戦場のコンビニ
浮遊城が落ちてきた。まず衛兵が周囲を包囲して様子見を行う。また腕利きの冒険者が近づいて偵察を行っていた。バルドさんを始めルークとラズ君も参加している。
そしていま、コンビニハヤシは戦場だった。
「ポーション、一番いいやつをくれ!」
「はい、マキシポーションです。1500ゴールドです。毎度ありがとうございます!」
「すまん、はがねの剣はあるか?」
「マゴロク印の剣が入ってますよ!」
「マゴロクだと!? 言い値を払おう!」
「すまん、まだそれ在庫あるか?」
「はい、一振り1800ゴールドです」
「買った!」
「リンさん。レジ2開けてそっちで武器の販売お願い」
「わかりました店長」
キースさんがビビアンさんの頭を持ってきた。
「てんちょー、ポテトの素が切れそうや!」
「キースさん、発注多めでよろしく。普段10だけど、今回は15で」
キースさんはうなずいてタブレットを操作する。金属製の指先でつついてもヒビ一つはいらないタブレットってどんだけと思ったが気にしないことにした。考えたら負けだ。
キースさんがタブレットをタップするとバックヤードからドスンって音がした。段ボールを抱えて出てきて、それをビビアンさんに渡している。段ボールの上の生首は気にしてはいけない。
「ただいまからポテト、揚げたて入りますやでー! お先に注文いただければアツアツのところいけますよー!」
「それだ、一つくれ!」
「こっちにもだ!」
「かしこまりましたー!」
「冷たいドリンクはいかがですか?」
「しゅわっとしたのをくれ!」
「おれもだ!」
空前の忙しさである。そしてなんか変なことをしているおっさんがいた。
「エンチャントはいかがかな?」
バラケルス氏が武器に魔法付与をしていた。確かに腕は確かなようだ。たとえば硬化魔法をかけることで武器の耐久が減りにくくなる。ほかにも聖水を使うことで聖属性のエンチャントができ、物理攻撃が通りにくいゴースト系にも効果がある。そういえばせいすいと霧吹きが売れていた。
「さて、誰に断ってここで商売しているんですかねえ?」
とりあえず魔力を駄々漏れにして話しかける。
「ふが!?」
「一言あってしかるべきじゃないですか?」
「むむ、すまぬ」
「売り上げの4割でいいですよ?」
「それは暴利じゃろう!?」
「エンチャント用の聖水を2割引き、霧吹きを貸し出しましょう」
「ぐぬぬ……」
「こうやるんですよ」
それまでは聖水を人ビンまるごと流してかけていた。だが霧吹きを使って吹き付けると、同じ効果が出て使用量は格段に減る。
「と言おうかお主、何でもできるんじゃな?」
「マジックマスタリー持ちなのでね」
「それ勇者でもめったにでないスキルじゃぞ?!」
「へえ、そうなんですか」
「軽いのう」
エンチャントも大盛況だった。とりあえず2割引きでマジックポーションを売りつけてやる。おっさんは喜んでいたが複雑そうでもあった。どうやら自分の調合したものより効果が高かったようである。
そうこうしているうちにまた店が混み始めた。
「店長、カップ麺とミネラル水が品薄です」
「わかった発注する。固形燃料は?」
「簡易かまどと一緒にバカ売れです!」
「テントには500ゴールドで、エンチャントするよってこのPOPだしてきて。あとバラケルスのおっさんにこのレシピを」
「はいー!」
なんか向こうでレシピを受け取ったおっさんが悲鳴を上げている。回復促進、疲労回復、結界の3つを兼ね備えたエンチャントで、さっき書いたやつ。
店の出たところでエンチャントの実演と体験コーナーを作ってみた。それからテントがエンチャント付きでバカ売れした。おっさんが魔法のかけすぎで干からびていたが、マジックポーションをぶっかけて蘇生させてこき使う。
そうこうしているとカエデちゃんが戻ってきた。
「主殿、お手紙」
「うん、ありがとう」
ジョゼフさんからの手紙で、そこにはこう記されていた。
【バラケルスを引き取ってくれんか? とりあえず後任のギルドマスターは手配済みなので、好きなようにこき使っておk】
日本語でおk、じゃなくて、おいおい。ひどいな。とりあえず仕事がひと段落した時点で、手紙のことを伝えた。すると返事はあっさりしたものだった。
「儂以上の腕を持つものがおるのじゃ。儂はまたゼロからやり直すぞい。というわけでよろしくお頼み申す、御師様」
「はい?」
「師匠、これよりのご指導、ご鞭撻のほど、お頼み申し上げる」
後ろを振り向くが誰もいない。おっさんの目がマジである。本気と書いてマジッてよむような?
「こき使うぞ?」
「のぞむところですじゃ。というかですな、魔力を枯渇させて無理やり回復すると、魔力が増大するようでしてな。以前死にかけた冒険者をポーションで一気に回復するとレベルが上がった例もありますし」
どっかのヤサイ星人か!? 死の淵から生還すると力が大幅に上がるとかですか。
とりあえず、うちのスタッフがまた増えることになった。
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