事情聴取と運命の人

 さて、ナギを引き連れて店に戻る。確か女子高生だったはずだが、今のこいつは小学生だ。それも低学年。思わず頭をなでてしまう。

「うきゃあ、店長、いきなり何するんですか!?」

「ああ、すまん、ついつい」

「ぶー、せくはらですー!」

「お前、鏡見た?」

「ほえ?」

「どっからどう見ても年齢一桁だぞ?」

「にゃ、にゃんですと!?」

「それに噛み過ぎ」

「む、むう」

 とりあえずおお手洗いに入ってゆき、自分の現状を把握したようだ。何か悲鳴が聞こえてきたが気にしないことにした。


「んで、何があったんだ?」

「えっとですね、地震があったんですよ。私あの日風邪で寝込んでて、んで壁が倒れてきてぷちっと」

「あー、そうなのか……すまん、つらいこと思い出させて」

「いえいえ、、あんまトラウマとかではないんですよね。それで、真っ白な靄のかかった場所にいて、どこからともなく声が聞こえるんです。運命に導かれしものよって」

「それなんてドラ〇エ4!?」

「茶化さないでください。で、なんか気づいたらドラゴンになってました」

「おい、そこさらっというレベルの話じゃないよね?」

「私からするともうこれ以上どうしろとって話ですよ。んで、はるか上空の浮遊城に封印されてたのです。なんか靄の中で聞こえてきた声によると、目覚めの時が来れば汝は地に降り立つだろう。そこで運命の導きに従い汝が使命を果たせって」

「なんだそりゃ。ナギ、お前さんRPGとか好きだっけ?」

「大好物です」

「ふむ、まあいいや。それは置いといてだな。その運命って俺になるのかね?」

「えー、店長が運命の人? 願い下げです」

「おれも□リコンじゃないしなあ」

「むー、お子ちゃま扱いすんなー!」

「と言ってもな、実際ガキんちょだし」

 盛大に文句を垂れるが、俺にはどうしようもない。とりあえず流石にペットはまずいので、バルドと相談の上養子とした。

「うふふ、ナギちゃん。ママって呼んでいいのよ」

「あー、うん、これあかんやつや……けど背に腹は代えられない!」

「人間あきらめが肝心だぞ?」

「ドラゴンと真っ向から殴り合える人を人間っていうんですか?」

「一応な」

「人外めー」

「さあ、早くママって呼んで」

「ままー」

 すっごい棒読みであるがバルドにはどうでもよかったようだ。慈母のような笑みを浮かべナギを抱きしめる。そして耳元で何かをささやいていた。するとナギの動きがギシッと止まり。引きつった笑みを浮かべながら、ママ大好きーと呼びかけていた。うん、バルド可愛い。

「店長、これを可愛いって言えるのはすごいです……」


 なんだか外が騒がしい。ドカーンとかちゅドーンとか爆発音がする。

「店長、大変です!」

 ラズ君が駆け込んでくる。

「どうしたんだい?」

「浮遊城からゴーレムが現れて暴れてます」

 なんですと? とりあえず事情を聴くことにした。

「おいナギ、どういうことだ?」

「あ、ああ……たぶんだけど、中に入ろうとしなかった?」

「しました」

「防衛システムと迎撃システムだねえ。レベル120相当だけど、なんとななりそう?」

「ナ、ナンダッテー!?」

 そのセリフを聞いた瞬間カエデちゃんが飛び出していった。どうも避難を呼びかけるようだ。

「ナギ、何とかしろ」

「はーい」

 軽いな。けどまあ、下手するとこいつ俺よりレベル上だし。何とかできんだろ。


「近寄ったらあかんでー! コンビニに避難するんやー!」

 ラズ君の風魔法でドローンにぶら下がったビビアンさんの生首が上空から避難を呼びかける。シュールすぎる。

 キースさんは大楯を構え、飛んでくるがれきを防いでいる。軽装の女魔法使いがかばわれて頬を赤く染めている。そして彼の背中にコンビニハヤシの文字を見つけ、はてなマークを頭上に浮かべていた。

 身振りで避難するように指示する。そして新たな爆発音とともに石つぶてというには大き目のかけらが飛んでくる。キースさんの右手がひらめく。長剣を振るい大きめのかけらを弾き飛ばし、盾を構えて巨大な岩石を受け止めた。彼女の目はすでにハートマークだ。そして流れ弾がが金と音を立ててキースさんの頭に直撃する。ヘルメットが飛ばされる。そしてその中は、空っぽだった。

 彼女は声にならない悲鳴を上げて一目散にコンビニに駆け込む。ああ、哀れ。


「とりあえず、いきまーす。ドラ〇ラム!」

 人の姿はまるで仮初であったかのように、魔力が奔流のようにあふれ出る。竜の姿を取り戻したナギがかぱっと口を開く。そして咆哮を上げ始め……ある一定のところで、それは音を超えた。

 超音波の振動がゴーレムを粉砕していく。すでに可聴域を超えた音は体感的には無音である。その無音の光景でありながらゴーレムがボロボロと粉砕されていく光景は現実味が一切なかった。

 これまで冒険者たちを鎧袖一触にしていた巨大なゴーレムが音もなく粉砕される光景は神話か悪夢か、あまりの有様に言葉もない。

 ゴーレムを粉砕したナギは俺のもとに拠ってきて撫でてと言わんばかりに鼻先を近づける。バルドもなんか嬉しそうに俺の横にぴったりとくっついている。とりあえず鼻先を撫でてみた。すると気持ちよさそうな唸り声を上げる。そして何を血迷ったか、ごろんとひっくり返って腹を見せてきた。やりすぎだ!?

 いっそもう開き直って腹を撫でまわす。無音の悲鳴というか、何だろう、叫びたいのに叫べない、そんな雰囲気が場を支配する。魔王の婿とかだいまどうとかいろいろと呼ばれているのは知っている。そしてまた新たな名前が付けられるのを俺はうんざりしつつ諦めるのだった。

 バルドさんがすごくイイ笑顔でナギのお腹を撫でまわしていた。トカゲとか爬虫類的な感じで鱗があるのかと思っていたら、ふわふわの毛が生えていてもふもふである。大型犬のような感じだった。

 養子とか言いながら結局ペット枠じゃないかと俺は誰にともなく突っ込みを入れていた。

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