王女誕生

 魔国方面は魔物の数も減り安定を見せた。本店にいる子供たちも呼び寄せ、家族だんらんをする。


「じーじ?」

 ハルカがキョトンと義父上を見上げている。イケメンナイスミドルのジェイド卿であったが、顔面が崩壊していた。まさに笑み崩れるといった表情である。

「ばーば?」

 ショウタが怖いもの知らずの一言を魔王陛下にかけている。さすがに2歳の赤ん坊に切れることはない……はずだ。

「うむうむ、かわいいのう。しかも素晴らしい素養を秘めておる。将来が楽しみじゃ。ラグラン大公国も安泰じゃのう」

 うん、こっちも笑み崩れてた。むぎゅっと行っているようだが、実は力加減は絶妙である。さすが育児経験者。

「ここに赤ちゃんいるの?」

「そうじゃ。そなたらの……叔父か叔母が入っておる」

「たのしみねー!」

「うん、そうじゃのう。うふふ」

 ちっさい子供が魔王陛下の横に座ってにっこり笑っている。うん、何この幸せの縮図。

「そうなの、もう出てくるの? わかったよー、ハルカまってるからねー」

「え? ハルカ、何を?」

「うん、赤ちゃん、ハルカに会いに出て来るって」

「はい?」

「ぬ? ぬおおおおおおお??」

「ヒルダ!?」

「産気づいたようじゃ、生まれる……」

「産婆と薬師を呼べーーーーーーーーい!!!」

「かしこまりましたあああああああああああああああああ!」

 カエデちゃんが手を振るとあちこちの物陰から忍者が出てきて散る。

「えーっと……何処にいたかとかは聞かない方がいいんだよね」

「あなた、考えたら負けですよ?」

「うん、わかってる」

 魔王陛下は出産のための部屋に入った。ジェイド卿がお姫様抱っこをしてベッドに横たえると、おでこにチュッとやってそのまま出てきた。イケメンがやると様になるものである。

 産婆や薬師、治癒魔導士らが病室に入り、ドアが閉まった瞬間、ジェイド卿が振動を始めた。いわゆる貧乏ゆすりである。さらにカタカタと震え出した。

「義父上、ちょいと落ち着きましょう」

「ふ、儂が動揺しているとでもいいいいいたたたたいいいいのかカカカカかk」

 スパーンとバルドがハリセンを振り下ろす。

「だいじょうぶ。お父様、まず落ち着くのじゃ」

「う、うむ。ありがとう」

 病室の扉の前ではうちの子たちがこぶしを握り締めてガンバレーとか言ってる。かわいい。

 カエデちゃんがそっと俺の横に寄り添ってくる。無言で手を握ってきた。

 万全と言える準備をしていても、ポーションや治癒魔導士が横についていても、出産とは命がけである、念のためタブレットを操作し、神の雫をいつでも確保できるようにしておく。ちなみに、在庫は5で増えていない。購入すれば減り、補充はされていないということだ。これは切り札になりうるので使いどころは考えないといけない。ただ、魔王陛下の武時には代えられない。だからいつでも用意できるようにしておいた。

 そして心配は杞憂に終わってくれた。子供たちが歓声を上げた直後、扉の向こうから産声が響き渡ったのである。

「ヒルダ、ヒルダアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 扉をたたき壊さんばかりの勢いで義父上が飛び込んでゆく。そのまま何かに蹴躓いたのか、どんがらがっシャーンと音が響いた。

「何をしておるかこの戯け! お主は儂とともにこの子を守らねばならんのだぞ、この粗忽もの!」

「す、すまぬ。だが、もう、嬉しくて。うれしくて……くくくっ!」

 中から微笑ましい会話が聞こえてくる。

 俺もバルドたちを促して中に入った。少し表情が硬い。

「大丈夫。俺がついてるし、ハルカもいる。君は一人じゃない」

「む、大丈夫なのじゃ。だがの……」

「仮にだ、勇者に匹敵する才をもって生まれたとしても、俺たちがいる。孤独にはさせない」

「そう、そうじゃな。ありがとう。旦那様と出会えてよかったのじゃ」

 バルドは恐る恐る赤ん坊をのぞき込んだ。女の子だったらしい。

「妹、かわいい。ほら、ハルカ。そなたの叔母上じゃ」

「新生児の瞬間からおばさんとかもうね」

 魔王陛下が苦笑いする。

「この子もバルド、そなたに匹敵する才を秘めておる。じゃが、能うならこの子には戦いを知らぬ生を送ってもらいたい」

「そう、じゃな。大魔王なぞ、儂が討ち取ってくれよう」

「その意気じゃ」


 俺は使い魔を城下に送った。かねてよりの計画を実施させるためだ。

「王女殿下誕生!」

「魔王陛下も無事!」

「と言うことで……特価キャンペーンです!」

「ブロマイド復刻キャンペーンと、ポテト、チキンが半額!

 今日から3日間限定!

 ブロマイドも枚数限定ですからお早めに!」


 コンビニのは人が殺到した。お祭りムードに盛り上がる王都でうちの売り上げは最高記録を叩きだしたのだった。

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