ひと時の休息と嵐の前の……
ラグラン本店に到着した。一度隊列を解散して各自休息をとることになっている。ノースウッド方面の報告を受け取るが、今のところ数度の攻勢は掛けられているがすべて撃退できているそうだ。
ドーガの下から指揮官の適性を持つものも出てきている。ナギを派遣して個の力を増強しておいた。そして若干のリスクはあるがノブカズ君とその嫁をこっちに合流させる。
「オーナー、魔国では大暴れされたそうで」
「失礼な。なるべく被害が少なくなるようにしたよ?」
「それで四天王がまた跡形もなく消し飛ばされたんですね、わかります」
「ぐむ。まあ、いいじゃない。王都には大きな被害でなかったし」
「ま、たしかに」
「タンバさんが言うには、この王位移譲と戴冠式は囮だそうで」
「また大胆な。ジョゼフさんの策ですか」
「内乱で王家の求心力が下がってるからね。新たな王が武勇を振るって侵略者を退ける。わかりやすいよね」
「リスク高すぎ。どんだけ追い詰められてるんですかねえ?」
「追いつめてる張本人がそんなこと言ったらいけないね」
「はえ?!」
「人類の最前線で戦う勇者と、それを支える健気な王女。しかも結婚済み。どーよ?」
「あ、あああああ、確かに。むしろ良く俺のとこに暗殺部隊来てないっすね?」
「あー、そこらへんは俺が取り込んじゃったから」
「モモチ衆の事っすか。えげつねえ」
「てへ?」
「いい大人がやっても可愛げの欠片もないっす」
「まあ、確かに」
さて、魔国で大ヒットしたキャンペーンだし、こっちでやらないって選択肢はないよね。魔国王都攻防戦のブロマイドの配布キャンペーンを始めた。
唐揚げとかとセットにすると利益率高くていいよね。あとは店頭で入れるドリンクも。
ということでポテトか唐揚げにドリンク一つをセットにして少し値引きする。もともと利益率が高い取り合わせなので少々の値引きをしても十分もうけはある。ヴァラキアの随行兵の皆さんにも一時金を与えた。この辺で散在してくれたらラッキーくらいの意味だったが……うん、見事にはまった。
彼らは王都防衛戦には参加していない。まあ、自国の防衛してたんだから当然ではある。ついでに言うと彼らは非常に奮戦した。数倍の魔物の軍勢を野戦において撃破したのだから半端ねえ。
その時の褒賞と言う形で一時金を与えると……各種商店や綺麗なおねーさんがいるお店などで使い始めた。王都以外では貨幣経済が浸透しきっていないこともあり、お金の使い方を全力で学んでいただきたいところである。
とりあえずコンビニジャンクフードの数々を味覚中枢に叩きこまれに来てくださった。ありがたやありがたや。ポテトフライ、揚げ鳥、焼き鳥、唐揚げにエスプレッソマシンのコーヒーや炭酸飲料。
一部種族にはミネラル水。あと、バンピールの皆さんにはネタかと言われそうだが、トマトジュースが大うけだった。別に血を吸う必要はないんだけど、本能的に濃い赤の飲み物がほしくなるそうだ。奥が深い。
ま、あれだ。これでヴァラキア支店は更に売り上げを伸ばすことであろう。今回の売れ筋商品のリストは現地に送り込んである。あとはブロマイドを増産か。おまけをつけるとついつい財布のひもが緩むのはどこも同じようである。
まあ、そんなこんなもあったけども、予定通り王国へ向け出立した。唐揚げの食べ過ぎで一部兵が鎧のひもを締められなくなり、強制ブートキャンプを行ったのは笑い話でいいよね?
そして国境を超えると……うん、すでになんか始まっている。不穏な気配がそこら中から漂っている。囮って言葉は苦し紛れで、単なる救援要請だったんじゃないかとか頭をよぎる。
「旦那さま、なんかヤバげじゃの」
「バルドもそう思う?」
「モモチ衆は放っているが、未帰還が出るかもしれない」
「なにそれこわい」
「まあ、仕方ない」
周囲を警戒しつつ王都までの道のりは結果として平穏なまま過ぎていった。
俗にいう嵐の前の静けさにしか思えなかったのは一行に共通する認識であったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます