コンビニハヤシの日常 周辺住民事情

 最近は平和な日々が続いている。1年ちょっと前の衝突以来、両国は講和を守り、ここラグランの地は平穏を謳歌している。浮遊城とか降って来たけどな。

 そういえば、勇者召喚ってどうなったんだろう? 

「バルド、なんかさ、俺がこっち来たときに勇者召喚がどうこうって話あったじゃない?」

「ああ、そういえば……忘れてたのう」

「あれって王国の話だっけ?」

「年若く、まだ未熟ゆえに修行に出したとかなんとか。そういえば1年以上たっておるの」

「ふーむ、とりあえず探り入れておこうか」

 とりあえずモモチ衆の皆さんに調査を依頼した。


 本店はレベル5のまま変わっていない。支店は4店舗すべてレベル3に上がっている。今日は常連のお客様と話しながら情勢についての情報を探っていた。これがなかなかに馬鹿にできない。ほか、うちと契約を結んでいる商人キャラバンからの情報もある。

 契約した商人に会員証発行のための端末を貸与しているが、これにメール機能がついた。そこからリアルタイムで情報が上がってくるのである。

 ラグラン周辺には様々な種族の集落がある。先日のリザードマンや、彫金師のゴブリンたちの集落、コボルドなど。浮遊城のほとりの湖にはサハギンが最近住み着いたらしい。彼らは魚を訪れる冒険者に提供し、資金を得てそこを訪れるキャラバンより物資を買い付け始めたそうだ。ところで、サハギンたちにもみ・ね・ら・るが大人気らしい。仕入れを増やそう。

 コボルド族はほとんど犬の獣人だ。犬耳と尻尾だけで後は人間っていう種族もいる。人間ベースの種族はまとめて獣人族と言うらしい。コボルドに言わせると、あんなまじりものと一緒にするな、と言うことらしい。ただまあ、そこに触れなければ彼らは友好的である。

 ところで、コボルド族と同じような感じで、直立した豚と言うか猪みたいな連中、要するにオークがいる。彼らは明確な知性を持たないらしい。言葉も通じないし問答無用で襲ってくる。よって、魔物の類として分類されているようだ。ちなみに、コボルドの皆さんはオークを嫌悪している。やはり知性の有無があるが、同じように扱われることがまれによくあるとか。

 さて、オークに一度遭遇したことがあるが、いつぞやのエドのように明確な意思と言うか知性はなく、本能に従って襲い掛かってきた。会話を試みるが無駄で、魔力を解放したら逃げ散った。そういえばあとでザル君が残念そうに教えてくれた。オークって旨いんですよって。

 奴らは繁殖力が旺盛で雑食らしい。それこそ草木や動物を問わず、食えそうなものはなんでも食べる。逆に増えすぎると環境破壊が起きるらしい。なんて迷惑な連中だ。ギルドでも常時討伐以来が出ているそうである。

 ザル君の情報に従って、オーク肉を仕入れてみた。なにこれ、イベ〇コ? 細かい脂がのってとてもうまそうである。ちょっと厚めに切って、フライパンに脂身だけを落とす。ニンニクっぽい香味野菜を溶けた油に絡ませ、野菜がキツネ色になるころ合いで肉を投下。両面を少し焼き色がつくまで焼く。あとは火力を落とし、蓋をして中まで火が通るようにじっくりと焼き上げる。仕上げにブランデーっぽい酒をたらし、フランベしたら完成だ。

 肉を焼いた後に残る脂にケチャップなどを投入し、塩コショウを加えて煮詰め、即席グレービーソースを作りソテーにかける。

 試作品厨房の前にはうちのスタッフが鈴なりである。一口大にナイフで切り分け、順番に呼ぶ。

「うっまああああああああああああああああああああああああいぞおおおおおおおおおおおおお!!」

 どっかの調理人の皇のような勢いで叫んでいる。追加で焼いて店頭で試食してもらったら非常に好評であった。

 うん、ギルド経由でオーク肉の仕入れをすることにした。ここでポイントは直接ではなくギルド経由にすることだ。若干コストはかさむが、ギルドとの協力体制は維持したい。

 駆け出しに近い冒険者でもオークは単体ではそれほど強くないから仕事をこなせる。ギルドは所属する冒険者の底上げになり、うちは新しい商品の仕入れができる。

 こうして、新商品、オークソテーはうちの名物になったのである。


 そういえば、トルネさんはこのたびの政変で准男爵になったらしい。タルーンの姓を正式に名乗っている。准なので、一代限りの爵位ではあるが、功績をあげれば代々の爵位になれるとかなんとか。

 ちなみに、タルーンというは初代の名前らしい。伝説の勇者に付き従った英雄の一人とかスゲー燃える。ほかにも7人の英雄がいたそうだが、今回の騒ぎでとり潰しになった家もあるとか。南無。


 そうこうしているうちに、タンバさんが戻ってきた。勇者についての情報が入ったようである。

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