ラグラン大公国とコンビニ

 さて、なんか大公になったとか、大魔王討伐がとかいろいろとタスクは増えたが、自分のやるべきことは一つ。そう、コンビニの経営である。

 ラグランから北へは魔物の領域が広がっている。地域ごとのボスを倒せばそこに集う魔物は四散する……らしい。ならば、その地に冒険者たちを送り込み、徐々に領域を解放する。そのための後方支援を担うのだ。

 もちろん、自分が先陣を切れとの声も多い。それも一つの手なのだろう。ただ、そうやって前線に出ればコンビニの運営に割く時間は減る。例えば、最前線に支店を出すことによる補給線の短縮は自分にしかできない。どっちがいいのかという問題ではあるが、いろいろと言われているが自分の本職は経営者である。そこを外れて何かがなせるとは思わないのが正直なところだ。


「旦那様、理屈こねるのがうまくなったのじゃ」

「要するに、子供の顔が見れなくなるのが嫌なんですよね」

 嫁さん二人の突込みが入る。あれおかしいな、何だこの説得力。

 自室のソファに座り、俺の膝の上には子供たちがすやすやと寝息を立てている。この子を守るためなら大魔王すら滅ぼす覚悟は……ある。


「この子たちを守るためならなんだってやるさ」

「頼もしいのじゃ」

「信じております。あなた」

 両サイドから嫁さんたちがくっついてくる。リア充っていいね。


 さて、ラグランには今まで本店しかなかった。関門の建物内に簡易出張所を出す。品数を絞って管理面の負担を減らした。ここはいざというときに籠城する可能性がある。日持ちのする食料品と飲み物を在庫しておいた。

 ギルド経由で求人を出す。最前線に配置する店舗には魔物からの襲撃も予想される。以前出した広告の一文を削ることとなった。曰く、武力不問。

 応募者の面接をしつつ日々を過ごす。ギルドとの提携を強化する。そして嫁さんたちの助言に従い、周辺の集落を支配下に入れる活動を行った。と言っても武力制圧ではない。そんなことをすれば反乱を招く。何より顧客が減る。

 今回行ったのは、集落との売買契約である。素材や食材を卸してもらう代わりにコンビニの買い物を優待する。というか村長とかにポイントカードを配布しただけである。

 これがあれば、安く買い物ができることで村長の権威は上がる。うちも平和的に集落を支配下における。お互いに利のある関係を結ぶことができた……はず?

 ほか、本店スタッフに肩書を与えた。王国や魔国にも爵位があり、形式上ではあるが大公国となっているので、王国や魔国の店長には辺境伯の肩書を与えた。というか、一人は王子だよな。公爵にしとくか? と思ったが、本人がそれでいいと言ってきたので、とりあえず保留。

 本店店長は俺だが、代理職にラズ君を指名。彼には子爵になってもらった。ルークも男爵にする。リンさんとレナさんはこの時点で彼らと事実婚状態だったので、正式に婚姻関係とさせた。レナさんは子爵夫人の肩書をもらい、非常に幸せそうだった。

 ドーガ君は正式に騎士に任命。領軍を率いてもらうことにした。ルークには同時に親衛隊長の肩書を与える。何やかやで彼らは未だレベル上限に達しておらず、非常に有望な戦士であることが分かった。

 一般人はレベル10くらいで止まることが多い。兵士になれるくらいだと大体50くらいまで上がる。上位の冒険者が75くらい。天才と呼ばれるものが100である。そこから先のレベルに達すると、人外呼ばわりである。そんな基準で、ドーガ君がレベル92、ルークは91とうまくすれば100を超えてくるかもしれない。

 こうなると、各国は相応の待遇を提示してくる。一代限りの爵位などだ。そこらへん先手を打った形でもある。さすがに引き抜かれると困るし。

 ちなみにバルドはレベル130に達した。地味にカエデちゃんはレベル97とうちのスタッフより強かったりする。タンバ殿が娘に追い抜かれたとがっくりしていたのは内緒である。

 戦力としては、ドーガ率いるブートキャンプを耐え抜いた精鋭たち。王国と魔国から集ったというか、洗脳した連中だ。地獄のキャンプを耐え抜いた彼らの平均レベルは80に達する。並の軍ならば部隊長クラスである。

 ルーク率いる冒険者部隊も、レベル80以上を選抜した。一代限りの騎士に任命している。あとは手柄次第と。譜代の家柄何それおいしいの? という現状もあって、非常に士気が高い。

 それ以外に、ここに店を構えてから誼を結んだリザードマンの皆さんやゴブリンの皆さんなどが、日常業務や治安維持を担ってくれる。彼らに支払う給与は、結局コンビニでいろいろと買ってくれるので、回収はできている……のか?

 まあ、売り上げは上がっているので良しとしよう。

 まあ、あれだ、長々と語ったが、一言で言うと……仕事倍増してめんどくさい、これに尽きるのだ。

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