ATMサービス始めました

 冒険者ギルドと提携が決まった。冒険者の資産を預かる銀行業務が行われており、ギルドカードで身分証明がされていた。資金を預かったり、貸し付けなどがされていたのである。それはギルド支部であればどこでもできている。

 考えてみればこれもかなりオーバーテクノロジーではあるが、まあ、考えても仕方がない。

 うちのポイントカードで手数料を払うとギルドカードの機能を代行できるようにした。そして専用の機械、要するにATMを設置した。あとはギルドカードから直接引き落とし機能がついた。これで武具などの大きな買い物がしやすくなったのである。

 同時に、素材買取の際にギルド機能連携で、討伐ポイントが付与できるようになった。これでギルドランクを上げやすくなる。

 素材ポストにはギルドカードの読み取り機能が付いた。もちろん、うちのポイントカードお読ませられる。二つともポイント付与ができるし、どっちかのポイントしか付与できないということはない。それをやってしまうと最終的に共倒れになる、これがギルドと交渉するときの共通認識だった。


「はい、冒険者ギルドとの提携記念セールでーす。ギルドカードとコンビニポイントカードを一つにまとめられるようになりました。500ゴールドです。今日から30日は500ポイントバック! 期間限定なのでお早目にー!」

「おう、あの機械は何だい?」

「はい、ギルドカードでギルドに貯金があれば引き出せます。貸し付けも可能です。もちろん、返済も」

「なるほど。こりゃ便利だ」

「はい、是非ご利用を!」


「んー。このくろがねの槍、ほしいんだが手持ちがなあ……」

「はい、でしたらギルドカードの残高が足りていれば直接引き落としができますよ」

「え? そんなことできるの?」

「はい、手数料がかかりますが、いまならポイントで手数料分をバックしています」

「だとすると……これ5000ゴールドだけど」

「そうですね。残高は……OKです。引き落とし手数料が100ゴールドですね」

「てことは?」

「お買い物のポイントが500ポイントと、キャンペーンで手数料分バックなので、600ポイントですね」

「そりゃいいな、じゃあ、それで」

「ありがとうございます! お店を出て左手の建物で微調整とエンチャントをやっています。3日間は微調整が無料で、エンチャント半額チケットも出ますよ」

「エンチャント半額ってすごいな! ありがとう、また来るよ!」


 新商品は正直あまり受けが良くなかったので、基本サービスの見直しを考えた。

「あなた。うちの実家の伝手で冒険者ギルドからお話があると」

 カエデちゃんが書状を持ってきた。

「へえ?」

「御館様。ギルドより業務提携の提案です」

 タンバさんが何処からともなく現れる。んで、書状の解説をしてくれた。何々……へえ。これはいい。

「ラグランとノースウッドは冒険者の最前線だからねえ」

「だから利便性を上げればその効果が大きくなる」

「ある程度の権限を持った支部をラグランとノースウッドにおいてもらえないかな? 建物はうちで用意するし」

「ラグランは元々ある。ノースウッドだね」

「要するに上位ランカーの評価ができるだけの支部があればいい」

「なるほど。要望を出しておきます」

「手数料は……まあ必要経費か。あっちからも素材の買い取り代金が入るし。ここはトントンで問題ないかな」

「利益が一方に偏ればいつか関係は破たんします。それが良いですよ」

「うん、それで行こう」

 交渉はタンバさんを経由して書状のやり取りで進んだ。まあ、あれだ。お互い顔を合わせることのメリットよりデメリットが大きいのだろう。冒険者ギルドの上層部って常に暗殺の脅威におびえてるとか言われてるし。

 冒険者ギルドを支配下に置けば、事実上冒険者を支配できる。ピンキリではあるが上位ランカーは下手をすると各国の将軍クラスの戦闘能力を持つ。

 故に各国はギルドに利益を供与するのだ。噂によるとギルドマスターは初代が今もその座についているという。単に称号的なものを受け継いでいるだけかもしれないが、まあ、そこもあれだ。気にしたら負けである。


 そして、このギルドとの提携で、売り上げは伸びた。ギルドも上位冒険者の功績を評価し、シルバー以上の上位ランカーがそれこそ創立以来と言ったペースで増えた。

 コンビニがスポンサーになっている冒険者のランクアップが速いといううわさも流れたが、まあ、あれだ。実力があることが提携の条件である。問題ない。


 さて、そんなある日。タブレットにメッセージが来た。これまでも新機能リリースの案内がよく流れていたので、今回もそれかと思って、内容を確認すると……レベルアップの案内だった。

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