1年後

 子供が生まれて1年たった。魔族の子供と言うのは成長が早いらしい。半年で立ち上がり、1歳になるころ合いには片言ながら言葉を発し、よちよちで走り回る。そしてこの世界では、レベル上限があり、それが事実上の才能となる。一般人はレベル10くらいで頭打ちになる。それ以上に行ける限られたものが冒険者派兵士になり、さらに一握りの強者となる。

 この才能、すなわちレベル上限は、両親の資質を受け継ぐ。と言うことは、俺の娘、ハルカは世界でも屈指の才能を持つことが予想される。親バカではなく、両親のレベルが100オーバーなのである。この子のレベル上限が100を下回ることはまず考えられないとされた。

 さて、ハルカのすぐ後に生まれた子供がいる。カエデちゃんとの息子ショウタである。そしてこの子はもはや突然変異レベルであった。1歳とは思えないほどの身体能力と知能である。


「あねうえ、それはだめじゃ!」

「ぶー、ショウタは弟のくせになまいきー」

 兄妹げんかと言っても幼児であれば微笑ましいものになるはずである。だがハルカが手をかざすと魔力の弾丸が飛び、ショウタは懐からというかどこにしまっていたのかは考えたら負けである、手裏剣を投げて迎撃する。悟〇とトラ〇クスの戦いを見ているようだ。

「こら、ハルカ!」

「やめるのです、ショウタ!」

 互いの母親がお互いの子供の首根っこを捕まえてぶら下げる。そして喧嘩の原因になっていたお菓子を真っ二つにして、互いの口に突っ込んだ。

「「ぱぱのおやつおいちー!」」

 にぱーっと笑う。その笑顔にコンビニ店内のすべての者が癒されていた。


「教官殿! 本日の訓練、完了いたしました。さー!」

「ご苦労、ドーガ軍曹。休め」

「さー、いえっさー!」


 コンビニブートキャンプの需要は多く、ボンクラの鍛えなおしとか、新兵訓練とかの依頼が舞い込んできていた。

 先日のブートキャンプで、一人、本店勤務を希望していた少年、ドーガがいた。俺に挑んできて指先一つでダウンさせられた彼である。

 一つ思い付きで、俺は彼を軍曹に任命した。これからも当地には新兵候補が来る。彼らを君のように生まれ変わらせてやってほしい。ボンクラのゴミ虫から、コンビニ店員と言う名のソルジャーへと。

 この一言を告げると、ドーガはその巨体を揺らし号泣した。今まで鈍重な印象を受ける彼を誰も評価しなかった。だが、教官への指名という、ある意味最高の評価を受けるにあたり、彼の中で何かが変わった。ドーガ君は、ドーガ軍曹へと変わったのだ。

 彼は目覚ましい働きを見せ、ブートキャンプ志願者も自発、強制を問わず多くいた。結構なボッタクリ価格を設定したがそれでも予約は1年先まで埋まっている。

 まあ、あれだ。王国軍にもいろいろとしがらみとかがあり、訓練するにもいろいろとあるらしい。それって腐敗って言わないか? と思わなくもないが、まあキニシナイ。


 そうそう、ライル王子は王都の支店で店長をしている。堅実な運営で着実に売り上げを伸ばしている。魔国産の商品を買い付けて販売することで大きな利益を出していた。魔国の隠れ里、セキの刀剣が目玉商品らしい。

 ローエンドはジョージ君が支店を開いた。こちらはどちらかと言うとラグランに近いため、野営道具などの便利グッズが売れている。売れ筋の商品を並べるだけでなく、それに関連した商品を仕入れ、提案する売り場を作ることで追加購入を促す事に成功し、こちらも売り上げを伸ばしていた。

 魔国と合わせて5つの店舗を持っているのは、わずか1年としては異常な成長である。


 商売繁盛と言えば、トルネさんは先日のキャラバンに参加した独立の行商人たちをまとめ、商会を立ち上げた。設立時の資金に応じて利益を分配するシステムを作り上げた。俺が株式について話した一月後の事だ。

 例えば、一万ゴールドを一口として証券を発行し、その枚数に応じて商会の利益を配分する。一口ならば100ゴールドといった風にだ。実際に商会に参加する商人もいたし、資金を出資する者もあらわれた。トルネさんを中心として、彼の設立したタルーン商会はその資金を元手に商売を行いその儲けを出資者に還元する。魔国に行商に行き、生還し、魔王と面識をもってさらに多くの商品を持ち込んだ。これがトルネさんの名声に変わった。

 魔王の保護がある商売ならば間違いなく利益を生む。その認識が広まると、投資が相次いだのである。さて、多くの人が集まれば当然たちが悪いものも混じる。トルネさんが目を付けたのはカエデちゃんの持つ諜報網である。

 カエデちゃんの父上、タンバ・モモチに資金提供を約して、投資を持ち掛けてくる人物の身辺調査を依頼したのである。と言うか、タルーン商会の最初の投資先がモモチ衆であった。

 商人にとって最も大事なものは、資金ではなく情報であるとのご先祖様の教えを守った結果である。

 調査結果はいろいろと面白いものをもたらした。役人と癒着した商人の悪行がポコポコと出てきたのである。トルネさんはその情報をライル王子経由で王宮に持ち込んだ。無論自身の見返りは無しで結構と宣言して。

 王宮がひっくり返るほどの騒ぎが起きた。どのくらいかと言うと、宰相が失脚し、軍務卿であったジョゼフさんが予想より数年前倒しで宰相の座に就いたほどである。

 地方貴族も芋づる式に不正が発覚し、当主と跡継ぎがまとめて追放といった家も出た。さて、こうなるとスポットライトが当たるのは、長男のスペアであった弟たちである。そして、昨今のブームでブートキャンプ参加者が多かった。

 結果としてだが、コンビニハヤシは王国を事実上作り変えてしまったのである。なんか、宰相の地位はいらないか? との問い合わせがあったが謝絶しておいた。激務で子供の顔が見れないとか無理。

 そんなこんながあった1年でした。ちゃんちゃん?

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