世界の謎

「レベルアップの条件を満たしました。レベルアップしますか? Yes/Np?」

 特に悩むこともなく、Yesをたプする。いつも通りタブレットから光が溢れ、店を包んでゆく。眩しさに目を閉じ、再び開くとなんか変な場所にいた。


「今代の勇者よ。よくぞここまで力を蓄えました」

 なんか光の玉みたいなのが俺の目の高さに浮いており、直接頭の中に語り掛けてくる。

「へ? 勇者ってノブカズ君じゃ?」

「勇者が一人と誰が決めました?」

「え? そういわれたらわからんでもないけど……」

「神代の時より、私と大魔王は戦いを繰り返してきました。私は光を極めしもの、彼は闇を極めしもの」

「テンプレだと、どっちかが消えると、世界が維持できなくなるって言わない?」

「ぎくっ!?」

「ぎく?」

「なななんでもありません。ですがそなたの申す通り、光と闇、どちらが消えてもいけません。ですが彼は闇ですべてを塗りつぶそうとした。闇の反乱によって一度この世界は滅びかけたのです」

「うん、ありがちだねえ。で、多分また500年に一回とかの周期で封印が緩んでいる。封印され弱っている大魔王にダメージを与えて再度封印を施せと?」

「いや、あの、その……」

「パターンとしては北の閉ざされた地の封印が緩むので、その中に入ってって感じ?」

「あうあうあう……」

「図星?」

「人のセリフを取らないでください!」

「そもそもあなた精霊なら人じゃないでしょうに?」

「んだああああああああああああああああああああああああ!!!」

「あ、キレた。やだねえ、年よりは。気が短い」

「くっ、こんな無礼な勇者は初めてです」

「いやあ……」

「褒めてません!」

「えー、わがままだなあ」

「うすらやかましいわ!!」

「怒鳴ってるのはあなたじゃないですかやだー。ていうかうすらって……」

「んがあああああああああああああああ!! 話が進みません!」

「って、さっきの話以外に何が?」

「ええい、コンビニをこの世界に取り込んだ理由を話します」

「おお、そういえば、考えたら負けだと思って疑問にすら思ってなかった(笑)」

「カッコわらいじゃねええええええええええ!!」

「よく叫ぶね。疲れません?」

「あんたが言うな……」

「で、コンビニの秘密って?」

「日夜分かたず光をたたえるあの建物は、我が依り代となっているのです」

「え? 夜は閉めてるけど……」

「うえ?! どうりで時間がかかったわけです!」

「へ?」

「3年もかかったのはなぜかと思いましたが、24時間営業じゃないんかーい!?」

「だって、深夜は売り上げあまりないし、経営判断だよね?」

「ぐぬぬ、光をたたえていた時間でレベルアップ条件を満たすんですよ。店舗が増えればそれだけ力がたまる速度が上がります」

「うッわ、レベルアップ条件ってまさかの日照時間!? ビニールハウス栽培を彷彿とさせるな」

「野菜じゃねえ!」

「まあ、いいや、本題に戻りましょ?」

「さっきからボキボキと腰を折りまくってるのは誰だと……

 まあ、いいです。貴方の選んだ者を光の戦士に任じなさい。それにふさわしい武器を購入できます」

「買うのかよ!?」

「その資金がコンビニのなんかいろいろと不思議パワーになっているんですよ」

「不思議って言っちゃったよ。設定も説明も無しかよ!?」

「神の力です」

「うわ押し切った!?」

「まあ、それはさておき。大魔王を守護する四天王は生き残り4人です」

「四天王だから4人で間違ってないんだろうけど、生き残り4人って言い回しは違和感しかないね」

「彼らは魔将軍、魔軍師、魔戦士、魔神官と呼ばれております」

「んで、最初に倒したやつをけなすんだよね。あいつは四天王中でも一番の小者って」

「天丼はもういいでしょうに。それすでにやってますし」

「やってたんかい!?」

「後、店舗同士の転送網の封印を解きました。送料は距離に比例します」

「有料かよ!?」

「コンビニのサービス全部そうですし。後、運べるのは人間とその装備品だけですよ」

「なるほど」

「んで、話を続けていいですか?」

「えー?」

「えーじゃない!?」

「またキレた……軽いジョークなのに」

「うぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……ひっひっふー、ひっひっふー」

「ラマーズ法……あの、あんま興奮するとおなかの赤ちゃんに良くないですよ?」

「妊娠してねえ! そもそもしねえ!」

「え、不妊症なんですか……大丈夫、子育てだけが人生じゃありません。人それぞれの幸せが……」

「クソやかましいわ!」

「クソって言った……やだこの人下品」

「でえええええええええい、人の話を聞け!」

「二分だけでいい?」

「わかったから黙れ!」

「横暴だなあ。んで?」

「なんでそんな上からなんですか……?

 ええと、どこまで話しましたっけ……そう。コンビニは私の力を持った神殿なのです」

「ほうほう」

「そして、店舗をここに作ってください。東の地カッパーマイン。南の地ウィラメット。西の地タルサ。そして北の地、閉ざされた大地テハス」

「地図を見る限りラグランとノースウッドの中央を焦点にした楕円を描く感じ? 地脈を繋いで大地そのものに魔方陣を描く?」

「って急にマジモードに……そういうことです。永続的に近い封印をこれで構成できるはずです」

「ふむ。んで、一つ確認が」

「なんですか?」

「コンビニのレベルアップに伴って封印が緩んで、大魔王に属する者の力が上がってる系?」

「そうですね」

「さらっと言われた!?」

「もうもったいぶるのがアホらしくなりまして」

「まあ、いいや。どうせ今のパターンだと、その封印を置く土地には四天王が待ってるんでしょ?」

「そうです」

「ちなみに、ほっといたら封印が解けると思うんですが、猶予はどれくらい?」

「1年です。若干前後するかもしれませんが」

「ちなみに復活してしまったとして、倒せるめどは?」

「消滅させられたら困りますが、4か所の地を押さえていればなんとか?」

「うへえ……しかしまあ、やるしかないか」

「よろしく頼みます」

「ところで、大魔王を封印したら次は光が暴走とかないよね?」

「た、多分大丈夫じゃないかな? ほら、私もこの世界の舞台装置の一つだし?」

「はあ、そうなった時の対策もよろしく頼むよ?」

「いい言葉があります。臨機応変!」

「それただの行き当たりばったり!」


 俺の突込みを最後に世界が切り替わった。時間は1年。しかも経過すればするほどこっちが不利になる。俺はため息とともに現状を把握してゆくのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る