コンビニハヤシは平常運転です

 さて、昨夜のことを思い出して俺は一人にやけていた。バルドさんがとても可愛かった。回想モード……オン!

「当ててるのじゃ!」

「えっと……何を?」

「うう、ケイタ殿が当たってるっていったのじゃ! どうせ私はつるペタですよ!」

「大丈夫だ、問題ない!」

「えー、おっぱいはでかいほうがいいとか、大艦きょぬー主義とかさんざん宣言しておいていまさらじゃな!」

「乳なんぞただのパーツです。俺はそれを理解したのです」

「ど、どういうことかの?」

「そう、全ては萌え! 俺は貴女に萌えた! それが全てだ!」

「えっとよくわからんのじゃが……つまり?」

「あなたに惚れたということです」

「はうっ! ……えと……じゃあ、お嫁さんにしてくれる?」

 上目づかいで見てくるバルドさんがかわいい。ちょっと涙目なのがポイント高い!

「はい、もちろんです!」

 そして彼女を抱き寄せた。DTの俺にそんなことができるのかいろいろシミュレーションはしていたのである。彼女いない歴人生舐めんな。まあ、あれだ、人生経験少ないと、いろいろ誤算って起きるよね?

 ふと気づくと俺たちのシフトの時間になっていた。彼女はぎゅっと俺にしがみついている。うん、まさかちゅーしただけで失神するとは思わなんだ。まあ、俺も初めてだったけどさ……


 さて、シフトに入るとルークがにやにやしている。

「てんちょー、昨晩はお楽しみでしたね?」

 セクハラ発言は、まあ俺はいい。なんつーか、野郎同士のコミュニケーションだ。そして顔を真っ赤にしたバルドさんが、綺麗なハイキックを決める。というか、彼女は今日から制服を女性ものに変えた。というか、角度調整しただろ? スカートの中が見えそうで見えなかった。こっちに目線に気付くと、んべっと舌を出してくる。思わず苦笑いを浮かべる。照れたような笑顔を浮かべるバルドさんは綺麗だった。


「あの店長、全部駄々漏れです」

「というかあれです。バルドさんってあんなに可愛らしい人だったんですね」

「俺のです、あげません」

「ケイタ殿……」

「やってらんねーっすね。何ですか、その恋する乙女の目つきは」

「事実そうなのじゃ」

「うっわこのひと開き直ったよ。それでデレデレしてる店長ですよ。っかーーーーー! このバカップルが!」

 レナさんが微妙にヤサグレている。リンさんは苦笑いを浮かべ、なぜかルークに目線を向けた。なんか子供をあやしている。普段は見せない優しい笑みに、リンさんも優しげな微笑みを向けていた。こいつらくっつけばいいのに。というところで、ルークがその子の母親をナンパし始めた。リンさんは優し気な笑みを浮かべたままルークの背後に付き、抜き手でルークの延髄を突く。いきなり白目をむいて倒れたルークを見て子供がキャッキャッと笑っていた。うん、トラウマにならなくてよかったね。


 とりあえず求人の広告を張り出した。事業拡大に付き店員を募集! 若干名採用の予定とプリントアウトして、出入り口とレジ周辺に張る。

 ルークの伝手で冒険者ギルドにも張り出してもらった。そういえば、ルークの実力が知れ渡ってきているようだ。先日とっ捕まえた三人組はそこそこ名の知れた連中らしい。この前の戦いで敗軍に巻き込まれ、装備とかを失った結果の暴挙であったという。相手が油断していたのは事実だが、彼らを問答無用で制圧したことで、ルークの武名が高まったのである。その話を聞いてリンさんも嬉しそうだった。

 それでコンビニハヤシの店員は一騎当千とのうわさが広まり、事実それなりに腕は立つ人たちである。ちなみに、バルドさんは黒騎士バルドの異名があり、魔王軍でも上位に入るほどの大剣の使い手らしい。彼女に比べると、ルークとリンさんは束になってもかなわないらしい。先日のダルトンさんでも勝てるか怪しいとか。

 閑話休題。うちの店員が強いという評判が広まるにつれて、ガラの悪いお客様は減っていった。よいことだ。ちなみに、魔王軍からも冒険者が腕試しに訪れており、王国に所属する兵と小競り合いが起きることもあった。そしてそこに変なうわさが流れる。

「おい、ここで騒ぎを起こすな。このあたりの元締めの嫁は、黒騎士だぞ?」

「は? あの黒騎士を嫁にするとかどんな豪傑だよ!?」

「借りてきた猫のようにおとなしいらしい。どころかかわいいとか言ってるんだぜ?」

 ゴクリと話を聞いていた者の喉が鳴る。魔王の娘にして、バンパイア一族の血を引く魔王軍最強の一角を占める黒騎士。それを子猫のように手名付けるとかどんな化け物ですか。彼らの脳裏にどんどんと変なイメージが膨らんでゆく。

「いいか、この辺で騒ぎを起こすなよ? わかったな?」

 警備兵の警告に、彼らは首を縦に振る以外の動作は許されていなかった。


 従業員の応募にきた冒険者たちはなんかやたらムキムキだった。接客についての質問をしてもなんか脳みそまで筋肉っぽい感じだ。その疑問はラズ君が集めてきた噂を聞いて納得した。そして募集広告に一言付け加わったのだ。「武力不問」と。


 新たな従業員が見つからないまま日は過ぎてゆく。そんなある日黒い鎧に黒マントを纏った一団がうちの店を取り巻いていた。何事だ?

 そして、その中からさらに高そうな鎧を着たおっさん一人が店に向かって歩いてくる。その後ろには、どっかで見覚えのある顔つきをした青年二人が付き従っている。

「たのもう! 店主はどちらか?」

「はい、わたしですが?」

「貴様がうちの娘をたぶらかした痴れ者か! 叩き切ってくれる!」

 問答無用で上段から唐竹割で振り下ろされる剣を見て死んだと思って目を閉じた……ガキーンとか金属音がしたと思ったら目の前に黒い鎧を身にまとったバルドさんがいた。

「父上、何をするのじゃ!」

「父上?」

 そのまま二人は店の外で派手に斬り合いを始めた。そして、連れの二人の青年が俺の方に向け深々と頭を下げる。いったい何が起こっているか、まったくわからなかった。

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