欠品解消するなんてすごーい!

「すまん、バルド。ご先祖様消し飛ばしてしまった」

「うん、良いのじゃ。大魔王の手先になるなど当家の恥じゃ!」

「お、おう」

「それに……私を守ろうとしてくれたのじゃろ?」

「当り前だよ。ついカッとなってやってしまった」

「うふふ、嬉しいぞ旦那様。愛を感じたのじゃ」

「当り前だぞ!」


 周囲のパーティメンバーは砂糖を吐きそうな顔をしていた。と言うか当てられたのかルークとリンは手を繋いでいる。指をからませていた。いわゆる恋人つなぎである。次に腹がでっかくなるのはこいつらだなと思いました。まる。ええい、見つめ合ってるんじゃねえ!


 さて、四天王の一人(笑)を撃破すると、フィールドは普通のボス部屋になっていた。すでに通過可能になっていたので、さらに歩を進める。

 さて、ついに最下層と思われる場所にたどり着いた。今までの部屋よりもかなり広い。そして、部屋いっぱいのスペースを使ってでっかいドラゴンがとぐろを巻いていた。


「えーっと、どうするかね、これ?」

「というかじゃ、このドラゴン実体がないようじゃ」

「ドラゴンゾンビはたまに出るけども、これって何? ドラゴンゴースト?」

「うーん、どうなんじゃろか?」

 とぐろを巻いている半透明のドラゴンはピクリとも動かず、目を閉じている。

 そこにナギが近づくと、いきなりぱっちりと目を開いた。お互い目線を合わせたまま動けなくなっている。そしてついにナギが口を開いた。

「半透明のドラゴンのフレンズなんだね、すごーい!」

 周囲の人間はもれなくこけた。ずるべしゃあっと。半透明のドラゴンは目を見開いてポカーンとしている。

「ナギよ。神龍の血を引く最後の一体よ。お前のことを待っていました」

 すげえ、あの奇襲を受けても平気な顔してやがる。

「えっと……しゃべれるんだね、すごーい!」

「まあ、よいです。わたしは神龍の力を受け渡すだけの器。受け取りなさい」

 うっわ、スルーしやがった。


 いきなり半透明のドラゴンは光を放ち、そのあとには小さなオーブが残されていた。

 鑑定をかけるとこう出た。

 神龍石 レアリティ:EX その資格を持つものが手にすれば、神の龍と言われたその力を顕現させられる。なんかすんごいのキター!?

 ナギはその神龍石を手に取る。するとナギを中心にすさまじい魔力が膨れ上がった。うん、俺ってまだ人間レベルだったんだ。ある意味すごーい。

 そこでふと思い出す。俺たちって種イモ探しに来たんだよなと。ナギが強化されたのはありがたい。大魔王の力がわからない以上、高い戦力は一人でも多いほうがいい。けどね、喫緊の案件として、種イモがないとまずいんだよ。俺たちには待っている人たちがいる。芋を待ちわびるお客様と、イモがなくてクレームに耐えているスタッフ。彼らを救う義務があるのだ!

 ナギを促して先に進む。すると大きな扉があった。ナギがぺたんと手を突くとギギギギギときしみながら扉が開くそとの先の部屋は宝物庫のようであった。


「ナギ、食料プラントはどこ?」

「えーっと……どこ、なんだろうね?」

「オーナー、箱にトラップの類はないみたいです」

「オッケー、開けてみて」

「わかりました!」


 ルークが箱を開いてゆく。そしてある箱には……種が入っていた。別の箱には袋詰めされた土である。もしや……鑑定すると、プラントを再建するための素材であった。土は高栄養化された腐葉土で、畑の土に混ぜることで、土壌を強化できる。種も同様で、魔力で強化されており、先ほどの土を混ぜた土壌であれば極めて短期間で収穫を可能とする、とあった。開墾してこれを使うことで食糧事情が改善できる?


「店長、これは!」

「なんだい……キターーーーーーーーーー!!!」

 箱には大量の種イモが入っていたのだ。それ以外の箱の中身も回収し、俺は転移魔法を唱えた。といってもダンジョンから脱出用で、入り口に魔方陣を刻んである。そこに飛ぶだけの代物である。だがまあ、パーティメンバー全員を抱えて飛ぶには超一流の力量が必要とされる。


 ナギの背中に飛び乗り帰路に就く。キャンプノースウッドに到着と同時に、防壁を作り変え、その内部に空き地を作った。

 氷の矢を大量に撃ち込み、地面をほじくり返すと同時に火球で氷の矢を融かし、水分を与える。分量がわからないのでスコップ一杯分くらいの高栄養化肥料を混ぜ、攪拌してゆく。そして水をかけて土壌に水分を与えた。

 後ろではナギを中心に種芋をカットしている。土の準備ができたので、みんなで協力してイモを植え付けた。

 そこから先はなんだこれという状態だった。つる草が伸び、生い茂り始める。ある程度伸びたところで根元を掘り起こしてみた……うん、大量のジャガイモが採れた。

 極めて短期間って1時間で収穫できるとかどんだけ?!

「ふむー、これはすごいですなあ」

「ん? ああトルネさんですか。一応古龍種の遺産ですね」

「あの未帰還率100%のダンジョンから生還したんですか。いやはや、すさまじい」

「んー、なんか途中で四天王とか名乗る変なのから襲撃を受けましたねえ」

「四天王、ですと?」

「ええ、始まりの真祖ヴラドと名乗っていました」

「それでどうなったんですかって、今ここで無事でいる以上、倒したんですね?」

「真祖ってことはアンデッド化魔法かけるじゃないですか?」

「そうですね」

「片っ端から解呪してやりました」

「は、はい?!」

「不死化の魔法、因果律、時間からの脱却を行うことで、攻撃を受けた事実を無かったことにする。そして時間が流れないので、常に魔法をかけたときの状態に巻き戻る。魔力とかも含めてね。だから無尽蔵の力を発揮する」

「真祖とはなんと恐ろしい……って、え、え?」

「魔力を集めて放ってくるんですが、その集中してる指先に魔力を解呪して散らしてやりました。その時、爪先が崩れたのですよ。だから、魔法の式を読み取ってその中核になっているポイントを解呪してやる。あとは魔法式が自壊するので……ね」

「恐ろしいことをさらっと言いますなあ、しかしあれだ。王国からイモを仕入れてきたんですが、無駄になりますかな?」

「ほう……これはいい! 全部買い取りましょう!」

「ありがとうございます」

 収穫されたものと、トルネさんが持ち込んだ材料は早急に加工され、調理を経て店頭にならんだ。

「お待たせしました野郎ども! 今日の気まぐれタイムセールはイモ全品だ! 腹がはちきれるまで食べていいぞ! 後、ビールも30%OFFだ! 嬉しいか? 嬉しい奴は声を上げろ!」

「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」

 キャンプノースウッドに大歓声が上がった。冒険者たちは笑顔でイモをぱくつく。この日キャンプノースウッド店は最高売り上げを記録した。

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