店名が変わりました
さて、今日も今日とてコンビニハヤシは大盛況です。コンビニだけだとケイタ殿の存在が見えてこないとバルドさんに言われ、急きょ店名変更です。タブレットで設定いじるだけで看板が変わったの見ていろいろと頭痛がしたんですが、もう慣れました。ハハッ。
「ダルトン様ですね。こちらご注文の黒鉄のバスタードソードです」
「ねんがんのスレッジ工房のバスタードソードを手に入れたぞ!!」
ダルトンさん、それフラグ……って思ったけども、さすがに殺してでも奪い取ろうとする人はいなかった。というかこの人、この辺じゃ有名な剣士らしい。リンさんが手合わせしてもらいないかなあとか乙女チックに悩んでいた。悩みの内容が乙女じゃないけども。
「店主よ。それにしても素晴らしい伝手をお持ちだな。さぞかし名のある商人なのだろう?」
「いえ、私はしがないコンビニ店長です」
「そうか、まあそういうことにしておこう。また寄らせてもらうぞ!」
頬にバッテン傷で笑顔を作られてもぶっちゃけ怖いです。まあ、それでも笑顔で見送るあたり俺も訓練されたコンビニ店員なのだろう。
先日ヒーリングスポットで魔力切れを起こしたレナさんも、新しいワンドのおかげか今日は順調に回復魔法をかけ続けている。なんかコンビニの聖女とか意味不明な二つ名がついているのはもうスルーでいいと思うんだ。うん。
「あ、てんちょー! このワンドすごくイイです! とてもスムーズに(魔法が)出せるんですよ。(魔力も)たくさん出しても疲れないし。最高に快感です!」
レナさんが穢れなき微笑みできわどいセリフを言う。さらにワンドの根元から先端に向け手をすっと滑らせた。前かがみになった連中がいたのは仕方ないと思う。カッコの中の言葉もきちんと言わないとですね。
彼女はうふっと首をかしげると、綺麗なブロンドの髪が躍る。そして体を少し傾けたことでたゆーんと揺れる幸せの象徴。うん、俺って幸せ者だなあ。とどうも鼻の下が伸びていたようだ。バルドさんの必殺技、体を一回転させて放つハリセンスピンスラッシュを後頭部に受け、俺の意識は闇に沈んだ。
「不埒もの」
さて、先日レナさんが魔力切れになるまで回復魔法をかけ続けたのには理由があった。ラグラン関門の先にあるブルカン平原で、魔王軍と聖王国軍が激突したらしい。大規模な戦闘が今も続いており、負傷者が大量に出ている。ちなみに、コンビニがある位置は聖王国の領内らしいが、最前線に近い位置であり、王国軍が敗北すると魔王軍が雪崩れ込んでくる可能性がある。
そういえば、バルドさんは何とか伯爵家とか名乗ってたけど、どっちの陣営なんだろうか?
「うむ、我がヴァラキア家は、魔王陛下に忠誠を誓っている」
「って、王国側の土地にいていいんですか?」
「まあ、問題はない。当家は前線に出ておらぬし」
「ならいいんですが……」
「うむ、ケイタ殿。わが身を案じてくれるとは恐悦至極」
「そりゃあ、大事な人ですからねえ」
「ん? なななななななななななあああああああああ??」
バルドさんが顔を真っ赤にして後ずさる。
「キャー、店長さん大胆ですー!」
レナさんが手で顔を覆って黄色い悲鳴を上げる。けど指を開いて目を覆っていないあたりあれだ。うん。
「そりゃ、右も左もわからない自分を助けてくれた恩人ですし。大事にしますよ」
「あ、ああ、そうだな。ケイタ殿は義理堅いなあ」
「いえいえ、当たり前のことです」
なんでバルドさん拗ねてるんだろう? ちょっと重い空気が漂い出したところにルークが駆け込んできた。
「店長、行き倒れです!」
「はい?!」
店の外に出ると、全身同じ色の装束を纏った……たぶん少女が噴水の中に浮かんでいた。顔まで頭巾で覆っており、とりあえず噴水の中から引っ張り出す。うん、呼吸はしている。リンさんに頼んで、着替えさせてもらった。下着は仕方ないので在庫で、服はコンビニの制服を着せる。そして仮眠室に寝かせてもらった。一応枕元にミネラル水と、おにぎりを添えて。
そうそう、レベル3になったら備品のところに制服が出たので、みんなおそろいの服装にした。男性は襟付きシャツにスラックス。女性陣はメイド服だ。大事なことなのでもう一度言う、メイド服だ。なのだ。
うちの女性人二人はとてもたわわなので、こぼれんばかりの恵みを俺たちに与えてくれるだろう。ちなみに、男性客が増えた。てきめんに増えた。おっぱいばんざーい!
そして来客もひと段落突いたとき、バックヤードからすごい音が鳴り響いた。
ぐぎゅるるるるるるるるるると。
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