禁断の魔法

「婿殿、助力感謝する」

「陛下、いや義母上。無理はなさらないでください」

「うむ、すまぬの」

 魔王陛下は戦えない。王配も魔王を守る手勢を率いるのが精いっぱいだった。

 それゆえに籠城策となってしまった。自分の手持ち戦力は……いるじゃないか、最強のが!

 バルドには一時的に王城の兵の指揮権を与えてもらった。もともと義父上の下で仕官をやっていたのでそこは問題ない。カエデちゃんはモモチ忍軍を指揮してもらう。市民の防衛と、情報収集だ。


「こんな感じですかね?」

「バルド、よろしく頼む」

「城壁上はわたしが何とかします。あとは旦那様が撃って出るのかの?」

「まあ、そうなるね。ノースウッド防衛にラグランの兵力張り付けてるけど、あいつら数が頼りみたいだし、関門にも兵力を配置するように伝えた。ルークなら何とかするだろ」

「そうだの、あ奴なら何とかするじゃろ」

「内城は親衛隊がいる。城門が危なくなったらそっちに撤収を」

「わかったのじゃ。旦那様もご武運を」

「義弟殿。バルドは私も守る故、心おきなく戦われるがよい」

「アベル兄上。よろしくお願いします」

 アベルさん率いるコンビニ店員たち。一騎当千の精鋭である。うちのスタッフになるには最近武力も問われているらしい。なんか頭おかしい盗賊だの強盗だのがたまに入るらしい。それをがっつり撃退しているとかなんとか。まあ、売り上げとかすごいからねえ。

 とりあえずあとで魔王陛下に請求することにして、コンビニから物資を供出した。兵にはカロリーの友とミネラル水、およびやくそうとポーションである。また食料も出した。これで少しは城内も落ち着いてくれればいいんだが。


 さて、夜明けとともに猛獣の咆哮が轟いた。遠雷のようにかすかに聞こえてくる咆哮は、かすかな地響きとともに近づいてくる。億の魔獣を統べると自称していたが、あながちはったりでもないか? 地平線を黒く埋め尽くす群れが近づく。

 総攻撃を告げる咆哮が響き渡る。魔力弾を乱射して迎え撃つ。直撃した敵は砕け散るが、倒れる敵以上の数が迫りくる。動物の姿をしていても彼らは魔物だ。中には呪文を操る者もいる。

 城壁や城門に向け火球が飛ぶ。雹弾が叩きつけられる。純粋な魔力弾が無数に驟雨の如く降り注ぐ。城壁上からも矢が撃ち返され魔法も叩きつけられる。だが手数の桁が違う。反撃も効果が出ないわけではないが、まさに焼け石に水の状況であった。


 城壁上で待機してたナギは先日手に入れた神龍石を胸にかき抱く。石は光を放って彼女の胸に吸い込まれ、輝きが収まった後には白銀のドラゴンがそこにはいた。

 パクッと口を開く。高密度の魔力が集約され、白色に輝く。その輝きが一条の光となって放たれ、着弾地点を中心に半径30メートルほどの魔物の群れが焼き払われた。

 そのまま飛び上がり、上空からレーザーのようなブレスを打ち込んでゆく。昨日の戦いで俺が焼き払うよりもさらに効率よく魔物を倒してゆく。すさまじいな。

 そして、獣王のいると思われるあたりにブレスが降り注ぐ……派手に爆発が起き、クレーターの中心部には五体満足な獣王が立っていた。表情は引きつっているが。


「お前ら卑怯だぞ! そんなでっかいドラゴン呼び出すとか!」

「圧倒的多数でこっちを包囲してるやつに言われたくない!」

「ぐぬ、ああ言えばこう言う!」

「ふむ、しかし、神龍のブレスすら防ぐのか。厄介な」

「ふ、ふふん。貴様らの切り札もしのいだ。もはや勝ち目はないぞ!」

 大威張りでふんぞり返る。あー、いかん、なんかイラっと来た。


「ナギ、城に戻ってバルドの援護だ」

「んー、わかったよ。てんちょ、手加減してあげてね?」

「それは相手次第だなあ」


 ナギは飛び去って行った。クレーターの外周には魔物の群れが現れている。時間がない。

「ってことで、悪あがきをさせてもらう。行くぞ!」

 俺は剣を抜いて獣王に斬りかかった。獣王は巨大な剣を振るって反撃してくる。普通の人間ならば両手持ちでも持ち上がらないほどのサイズだ。それを俺の振るう片手剣に負けない速度で振り回す。パワーだけなら俺よりあるな。

「ふ、悪あがきはそこまでか?」

「なかなか厄介な」

「この獣王、武勇をもってのし上がった。貴様ごときが相手になるはずがないだろうが!」

「そうだな、近接戦闘じゃかなわない。だから搦手を使う」

 魔力を纏わせた斬撃や魔力弾は奴の結界に弾かれる。結界の範囲は……周囲1メートル弱か。頭上にも張られているし、地中からの攻撃も防いだ。要するに上下左右前後すべてに結界がある。

 ある意味すごい魔法である。このような長時間、これほど強固な結界を張り続けるのだ。そして、俺は数打ちの短剣を左手に握る。横殴りの斬撃を受け止める。魔力を身体強化に振り向け、剣も強化して何とか受け止める。そして左手の短剣を結界に向けて差し込んだ。

 長接近戦でも結界内で魔法は発動しなかった。そう、攻撃魔法は。だが、それ以外の魔法は発動したのである。

 そしていつぞや読んだ漫画からヒントを得た魔法。効果範囲を限定できないのと、そのあとの対応が難しいため棚上げになっていたある魔法を使うことにした。

 短剣は結界に触れている部分に魔力を流し、結界に突き刺した状態で固定した。そしてその短剣に向けて俺はある魔法を使う。

 そう、転移魔法だ。昔あったダンジョンRPGで、テレポートの罠と言うものがあった。ランダムにマップないのポイントに飛ばされるんだが、その時に起きる悲劇。いしのなかにいる。

 あれって不思議だったんだ。石の中にある分で、押しのけられた石はどうなるのか。ミクロな物理学で考えるならば、移送が重なった物質同士の原子核融合反応が起きるのではないか。そうなれば、あとは相対性理論の出番である。曰く、Eエナジー=MC^2(エムシースクエア)。

 今回は結界内の短剣にごく微量の空気を転送した。これにより核融合が起きる。瞬間的に数億度のもの熱を発し、その結界内部に核爆発が起きた。膨大と言うのもいっそ笑えるレベルのエネルギーが瞬時に燃え尽き、その直後に結界が砕け散る。

 後には短剣の柄だけが残されていた。獣王(笑)は断末魔一つ残すことなくこの世から消えたのである。

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