事態は動き出す

 地形や現地の情勢をモモチ衆が悪戦苦闘の末掴んできた。かなり犠牲者も出たようだ。この作戦が成功したら、最大の功績は彼らに贈られるべきだろう。

 そして各方面に兵が派遣されてゆく。基本的に言葉が通じる相手には交渉を持って事に当たるようにしている。と言うか、コンビニ弁当をばらまいたら大抵話が付く。そしてコンビニ出張所を設置することを伝え、素材回収や食料と言うか、弁当のの販売について伝えると非常に喜ばれる。実際問題として、現地では珍しくないものでも、王都などでは珍重されるものもある。あとは汎用性が高いゆえに常に品不足なものもある。街道を整備してキャラバンも派遣する。

 貧しいがゆえに奪う。争う。ならばそれを解消すればたいていの紛争は片付く。まあ、敵対する集落なんかもあるのでそこは攻め落とすこともある。一本の木も切らず、草も刈らずに道を作ることは能わず、だ。


 さて、出張所が増えるにつれて悩みが出てきた。一か所あたり交代要員も含めて5人ほどを配属している。まあ、あれだ。事業拡大につき人材募集! と広告を打った。ただし試験はブートキャンプを通過すること。そしてここでキャンペーンが裏目に出た。これをやっていなかったら参加者はもう少し多かったと思うが、みんな神器に目がくらんでいる。あと、遠隔地の出張所に配属されるのを内心疎んでいる者もいるようだ。

 いろいろと問題が出てきている。頭が痛い。


「なんか飴ぶら下げないとあかんかね?」

「うーむ、きれいごとでは人は動かぬのう」

「そうなんだよ。自発的にやる気をもってもらわないともっと大きなトラブルが起きるし。そもそも、遠征軍の背後で反乱とか悪夢すぎる」

「あなた。東で騒動がおきてます」

「反乱か?」

「出張所に闇の眷属が攻め寄せているようで、さらに王国軍は目の前にある砦攻めで釘付けです」

「わかった。行ってくる」

「私も行こう」

「ありがとう、バルド。カエデちゃんは引き続き情報収集を」

「はい……私も戦いたいです」

 何か決意のこもった目でこちらを見てくる。だから俺も自分の考えを正直に話した。

「すまない。これからの戦いは正直、カエデちゃんのレベルだと厳しい」

「そう……ですよね。ごめんなさい。わがまま言って」

「けどね。もっと重要な戦いがあるんだ」

「それは?」

「情報戦だよ。事前情報があるから効率よく戦える。犠牲も減らせる。実際、会戦で敵軍を撃破するよりも重要だと思う」

「ですが……」

「そもそも、話し合いができる相手なら戦う必要がない。それも情報がなかったら戦いになるかもしれない。そういうこと」

「はい」

「集まってくる膨大な情報を分析し、取捨選択をし、わかりやすく上げてくれる。これは君にしかできないんだ」

「わかりました。私は私の為すべきことをやります」

「うん、よろしく。いつもありがとう」

「はい、あなた。ご武運を」

 笑顔で見送ってくれるカエデちゃんに笑顔を返しながら、俺たちは転送魔方陣に乗った。


 現地はひどいありさまだった。王国の残していった衛兵と合わせて20人くらいのところに500ほどのゴブリンが攻め寄せている。集落の人々は虐殺され家は燃え盛っていた。とりあえず、魔法弾を放つ。数体のゴブリンが撃ち抜かれて倒れるが、結界を張って防御に成功する個体がいた。ゴブリンメイジか、厄介な。

「てええええええええええい!」

 防御無視の一撃は結界を切り裂いてゴブリンを両断する。当たるを幸いとなぎ倒す。その姿を見た兵が打って出た。

 援護のために上空に打ち出しておいた魔力弾を撃ちおろす。上空からの攻撃に対処できずゴブリンは混乱を始めた。こうかはばつぐんだ!

 半数ほどを討ち取ったところで敵は逃げ出した。とりあえず集落の救助を行う。逃げ伸びていた人々もかなりの数に上り、回復魔法やポーションのおかげで何とか助かった人もいた。

 とりあえず王国軍から兵を回してもらい防衛を依頼すると、使い魔を飛ばしておいたゴブリンの集落に襲撃をかける。

 このゴブリンと言うのは繁殖力が旺盛で半年もすると今日の損害は埋めて余りあるくらいに増える。文字通り鼠算式に増えるのだ。500での遠征ならば、集落にはその倍以上がいるだろう。

 とりあえずてくてくと歩いて近寄ってゆく。ゴブリンたちは警戒もあらわにしているが、矢玉が飛んでくることはなかった。さすがに混乱しているのか。

 いつぞや思いついて実行に移さなかった魔法を試すことにする。地面に手をついて魔力を流す。

「大地の精よ、我が呼び声に応えよ。天地逆転!」

 俺の言葉に応じて大地がうごめきだす。

「「ギィ?ギギギギ??!」」

 うん、何言ってるんだかわからんけど、たぶん貴様? なにをした!? っぽいことを言ってるんだろう。

 そんで、とりあえずどんと足踏みをした。するとゴバッて感じで地面が崩落する。これ同じこと手からじゃなくて足から魔力を操作できないかな? 今度試そう。

 ゴブリンたちが悲鳴を上げながら穴に落ちてゆく。といっても3メートルくらいの高さだし、即死するような状態ではない。そして地面に影が差す。ゴブリンは絶望の表情を浮かべていたように見えた。

 地面をえぐり取ったのと同じ形をした岩塊が浮かんでいたのだ。陥没した地形と同じ形をしたそれは、蓋をするように落下してきた。

 軽い地響きと共にゴブリンの集落は更地と化した。

「旦那様。えげつないのう……」

 バルドにドン引きされて俺のガラスのハートは粉々になった気がした。

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