レベルアップそのに

 とりあえずメンバーを集めた。そしてレベルアップについて告げる。

「ほう、早いな。ケイタ殿の手腕だろう」

「すばらしいですわあ!」

 レナさんが魔女っ子の友人のようだ。

「てんちょーぱねーっす、すげーーっす、だから俺の時給上げて下さぐげっ!?」

「空気を読めこの痴れ者!」

 ルークはリンさんに沈められた。攻撃を受ける瞬間歓喜の表情が見えた気がしたが……見なかったことにしよう。知らない方が仕合せな世界は確実にあるんだ。


「じゃあ、いきます……ぽちっとなー!」

 俺はタブレットに表示されているメッセージのYesをぽちっとタップした。

 以前のように閃光が漏れ出し、一瞬目を閉じる。そして目を開けると店内は一変していた。フロアが拡張され棚が一列増えており、エンドのディスプレイスペースは更に豪華になっていた。ちなみにはがねの鎧はミスリルアーマーに変わっていた。ブルーに輝く鎧に、凛さんが一瞬目線を向け、すぐにそらした。その一連の動きをルークが目ざとく見つけメモを取っている。まめな奴だ。仕事に対してもっとまめになればいいのにな。

 店の外もすごいことになっていた。自販機が拡張され、マジックポーションが増えていた。バルドさんとラズ君がポーションを見てため息を漏らす。曰く、王都の錬金術ギルドにケンカ売れる品質とのこと。とりあえず聞かなかったことにした。

 店の前は普通の街道だったが、ドーンと噴水が出来ていて涼し気な水音が聞こえてくる。アルファ波でてるなこれ。そして周囲にはベンチが置かれ、リア充どもがすでに自らの世界を築き上げていた。後でベンチの下に爆薬を仕掛けようと思ったが、ダイナマイトは備品にも商品にもなかった。無念。

 店の横には荷馬車を止めるスペースができており。行商人なども利用しやすくなっている。ラズ君が商売の規模が大きくできる可能性があるので、日持ちのする消耗品などの仕入れを増やすべきと進言してくれた。ありがたや。

 ひとまず新設された棚に商品を並べる。新商品のカタログが出たので、バックヤードのプリンタで印刷し、スタッフに回覧させた。

 売れ筋のやくそうシリーズをグレードごとに並べる。目につきやすい中段にはまとめ買いでお得になっているパックを中心に、安価な低グレード品は低めの位置に、目線よりやや上には大き目のディスプレイとともに高単価の商品を設置する。高い位置は遠目から目立てばお客を引き込みやすいのだ。


 いろいろと計算して商品を並べているとレナさんが寄ってきた。

「店長、ご相談が……」

「うん、どうしたんだい?」

「この商品なんですけど……」

 そこには精緻な彫刻が施された短杖ワンドが載っている。

「王都の彫金ギルドの新作なんですよ。法力の底上げ効果もすごいらしくて」

 カタログ欄外には口コミ、いいねが1000オーバーと記載がある。ファンタジーの中の見慣れた現実にめまいがするがここはこらえる。

「わかった。注文しておくよ。仕入れ値がこれだから……レナさん頑張ってるし、従業員割引でこんな値段でどう?」

「わああああああああ、いいんですか??」

「うん、ヒーリング目当てのお客様だけど、買い物もしてくれてるし。来客増加に効果ありってことで」

「ありがとうございます!!」

 そう言ってレナさんが飛びついてくる。ジャンプした瞬間二つのふくらみがたゆんっと揺れた。だが俺はその感触を堪能することなく、バルドさんのハイキックを受け意識を飛ばした。

「この不埒もの……」

 俺なんかしましたか?


 目覚めるとコンビニ店内は戦場だった。比喩的表現ですが。

「店長、すいません! こっち替わってもらえますか?」

「わかった、ラズ君、引き継ぐよ」

「すいません、レナが魔力切れ起こしたらしくて」

「それはいかん。このマジックポーションは経費で落とすから持って行ってあげて」

「ありがとうございます!」


 レジの前の列を捌いてゆく。

「はい、やくそう5個とどくけしそう3個ですね。86ゴールドです。ちょうどいただきまーす。ありがとうございましたー!」

「すいません、俺はお持ち帰りできないんです」

「誰もそんなこと聞いてない!」

 ルークの世迷言にリンさんが素早く突っ込みを入れ、沈める。フライングニールキックって生では初めて見たな。すげー。

「いらっしゃいませ、お客様、失礼いたしました」

 にっこりとほほ笑むリンさんだったが、お客様は若干引きつっていた。たぶん気のせい。そう、気のせい。

 先ほどのカタログをイートインスペースに置きっぱなしにしていたようだ。レナさんが見ていたのかもしれない。

「あの、これって注文できますか?」

「はい、少々お待ちください。えーっと、ラピスラズリのミスリルワンドですね。1300ゴールドです。三日ほどでとれますよ」

 タブレットを操作して納期を確認する。ちなみにここは王都からひと月ほどかかる場所らしい。王都の彫金ギルドの新作が三日で入手できると広まり場がざわめいた。

「兄ちゃん、この黒鉄のバスタードソードはどれくらいで取れる?」

「はい、少しお待ちくださいね。明日納品可能ですね」

「なんだって!? ドワーフ王国はここから三月はかかるんだぞ?」

「こちらの端末ではそうなってまして。もし納期が遅れたら違約金をお支払いしますよ」

「おっしゃわかった。三千ある。前金だ!」

「毎度ありがとうございます。お名前を……はい、ダルトン様ですね。確かに承りました。こちらご注文控えです」

「楽しみにしてるぞ!」

 このやり取りの後武具の予約注文が殺到した。バルドさんが打ち込み手伝ってくれなかったら朝までかかりそうでした。まる。

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