急患です?! ってここはコンビニなんですが
「助けてくれ!」
四人連れのパーティがコンビニに駆け込んできた。ビキニアーマーを着ていた女戦士が重傷を負いってどころか死んでないかこれ?
バルドさんが容体を確認するも顔をしかめている。どうもよくないらしい。
「いかんな。アンデッド化が始まっている」
「そうだ、聖水はないんですか? こいつは、リンは俺をかばって!!」
泣きじゃくるリーダーと思われる青年。よく見ると女戦士の肌の色が徐々に黒く染まってゆく。どうやらアンデッド化の毒か、呪いをかけられているらしい。
「ケイタ殿。あれを」
「あれ……ああ!!」
消費期限は……あと二分。とりあえず蓋を外し、頭から神の雫をぶっかけた。虹色に同じ色をとどめない液体が空気中の魔力を吸収して輝きを増す。そのまま輝きは女戦士に降り注ぎ、彼女の体がまばゆく輝き、そして傷一つない状態で女戦士は目覚めた。
「ここは……知らない天井だ」
「いやそういうのはいいから……」
「リン、良かった! よかったああああああああああああ」
リーダーらしき青年が女戦士に抱き着く。そして次の瞬間ごすっと鈍い音が響いた。
「てめえ、どさくさに紛れて人の胸触ってんじゃねえ!!」
肘鉄が脳天にめり込み、青年の体が地面に平行になっている。というか勢い余って顔面が叩きつけられていた。びたーんと。
さて、ここで困った問題が発生した。神の雫は仕入れ値一万ゴールドで売価が三万ゴールドだった。そして彼らの所持金が思い切り不足している。大体宿屋一泊が50ゴールドの世界である。一か月の生活費は大体五千ゴールドもあれば足りる。一万ゴールドを稼げればそれなりの稼ぎがあるとされる。そんな相場で三万ゴールドは彼らの半年分の稼ぎだった。
「命には替えられない。なんとしてでも代金は払わせてもらいます」
「そうですねー。けれどどうやって稼ぐんですか?」
「それは……」
「そもそも依頼失敗の場合違約金がかかるじゃろ?」
「あ……」
「忘れてたんじゃな? まあ、仲間が死にかければ動転もするか」
「ぐぬぬ……」
「仕方ない、わたしの身体で払おう」
「えええええ?!」
あの女戦士さんのたわわなアレでチャレンジとかできるんだろうかなどと妄想を膨らますと、バルドさんに足を思いきり踏まれた。グギェとかなんかトカゲっぽい悲鳴を上げそうになるが必死にこらえる。
「ようするにじゃ、ここで雇ってもらいたいということかのう?」
「そうです!」
「それだ!」
女戦士……リンさんと、リーダーっぽいやつ、ルークのセリフが微妙に違いつつかぶる。
そして彼らの自己紹介を受け、当店は4人の従業員を迎え入れた。
店長:俺ことケイタ 副店長:バルドさん 店員その一:リーダーことルーク。その二:女戦士ことリンさん。その三:魔法使いのラズ君。その四:クレリックのレナさん。
なんかそのまま冒険の旅に行けそうな構成ではある。レナさん個人の収入になるので、イートインスペースの一部で即席ヒーリングスポットを開いた。回復魔法をかけて代価をもらうのである。レナさんは儚げな美人で、そんな彼女がコンビニの片隅で働くさまにぐっと来た野郎どもが列をなすことになった。
ラズ君は地味だが、確実に仕事をこなしてくれ、町に出て情報収集してきた内容から発注を決めた。戦闘が起きたときはポーション多めとか、矢を大目に仕入れるとかだ。
ルーク、何となくイケメンでイラっと来るので呼び捨てだ、はイケメンスマイルで女性客の増加に寄与した。そんなこんなで彼らには時給と、利益分から出る歩合で給与を支払うことになる。
そして彼らが働き始めて三十日。タブレットに再びメッセージが現れた。それはレベルアップを促す表示だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます