四天王(真)現る

 さて、東西の進行はとりあえずめどがついた。うちの担当の南方だが実はこっちも苦戦していた。

 ラグランを本拠としてそこから街道を作りつつ進んでいる。ただ進むよりも後の事を考えて道を切り開いたほうが効率がいいからだ。

 事前に友好的な集落には根回しをしているので、彼らからの支援も受けられた。コンビニ弁当は最強の懐柔アイテムである。

 だが友好的な集落もあれば、当然敵対的な相手もおり、大魔王の眷属を名乗る連中は対話ができない。まさに問答無用。殿中でござるってこれは違うか。


「オーナー、計画の進捗です」

 ラズ君が報告書を持ってくる。ラグラン本店はレベルアップの時に3階建てになっており、本部機能が付いた。なんか社長っぽいデスクと、ふかふかの椅子。実にいいものだ。

「ん、ありがとう……思わしくないね」

 ざっと目を通す。このペースだと予定の地点まで半年以上かかる。東西も厳しい状況だがこっちも負けてない。

「なるべく懐柔に勤めているんですが、話が通じない連中が」

「とっ捕まえた捕虜に煮えたぎらせたおでん食わすか」

「それは捕虜取り扱いの条項に反します」

「いつ決めたやつだよ……」

「さあ?」

 やれやれと肩をすくめる。まあぼやいても問題は解決しない。前向きにいこう。


「コンビニの精鋭になりたいか!」

「「「うおおおおおおおおお!!」」」

 どこからともなく流れたうわさ。今のキャンペーンはブートキャンプを修了していると評価が一段階底上げされるらしい。コンビニスタッフであればさらにもう一段あがるとか。誰が流したんだろうなあ?

 神器を手に入れれば巨大な権威を手に入れられる。それこそ王として立てるくらいに。しかしまあ、そんな頭のめでたい奴に神器が授与されるわけもなく、使える人材ならば使おうと言った事情である。

 当然だが、ポイント以外の部分の評価は非公開で、ぶっちゃければこっちの好き放題に決められる。結局今回の事態を有利に進めるための方便であるところが大きい。もちろん人材発掘が主目的ではある。

 まあ、いまさらだが組織が大きくなればいろいろと出てくるものである。一店舗をひーこら言いながら回してた頃が懐かしい。


「あなた。南方が不穏」

「いまも平穏じゃないだろ?」

「言葉遊びじゃない。四天王らしき者があの辺の諸部族を糾合してて、かなりの数になりそう」

「ふーむ……」

「取れる手は二つ、今の時点で個別に叩く。これはリスクが少ないけど時間がかかる」

「いまやってるのと変わらない状況だね」

「そう、もう一つは敢えて集めて一気に叩く。ただ負けたら被害は甚大」

「なるほどね」

「どうします?」

「集めようか」

「規模の予測は5000くらい」

「ノースウッドでそれくらいと戦ったし」

「わかった。招集命令出しておきます」

「お願いね。あと会敵予想地点に拠点を作ろう。そこに目を引き付けて挟撃する」

「わかった。ただ数はしっかりと監視を」

「もちろん」

 カエデちゃんはにっこりとほほ笑んで部下たちに指示を出すために去っていった。


 さて、1週間後。売上表を見つつ、拡張してゆく店舗網を確認する。出張所が多い。所在地の人口を考えると規模的には仕方ない。拡張した街道を見て、将来発展しそうなところには支店を置く。出張所の取りまとめをするためだ。

 仕分けをしておくと、支店=通常店舗、商品は一通り置く。出張所=簡易店舗、商品は限定、一部の取り扱い。ATMなども支店にはあるが出張所にはない。

 ここで報告が入った。南方戦線で構築中の拠点に向けて集結した亜人の軍が進撃を開始したと。数は5500と少し増えている。

 あらかじめ拠点に入れている兵力は500。冒険者中心に800を集め遊撃軍を編成する。そしてドーガ率いる本隊1000が急行する。


「殿、敵兵ですが、レベル80前後のようです」

「なんだと? えらい高いな。あと俺は殿じゃねえ」

「むう、ではなんと御呼びすれば」

「いや、ついこの前までオーナーって呼んでたよね?」

「ですが、世界をまとめる王になられましたし」

「なってねー」

「ああ、まだ実質だけで形式がありませんから?」

「なる気もねえ!」

「なんと謙虚な。このドーガ、殿に生涯の忠誠を……」

「いやいらんから、給料分働いてくれたらそれでいい」

「むう、なんとお優しい」

 ドーガが最近言葉が通じない。いつもこの調子だ。

「あなた、砦に敵が攻めかかってます」

「よし、突っかける! ドーガ、左翼を任す。敵を引っ張り込んだら横から衝け。ルークは右翼だ。ドーガの攻撃から少し時間差をつけて叩け。俺は中軍を率いて敵を引っ張り出す」

「「了解!!」」

「ルイに伝令、こっちの伏兵による挟撃が成功したら背後に回って退路を断つ動きを見せ、敵が改装したら側背から削れと」

「はは!」


 こうして戦端は開かれた。敵がこっちよりも数が多いのはいつもの事だが、兵の強さが普段より高い事が気になった。あと、指揮を執っているであろう四天王も気になる。不確定要素はいつもの事だと割り切り、俺は部隊に前進を命じた。

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