キャンプウィラメット
さて、いろいろと思うことがあった。やってられねえ。要塞化した拠点を相手の3割の兵力で攻略? マゾ過ぎる。
よって強硬手段に出ることにした。ぽちっとなーとメールを送る。今いる拠点は出張所扱いになっているのでできることだ。転送魔方陣から3人の姿が現れる。ノブカズ君とセリカ、ナギである。
セリカはなぜか魔女っ娘スタイルだったが、突っこむのはやめておいた。まずやることはいくつか。冒険者部隊を動員し、近隣で狩猟を行わせる。ノブカズ君にはノースウッド支店から商品の移動を指示していた。そう、塩コショウとか焼き肉のたれである。
ほか、キャンプグッズで炭とかバーベキュー用の網。あと野菜も忘れてはいけない。出張所だと出来合いの弁当やパンは入荷できるけど、食材は入らないんだよね。
折から風は北より吹いてきており、機は熟した。一斉に炭火を熾し、たれに付け込んだ肉を焼く。ほか、うなぎなどを焼く。かば焼きである。ライスも炊いておいた。そして風はうまそうなにおいを敵陣に吹き込む。味方はうまそうな匂いに士気が爆上がりである。
「「うめええええええええええええ!!」」
「「むっはあああああああああああああ!!」」
そして敵の斥候がこちらの調理スペースをすごい目つきで凝視している。目を真ん丸に見開いて。
「まあ、あんな狭いところに5000も集まってりゃ、ろくな飯は食えないよね」
ノブカズ君に語り掛ける。横のセリカ嬢になんで魔女っ娘スタイルなのかのツッコミは勝ってからだ。
「まあ、かさばらなくて日持ちのするものになりますよね」
「しかも、こっちは補給があるけど、向こうは限られてる。細く長く食う羽目になってるとこに飯テロ」
「さすがオーナー、えげつない!」
「はっはっは、褒めるなよー」
「えと、褒めてないと……オモイマス」
「セリカ、そこは空気読もうよ」
「えと……からけ?」
「もう漢字理解してるのかよ? すげえな!?」
セリカ嬢はノブカズ君から日本語を教わっている。夫の国の言葉を操れずして良妻はならず! と何か間違った方向の情熱を燃やす。しかし、アスキーアートを使いこなしてる時点でもうね。さらにボケまで追加されているあたり偏ってるのはあきらめよう。
さて、飯につられた敵兵の一部が突貫してきた。ノブカズ君の神器エクスカリバーによって軽く蹴散らされる。攻撃は結界によって阻まれ、魔力刃を飛ばしてざっくり100ほどの兵が倒れる。
「山をも断ち切る刃を受けるか!」
さらに横合いからバルドが追撃だ。カラドボルクに魔力を流し込むと刀身が輝きだし、光が強まって視界が白く染まりそうな頃合いで、剣を横に振るう。
ばっさりと敵兵が斬られる。飯テロの誘惑に負けて突出してきた敵兵は、ほぼ壊滅した。この時点でほぼ個人的武勇で敵を叩いたので、フリーの兵力を用いてがら空きになった砦を占拠してゆく。
そして敵兵が奪還のために突撃してくると、側面から旨そうな匂いの煙を浴びせる。敵の意識がそれたところにドーガ率いる部隊が切り込む。うん、こいつら腹減らしてんなー。
串焼きをかざして前進すると、剣を捨てて投降してくる者すら現れた。とはいっても言葉通じないけども……って一つ気づいた。呪いがかかってる。これ陣営を変えたらバフなんだろうなあ。
まあ、とりあえず解呪してみた。すると……
「おおお、うまそうな匂いがするーーーー!」
「うっわ、まじか」
言葉が通じない理由が、おそらく欠けられた魔法というか呪いだった。おそらく同種の呪いがかかっている相手としか話せないみたいな。
そうなると、いろいろと前提が覆る。光の聖霊とやらの言い分が非常に胡散臭く思えてくる。空中から地面に魔術の楔を打ち込み魔方陣を構築、敵のほぼ全軍の解呪に成功した。。
「sっうぇdrftgvybぬも、p。345bじょ;おjん;!」
うん、普通にイケメンだと思ってた魔戦士ジークは化けの皮をはがされただのオークになった。素晴らしい槍術の冴えを見せていたと思ったら、今は棒きれレベルの振り回し方である。もちろん魔力も平均以下なので、ひとまず寝かせる。と言うか、本体がいてこいつはただの依り代なのかもしれないな。
敵兵には食事を与えて懐柔する。一部の者は、身内を殺された仇であるとかたくなだったが、大部分は降ってくれた。ジーク(?)はごちゃごちゃ話しているが、ぶひーとかぶきーとしか聞こえないので放置している。強さもなぜか普通のオークだった。
いろいろと疑問はあるが、勇者たちはそのままノースウッドに帰投させた。ナギが出番がなかったとぷんすかしている。
まあ、最終兵器のつもりだったのは間違いない。下手すると地脈ごとえぐりかねないし。
で、降った亜人さんたちに命じて工事を進め、キャンプウィラメットを構築する。
支店を建設すると、支店の屋根のアンテナから光が北に向けて放たれるところだった。地脈から力を吸い上げているのを感じる。ただその力は光とか闇とかじゃなく、もっと原初的なものだったように感じられた。
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