決戦ノースウッド

「鈍、鈍、鈍、鈍器~♪ 鈍器もって~♪」

「オーナー、なんすかその歌は……?」

「ドーガ軍曹の鬼の金棒テーマソング」

「えーっと……まあ、いいです」


 さて、こっちの戦力はドーガ率いる300のブートキャンプ卒業生。正式にラグラン大公国に仕官した正規兵である。

 そして冒険者たち。500ほどが集結している。うちのポイントカード目当てでもある。防衛戦で貢献するとポイントがたまる。このポイントは買い物にも使えるし、武具や素材への交換もできる。

 今回からであるが傭兵ランクを導入していた。通常のポイントと同比率でたまる戦績ポイントシステムである。戦績ポイントはそのまま通常のポイントに変換が可能だ。このポイントでしか交換できない武具を用意した。同じく消費アイテムもだ。たとえば、身代わりの呪符。死に至るダメージを一度だけ肩代わりする。火炎呪の宝玉、ファイアボールを何回か打てる。回数はランダム。他にもたくさんだ。

 さて、魔国からはカイン卿率いる100名。これは常駐ではなく、現地視察中に巻き込まれた形である。

 王国からは先日の王都襲撃の際に、王の補佐官として武名を馳せたマッセナ将軍率いる200。相手の1割にも満たない戦力である。


「ドーガ、全軍の指揮を任せる。ここのポイントに敵兵を誘導しろ。あとは魔法で殲滅する」

「はっ!」

「ハヤシ殿。ここは只の荒れ地ですが、いったいどのように?」

 マッセナ将軍が質問をしてくる。

「企業秘密です」

 納得していない表情であったが他の指揮官たちが異論を唱えていないところを見て、ひとまず指揮に従うことを了承してきた。

 敵軍は4000の軍が5つ。北の砦には冒険者たちを入れて防戦させる。これで一軍を抑える。もう一軍が別方向から迫るので、ドーガに遅延戦闘をさせながら指定のポイントに引っ張り込む。

 おそらくだが指揮系統はバラバラなのだろう。後方の軍は動こうとしない。だが拠点などを築かれると厄介なので、後ほど攻勢をかける必要がある。


☆一方そのころ☆

 砦に迫る軍は獣人兵が中心であった。盾をかざして降り注ぐ矢をものともせずに迫る。こちらの冒険者部隊を取りまとめるのは、先日の王都攻防戦でその武勇を示したルイ・ニコラである。

 弓術を得意とする冒険者を10名ほど選抜し、近辺に置く。敵兵がある一定のところに達したときにあらかじめ示していた目印を狙撃させる。

 矢が突き立つとその衝撃で的の内部に仕込まれていた炎のクリスタルが炎を発して周囲に仕込まれていた爆薬に誘爆した。

「いまだ。続け!」

 取り回しが便利なように短めの槍を手にルイが出撃する。陣列を整えるより、6名の小隊を組ませ、互いに支援させた方が立ち回れる。

 弓兵が矢を放ち、敵兵がひるんだり、陣列に空いた穴に斬り込んで、被害を拡大してゆく。急な爆発に敵軍は混乱をきたし組織的な反撃ができないまま被害を拡大させていった。

 巨漢の傭兵が樽を投擲する。敵兵の密集している中にそれは放り込まれ、そこにファイアーボールが着弾すると、中の火薬に誘爆し敵陣はさらなる混乱に陥った。

 ルカを先頭に、大楯で敵兵を弾き飛ばして突貫してゆく。短いが激しい戦闘の末、敵将が討たれて敵兵は潰走していったのである。


 モモチ衆の伝令が砦の攻防の詳細を報告してきた。いくら兵の質に大きく開きがあるとはいえ、10倍近い敵兵を撃破するとかどんだけ?!

