それもあって、頭痛いですよ」

「ふふ、一般人にはかなわぬ悩みじゃ。せいぜい頭を抱えるがよい」

「俺一般人がよかったんですけど。ただのコンビニ店主で居たかった」

「手遅れじゃ」

「ぎゃふん」

 思わず机に突っ伏してしまう。そうこうしているうちに演説の準備が整ったと呼び出しがかかった。

 俺と魔王様、レイル王はお互い目を見合わせて苦笑いを浮かべる。多くの民や兵をだまして利用する。ありていに言えばそういうことだ。だが、もはや動き出した事態を止めたらどうなるか考えたくもない。


「よくぞ集まった、光の聖霊に与する精鋭たちよ。我らが悲願、大魔王討滅まであと少しを残すところとなった」

「敵はここより北に兵を集めている。だが、いまなる大群が雇用とも、我が槍にかけて打ち破って見せよう!」

 魔王様とレイル王がいい感じで煽った。兵たちの熱狂は有頂天に達している。

「これより閉ざされた大地テハスへと進撃する。3つの封印が解けた今、かの地へと向かう障害はすでにない。俺に続け!」

 そう叫ぶと俺は飛翔魔法で軍の先頭に立った。そのまま全軍が行進を始める。実際に封印を解いたらどうなるか。それは誰にも分らない。おそらくだが光の聖霊だけはわかっているがそれを問いただすすべはない。

 もう一度言う、どうしろと?

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