方針が決まりました
ラグランの城塞を会場に、大魔王討伐の事が話し合われた。転送網を使って各国の要人が集まってくる場面は圧巻ですらあった。と言うか、一定の規模があれば転移できるのね。支店だけでなく出張所でも使えたのはもうびっくりだ。実際に利用した方からするとびっくりどころじゃないっぽいけど。
ただ、個人しか転送できないので、部隊とかを送り込むことはできない。ただし、この世界は軍を個が圧倒する場合がしばしばある。王国の王都に魔王陛下を送り込む。あとはドカンと一発やるだけで王国は大混乱に陥るだろう。ただし、そんなことやってしまったら今ある交易による利益が吹っ飛ぶ。王国向けの交易品の生産や王国から入ってくる食料、嗜好品が全部なくなる。
戦争とはそれをやることによって利益が発生することが大前提だ。そしてそれを起こすことによって今は不利益しかない。しかもそう持っていったのは俺と言うことになっている。世界を戦いから解放したとかなんか持ち上げられているが、俺は商売をしただけだ。けどね、誰かが不幸になるような商売って続かないんだよね。みんな幸せでWin-Winだから続く。そう思ってる。
「西の拠点は我らが攻めよう。良いか、ジェイド卿」
「ああ、ヒルダ。お前のためならば神の首でも取って見せよう」
「ば、ばか、こんなところで何を言い出すのじゃ……」
こいつらなんか腹が立つ、あとでイエスノー枕を進呈してやる。新婚さん気分を味わうがいい。
「旦那様、今度は弟かの?」
「さあね?」
ここで予定通りお二人に神器を授与する。ジェイド卿には盾だけだとあれなので、慈悲の剣コルタナも渡す。魔王を守る盾の異名を持つジェイド卿にはふさわしい気がした。
というかアイギスで敵の攻撃を遮断し、後方からゲイボルクが降り注ぐ。どんだけ……この二人だけで敵軍を撃破できそうですね。もうね。
「東は引き受けた。この槍はいいものだ。兵の顔が引き締まっている」
「伝説の王が振るった槍です。かの王は兵を率いても一騎打ちでも一度も破れなかったとか」
「なればその名に恥じぬ戦をしようか」
ロンゴミアントの効果は武器としても強い。重装歩兵を盾ごと貫く。だがその真価は兵のレベルを倍にする。さらに攻撃、防御、機動力にボーナスが付く。まさに神器の名に恥じないチート機能だ。ついでにスキルとして、鼓舞を使うと、攻撃力が一時的に跳ね上がる。
「そうそうジョゼフさん。これを」
「なんですかな?」
「Sランクアイテムなんですが、ヘスティアのツボです」
「Sランクって秘法じゃないですか!?」
「そうですね。とりあえず軍を率いてもらう以上は大事なことがあります」
「兵の食事ですね。距離が長くなれば輸送も負担が増えますし、水場が都合よくあるかもわかりません」
「そこでこのツボです。紐じゃありません。このツボに入れた食料は自動的に調理されます。味も良くなります」
「おお、それは助かります!」
「あとは、拠点を確保出来たらうちの出張所を置きますので、物資の輸送は少しは軽減できるかと」
「なるほど、素晴らしい」
ひとまずモモチ衆の報告待ちの状態なので、今回は方針を決めるだけだった。情報はコンビニメール便でほぼリアルタイムに配信される。このことについても相当な驚きをもって迎えられた。便利すぎると。まあ、コンビニエンスが由縁だし?
さて、神器を持たせる人間が決まらない。力量的には人外クラスに近づいてる冒険者やうちの兵がリストアップされている。力を持ったらヒャッハーするようなのは一応弾いてあるらしい。
もうあれか。競い合わせるか。ということで、キャンペーンを張ることにした。冒険者ギルドに使者を出す。
ノースウッドの店舗前には冒険者が詰めかけていた。創業以来初の大規模キャンペーンを発表すると告知したためである。
「なにがあるんだ?」
「さあな。けどなんか面白いことやってくれるって」
「そうだな。そういえば軍曹のトレカシリーズ、第7弾買ったか?」
「え? なんだそれ!?」
「これだよ。SSR出たときは思わず叫んじまったぜ」
「新装備かあ……フーンって!? ミョルニルにアイギスだって? アーティファクトじゃねえか!?」
「そうなんだよ。あの軍曹殿がさらにパワーアップ! 胸が熱くなるな!」
「そうだな。けどそんなもんで折檻受けたら死ぬな」
「死ぬほどの折檻。我々の業界ではご褒美です!」
「どんな業界だよそれ!?」
なんかいろいろ危なそうな会話がされているが、まあ、気にしたら負けだ。とりあえず屋根に飛び乗る。尊敬する川口店長をオマージュして声を上げた。
「いらっしゃいませ、野郎ども(ファッキンガイズ)!」
ざわめきが収まる。風を操って声を遠くまで届かせる。ちなみに応用すると特定個人にだけ声を届けることもできる。基本嫁にしか使わないが。
「コンビニハヤシでは精鋭を求めています。すでにお聞き及びの事でしょうが、大魔王討伐が発令されました。魔国も、王国も動き始めております。
そして我がラグランでは南の拠点を制圧するための精鋭を募っております。冒険者ギルドと提携して、これから3か月間の討伐、防衛ポイントとお買い物ポイント、さらにレベルアップの上位者になんと!」
ここで言葉を切る。そうして改めて注目が集まったころ合いで……
「神器を授与します!」
一瞬の静寂とその直後沸き返った歓声にノースウッド店は包まれた。思わず音を遮断する羽目になるほどの騒ぎである。と言うか、景気づけにファイアボール打ちあげるのやめれ。花火じゃないんだからな。花火と言えばピアノ弾き語りすんぞこら。出来ないけど……。
「エントリーはそちらの受付で行ってください。ギルドカードとポイントカードが必要です。エントリー費用は500ゴールドです。ギルドに払う手数料となります。はい、押さないで!」
「貴様ら! 栄えあるコンビニの精鋭になりたいか!」
「「「「うおおおおおおおおおおおおお!!」」」」
ドーガがコールアンドレスポンス始めちゃったよ。どこのライブ会場ですか。
こうして今回のキャンペーンは空前の盛り上がりを見せるのであった。
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