レベルアップとは?

 さて、ふと思いだしたことがある。タブレットから店舗のステータスを見ると、支店数、設置施設などのパラメータが出てきた。支店は、王国、魔国に2店舗、ラグランの城塞に簡易店舗を一つである。そして今回北の森に1店舗。

 施設は、単独で設置している自販機とポストのようだ。ほかにも何かないかと思ったが、??????と表示されている項目がある。

 何が言いたいかと言うと、未だレベルアップの余地があるものと思われる。現在はレベル5で、今知られている施設レベルとしては最高値のはずである。また支店もレベル3で、これも十分に高い、はずだ。

 レベルアップの条件はよくわからない。最初はおそらく売り上げだったと思われる。次もそうだ。レベル4の時は支店を出すことだったんじゃないかと。あと売り上げも関係していたか?

 レベル5の時は支店の数と資金だった。施設の設置ができるようになったのは最近だけど、レベルアップ時のような光はなかった。なんなんだろうか?


 ところで北の森支店の設定を見ていて噴き出した。なんだこれ?!


 メニューの中の施設が増えている。何だこの防衛施設って……?

 面白半分にメニューを開く。うん、何このロ浪漫。埋没式防壁……ボタン一つで建物の周囲に城壁が出てきます。

 屋上に設置可能な施設。バリスタ。コーヒー淹れるやつじゃなくて槍みたいなサイズの矢を飛ばす大型の弩。ほかカタパルトなどなど。なんだこれ、ラ〇シャン〇ンとか迎撃するのか?!

 カタパルトの弾丸も岩の他には爆弾とかあった。釘とか入れた炸裂弾とかないのかな……あったよおい。これフレンドリーファイアが怖いなあ。

 物見やぐらとかはわからんでもない。落とし穴もまあ、許容範囲だ。だが埋没式激竜槍が意味不明だ。説明文が最高にロックだった。大型ドラゴンの弱点である腹部を地中から狙えますっておい!?

 パイルバンカーとかドリル式とか選べるあたりがもうね。これ考えたやつ頭おかしい(誉め言葉


 まあ、あれだ。こういう施設があるってことはそう言うイベントが用意されてるって考えるべきなんだろうなあ。

 備えあれば患いなし、後悔役に立たず。現地へ移動してノブカズ君と相談しながら施設を設置する。現地のタブレットは管理権限が店長レベルだったので、項目にロックがかかっていた。


「えーっと……なんなんですかねこれ?」

「うん、まあ、巨大モンスターとか、小型モンスターの群れとかが襲ってくるから迎撃が必要なんだと思うよ?」

「いやそんなさらっと、とりあえずバリスタを屋上に設置ですよねえ」

「適応早いね。さすが勇者様(笑)」

「かっこわらいとか言ってる当たりオーナーも大概です。セリカ、落とし穴だけどこの辺でどうかな?」

「そうね……こことここ、後この辺でどうかしら?」

「なるほど!」

「うん、自分で押しつけといてなんだけど、適材適所ってやつだねえ」

「押し付けた自覚あったんですね」

「そりゃね。ただ君らでダメだったらバルドしかいないんだけど……」

「ああ、なるほど。それは厳しい」

 ノブカズ君の目線は俺の胸元に向いた。そこには俺の膝の上に座りぴったりとくっつく我が妻の姿が。ところでセリカ嬢もノブカズ君の膝の上なので、別におかしいところはない。ないったらない。

「まあ、あれだ。埋没式防壁の動作チェックをやろうか」

「ですね、ではぽちっとなー」

 ノブカズ君がカウンターの下のスイッチを押すと警報が鳴り響いた。建物周囲の地面がパカッと開き、がしょんがしょんと防壁がせりあがってくる。高さは3メートルとかなりの高さだ。ひとまず飛び上がって物見やぐらに立つ。そして司会の片隅に違和感を覚えた。

「ノブカズ君、防壁は出したままで。本店のドーガ君に援軍依頼だして」

「わかりました!」


 結果としてドンピシャのタイミングになっただけなのかは不明だけども、北の森店は包囲されていた。風切り音が聞こえたので魔法障壁を張る。カカカカンと複数の矢が弾かれて落ちた。

 周囲は亜人の群れに囲まれている。数は……わからないけど100とかじゃないことは確かだ。櫓の上からバルドが弓を引き、放つ。どんっと肉を打つ音がして断末魔の叫びが上がる。屋上に設置したバリスタにはカエデちゃんと配下の忍びが発射準備を整えていた。

 北の森店のスタッフは装備を整え、ノブカズ君の指揮に従い打って出る。俺は櫓の上から彼らに支援を飛ばす。まあ、単体はそれほど強くない。レベルいいところ50くらいで、一般兵位の強さだ。

 彼らは当たるを幸いに敵兵をなぎ倒す。一所にまとまって襲い来る敵を迎撃する。盾役の女戦士アイギスが目くらましの魔法を放つ。敵兵がひるんだすきに弓使いのヨイチが矢継ぎ早に敵兵を射抜く。魔法使いマジクが風の刃を周囲に向けて放ち敵兵の首がポーンと飛ぶ。神官のクロードが死の魔法を投げ、黒い霧に包まれた亜人兵が苦悶の表情を浮かべその場に倒れる。

 うん、なかなかにえぐい。しかしだ。悲しいけどここ戦場なんだよな。

 カエデちゃんとはその配下の支援もあって何とか多数の兵力を相手に持ちこたえていた。すでに3時間誓うが経過している。ようやくドーガ君率いる援軍が到着し、敵兵は見切りをつけて退却に転じた。


「オープン前準備でお客様がいなくてよかった」

「オーナー、そこですか!?」

「それ以外に何が?」

「エエ、ソウデスネー」

 こうして北の森店の設備チェックは完了したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る