ヴァラキアへ 支店開店の準備をしましょう
さて、入り口を守っていたゴーレムを排除したことにより浮遊城の中に入れるようになったらしい。俺の武勇伝はすでに王国と魔国に伝わり、なんかこの辺一帯は俺が領主というか、支配下になってるとみなされてるとかなんとか? 王様になる気はないんだけどね。だってめんどくさいし。
「気合を込めるとファイアーボールを発射できる画期的な新商品! はじゃの剣はこちら! 発売記念特価3500ゴールドです!」
「どうやって使うんだ?」
「こうです」
ルークが剣先を藁人形に向けてからハアッ! っと気合を入れると剣の柄に埋め込まれた宝石から魔力が供給され、刀身に刻まれた魔法回路を通って火炎弾が放たれる。文章にすると長いが、ほんの一瞬のことで、気合を入れた次の瞬間には藁人形は燃え上がっている。
それを見た剣士の皆さんが群がり、初回ロット100本は即完売である。
そういえばなんかビヤ樽みたいな体形のヒゲ親父がこれはいいものだとかつぶやいていた。背中に背負った巨大な算盤、あれってもしかして武器なのか?
「ほっほっほ、武器商人たるものあらゆる武器を使いこなせて初めて一人前なのですよ」
だそうだ。まあ、うちコンビニだし。だがまあ、なんかカンだがこのおっさんできると思ったので、名刺交換をしておいた。というか、名刺を差し出して自己紹介したら、これはイイとテンション爆上げで、商談が進んだ。武器の仕入れ先として、うちのコンビニを紹介してもらうことと引き換えに、仕入れ値を少し下げる。あとはおっさんの商才しだいだ。
浮遊城様さまで、うちは空前絶後のおおおおおおお売り上げを更新していた。なんか内部から財宝が出ているらしく、景気のいい買い物が増えている。と言うかあれってナギの所有物じゃ? まあ当人(竜?)が気にしていないならいいんだろう。
ナギはなんかわんこサイズのドラゴンとして店先で丸くなっている。たまにお客様に愛想を振りまいており、店が混むと幼女モードでレジを打つ。もともとうちでバイトしてたので、商品の違いに戸惑っていたが1日もしないうちに慣れていた。やくそうを馬鹿にしてはいかん。うちの主力商品なのである。
そして以前から話の合った、ヴァラキアでの支店を出す話で、俺とバルドはヴァラキアまで出張することになった。アベルさんは先に現地に入ることになった。よく働いてくれていたし、あちらでも頑張ってほしい。
「にゅふふふふふふ、にゃはははははははは、うふふふうふふふ、旦那様と旅行……きゃー!」
バルドが少し壊れ気味だ。あのちょっと緩んだ顔もかわいいな。とつぶやいたらナギがドン引きしていた。ないわーとか言うな。
留守中の店長代理にはラズ君を指名した。カエデちゃんの部下の一人を連絡役にする。カエデちゃんもついてきてもらうことにした。みんな忘れがちだけど、この人俺の嫁だし。バルドも認めている。
後、ナギもいる。カエデちゃんの抱き枕として非常に有能である。
「ちょ、店長その扱いひどくね?」
「あらあら、ナギちゃん。パパって呼ばないとだめよ?」
「ははははははははははい、お母様!」
教育という名の洗脳がされている気がする。まあいいか。バルド可愛いし。
馬車の御者席に座ると、隣にぴったりくっついてくる。男装の麗人であったが、今はなんか可愛らしい服を着ている。うん、いい。
カエデちゃんはメイド服を好んで着ているようだ。黒髪ポニテは人類の粋である。
「主殿……グッとクル?」
俺は無言で親指を立てて笑顔を向けた。頬を赤らめるカエデちゃんがかわいい。
そうしていると反対側からバルドが頬っぺたを膨らませながら俺の首を90度向きを変えさせる。これ普通の人にやっちゃだめよ? 折れるから。
そうそう、馬はヴァラキアから送られてきたスレイプニルのエドという。というか名乗った。だが他の皆は何を言っているか理解できないようだ。その時ふと思い出す。言語能力のスキルである。
そうして俺はバルドの幼いころのエピソードをエドから聞き出すのだった。
「ぶひひひーん(バルドお嬢様は幼いころから活発で)」
「へえ、どんな感じで?」
「ぶるるるるー(剣術に才を示され、兄上たちを10歳で打ち破りました。ほかにも……)」
なんか故郷ではすぐにまともに戦える相手すらいなくなり、単独で魔王軍に入隊そこで武名を上げる。ただ、魔王の娘である事で色眼鏡で見られることに耐えられず、暇をもらって各地を放浪していた。そこでコンビニにたどり着いたと。本人が言うにはいきなり目の前にいきなり現れたらしいけども。
俺とエドの会話中、周囲が静かだと思ったらバルドは俺に体を預けたまますやすやと眠っていた。後ろの荷台ではカエデちゃんがナギに抱き着いてこれもすやすやと眠っている。最近忙しかったからなあ、そう思うと俺もあくびを一つ。エドの嘶きをお供に俺たちはヴァラキアへ向け進んでいった。
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