 今回は勇者パーティにナギを加えている。まあ、ある種の保険である。俺は決め手となる魔法を使うための下準備を整えていた。


「うっひょおおおおおおおお!」

 敵陣からなにやらキモイ叫びが上がった。

「ロリがいる、ロリがいるぞおおおおおお。皆のもの、あのロリ女神を保護するんだ!」

「「はっ! ダニオ様!」」

 敵将周辺でなんか盛り上がっている。というか、なんでメイド服着たちびっこが武器を持っているんだろう?

「うん、この変態ひねりつぶしたい。けど創造主には逆らえない。哀れわたし」

 うん、なんか複雑な関係みたいだな。

 どうやら敵将はナギめがけて進撃してきた。ドーガもすぐにその意図を読み取り、重歩兵で壁を作るとその後ろから魔法兵による遠隔攻撃を浴びせる。包囲しようとする動きには軽歩兵を展開し出鼻をくじく。といっても真ッ平らな地形での野戦である。味方700で相手は4000ほど。すぐに押され始める。

「あのロリっ子を俺の目の前に連れてくるのだ! ロリめけ者ども!」

 なんか痛い叫びを上げながら兵を鼓舞する。そしてドン引きする敵兵。

「と言うか保護すべきロリを戦場に引っ張り出すとは何事だ! 俺様ムカ着火インフェルノオオオオオオオオオオオゥ!!!」

 うん、狙撃したい。プチっとやってしまいたい。しかしまあ言葉が通じるならば手の打ちようがあるか。

 俺は合図のファイアボールを上げる。その音に気付いたドーガが虎の子の騎兵を運用し、撤退戦を始めた。最後尾にはあえて勇者パーティを置き、敵兵を薙ぎ払わせている。


 俺は目印となる旗の下で地面に手をついて待ち構える。掌から魔力を浸透させ、イメージ通りに展開させた。

「大地の精霊……うんたらかんたら……どーたらこーたら……はっ!」

 決して呪文を考えるのが面倒になったわけではない。

 キーとなる魔力が放たれ、地面が隆起する。その合間をすり抜けて味方の兵が撤収する。そして壁を乗り越えた敵軍が殺到し……いきなり地面が崩落した。

 俺がやったことは簡単と言えば簡単で、地面の表土だけを残して中身をくりぬき、その中身を使って塁壁を盛り上げる。その間を縫ってくる敵兵には射撃を浴びせ足止めする。そして壁を乗り越えた敵兵は……5メートルほど落下することになるのだった。


「降伏しなさい!」

 ナギが杖を手に呼びかける。

「ははっ! 囲炉裏の会、会員ナンバー666番ダニオ。降伏いたします!」

「ナギ、とりあえずあれは吹っ飛ばせ」

「わかった」

 ナギは杖に魔力を込めると全力でぶっ放した。ダニオ? とか言うやつはキラーンと光を残して虚空へと消えていった。たぶん時空を超えてどっかのダンジョンにでも転移したのであろうか?

 メイド服を着た女の子たちを見ると、さっきのダニオからパスが通っていた。とりあえず解呪する。どうもダニオとやらが近隣の獣人の集落を脅していたとかなんとか。彼女ら、ロゼを筆頭とする部隊はそのままうちの指揮下に入ったのである。

 ちなみに、コンビニの弁当を与えると誰一人異論を言うことなく降った。どんな食事事情だったのかは怖くて聞いていない。

 完全に余談であるが、666番はロリロリロリと読むそうである。ダニオ氏の口癖は膨らんだらBBA、やっぱり小学生は最高だぜ! などと怪しげな言動を繰り返しており、どうも同じ世界からの転移者だったようだ。

 これも知りたくなかった知識ではあるが、囲炉裏の会とはすなわち……ロリを囲む会のようである。頭いてー……。


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ダニオ&ロゼさんはゲストキャラです。


ダニオさんが夢想する楽しいお話はこちらです。http://ncode.syosetu.com/n4432dx/

進めッ! 武闘派ちびロリメイド! 私、迷宮守護者なんですけど、なんか攻略側になりました……皆、がんばろう! ただしダニオ、テメーはダメだ。

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