魔国へ行くとまたトラブルが
「……ヴラドがやられたか」
「ふん、奴は四天王の中でも一番の小者よ」
「だがな、あやつを討ち取ったのは勇者ではないぞ?」
「「な、なんだってーー!?」」
「討ち取ったのはコンビニオーナーと呼ばれるものじゃ。勇者もそうだがあ奴の力は未知数。皆、油断するな」
「ぐぬぬ」
さて、ポテトパニックは浮遊城から持ち出した種芋を販売することで何とか収まりを見せていた。実は裏でもう一つ重大な問題が進行していたのである。
うちの人気商品でポテトフライと人気を二分する商品、唐揚げである。唐揚げの衣は片栗粉を使うのだが、片栗粉の原料はイモのでんぷんである。すなわち、イモが不足すると片栗粉が不足するイコール唐揚げの原価に影響。そして欠品とか? 死ねる。
唐揚げまで出せなくなっていたら、うちの店、マジで冒険者の皆さんに攻め落とされていたんじゃないだろうか……。
閑話休題。四天王とやらについて調べている。大魔王の眷属で、その復活が近づくとその称号を名乗る者が出てくるって……自称かよ!?
ほかの三人ついては未だ情報がない。だが普通に考えると、真祖はリッチに匹敵する魔力を持つ。ついカッとなって滅ぼせるようなものではないと全方位からフルボッコの突込みを受けた。
カエデちゃん、君どっからオリハルコンのハリセンなんて調達したんですか?
とりあえず情報収集のため魔国へ赴くことにした。防衛の指揮はノブカズ君に丸投g……一任しておく。副官としてドーガ君を配置したので大丈夫だろう。というか、ドーガ君にはSVスーパーバイザーの肩書を付けた。場合によっては店長に指示を出し、権限を振るうことができる。ただし戦時下において。
防戦における参謀と実戦指揮を行わせる役割である。そもそも彼、王都の騎士学校を卒業しており、軍事教育も受けていた。対抗親衛隊の指揮官もやってるし、冒険者から一定の尊敬も受けている。適任だ。
え? 本来のSVの意味と違わねって? だから戦時下限定の指揮権にしたんだよねえ。特にノースウッドでは、1000単位で亜人とかが押し寄せてくる。集団戦の指揮ができる人材がいないと始まらないって事情もあった。
バルドとカエデちゃんと共にナギの背中に乗る。店舗の屋上に緊急用の魔方陣も設置した。これは使い捨てだが、ダンジョン脱出用の魔法を応用したもので、どこにいても戻ってくることができる。ただし消費魔力は距離に比例する欠点がある。この辺の燃費改善ができたら、物流に革命を起せそうなんだけどなあ。
南西に向け空を駆ける。この感覚は結構好きだ。しばらく行くと前方から違和感を感じた。多くの魔力がぶつかり合っている。
「てんちょ。なんか嫌な空気だ」
「旦那様。戦いの気配じゃ」
「信号弾を上げますね」
カエデちゃんが魔力を手に集め、事前に取り決められている信号弾を放った。
そのまま進むと、白亜の王城は無数の魔物に取り囲まれていた。
その中心には獅子の頭を持つ獣人が巨大な剣を振りかざし、咆哮を上げている。とりあえず狙撃してみたら……肩の上に載っていた使い魔らしき目玉、アーリマンか? に魔法障壁を張られた。
放った魔弾はそれなりの威力があったはずだが弾かれ、隣にいた魔物に当たり、砕け散らせた。そして、獣人の目線がまっすぐこちらを見る。見つかるわな、そりゃ。
「ナギ、俺はカチこむからバルドとカエデを場内に送り届けろ。頼んだ」
返答を待たずにナギの背中から飛び降りる。飛翔魔法を発動し一番激戦となっている正門の上に降り立つ。
「カイ〇ードアルザー……ぐわっ!?」
魔法が強制キャンセルさせられた。え? その呪文がまずいって? しょうがねえ。
「黄昏よr……ふぎゃああああああ」
天丼はやめろと。すいません。
「炎を統べし王、至高なる魔術師スルトよ、汝が火炎の一端をここに顕現させよう。
レーヴァテインよ、その輝きをもて我が敵を焼き払え!
紅蓮なる刃、今ここに振るわん……レッドロータス!」
あーレタスサンド食いてえとかあほな思考をよそに、俺の右手に顕現した深紅の棒上のなにかを振るう。すると赤い線が飛んでゆき城壁上からその下にいた魔物を薙ぎ払った。
ザンっと横薙ぎに振るわれた赤い魔力刃を受けた魔物は瞬時に焼き払われた。さらに地面に降り立ち城門に攻撃を加えていた一団が同様に焼き払われる。
これにより、敵の一団は形勢不利と見て攻撃を中断して下がり始めた。
「人間の魔術師よ、此度の手並みは見事。わが名は四天王の一人、臆の魔獣を統べし獣王レオポルドなり!」
「うっわ、なんか痛いのきたよ」
「だが残念だったな。我には絶対魔法防御の結界がある。汝の魔法は我には通じぬ。一昼夜与えよう。魔王を僭称する愚か者の身柄を差し出し降伏せよ。されば慈悲をもって苦しまずにひねりつぶしてくれって、うわああああああああああああああ!」
とりあえず試しにガトリングガンをイメージして高密度の魔力弾の乱射を浴びせてみた。確かに全部弾き返されている。ついでに、手に持っていた赤い棒っ切れも投げつけた。
高密度の炎の魔力が解放され、ちゅどーんときのこ雲っぽいのが上がる。すげー。
爆発が収まると、確かに五体満足な獣王(笑)が立っていた。というか、攻撃を受けたときのキョドリっぷりからして、あれ自前の能力じゃないな。使い魔かマジックアイテムか……。
ひとまずあれを打ち破る手立てが思いつかなかったので、敵が退くに任せることにした。
退却が終わったころ合いで、バルドが場内からかけてきて俺の首っ玉にしがみついた。うん、当たってる、当たってるって。
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