コンビニがレベルアップすると

 絶叫を聞きつけたバルドさんがバックヤードから飛び出してきた。

「何事じゃ!?」

「ああ、すいません、お騒がせを……」

「ふむ? ああレベルアップしたのじゃな」

「わかるんですか?」

「うむ、店の規模が大きくなっておるしな」


 ひとまず自販機のポーションを確認した。バルドさん曰く、コモンポーション、ハイポーション、エクスポーションの三種類があり、品質は保証するとのことだった。

 冒険者風のパーティが自販機を見つけ、魔法使いらしき青年がうなずくとおもむろにコインを入れてポーションを買う。魔法使いの青年がポーションの色を見て驚きの表情を浮かべていた。

 その光景をバルドさんはさもあり何という風情で見ている。

「そういうものなんですか?」

「何がじゃ……ってああ。このポーションも回復量は上限をほぼ維持できる。彼らのような冒険者には必須であろうよ。おそらくだが、次の戦に参加するのじゃろうな」

「あー。そういえば人通りも多いですし、なんかあわただしいですね」

「うむ、今回は魔王が出張ってくるらしいぞ」

「えええええ!? ということは、人間の勇者も現れるとか?」

「なんじゃ、わかっとるのう。今代の勇者はまだ年若く……そういえば勇者召喚の時期とお主が現れた時期は一致するのう?」

「へエ、ソウナンデスカ、グウゼンッテコワイデスネー」

「まあ、あれだ。レ・ミゼラブルじゃな」

「ああ無情って、なんであんたがそんな言葉知ってるんだ!?」

「ああ、休憩室の本を読ませてもらった。なかなかに異世界の文化というものは興味深いのう」

「もういいです、ええ」

「それと仮眠用ベッドの下から……」

「アーアーアーキコエナイーーー!!! っていうか見たのか、見たんですか!?」

「うむ、まあ、あれじゃ。巨乳などただの飾りです。エロい人はそれがわからんのです」

「大鑑巨乳主義で悪かったなあおい!? 泣くぞ、いい加減泣くぞ?」


 いろいろ脱線した。勇者召喚と俺の異世界転移に何か関係あるのかもしれない。ただまあ、今日を生きなければいけない俺はそのことを頭から締め出した。

 今日も今日とて売り場の整備とレジ打ちの毎日である。バルドさんもレジ打ちに慣れ、イイ笑顔でありがとうございましたーと告げると、女剣士のお客様が頬を赤らめていた。というかビキニアーマーって実在するんですね。さらにあれだ。イケメン爆破したい。

 それとなく目線を向けていたのだがどうも気づかれていたらしい。

「ふむ、あのような鎧で身を守れるのか? と言いたいようじゃな」

「あ、ええ、そうなんですよー」

「あれ魔法仕掛けの防壁を張るタイプでな、各パーツの中央部に魔方陣を仕込んだ宝石がついておるのじゃ……」

 ああ、だからおぱーいの中央部にピンク色の宝石がのっかっていたんですね。あえて言おう、巨乳はいいものだ。

「不潔じゃな……この変質者が」

「誤解だ! 男は誰でも心に理想のおっぱいがあるんだ! それを誰にも否定させないししてはいけないんだ!」

「人がまじめに魔法鎧について講義しておるのに……このドスケベが」

「それは申し訳ない。ですがあれです。男のサガです。カノンじゃなくてサガです」

「おぬしふたご座で二重人格なのか?」

「メタネタは止めましょうか」

「うむ、何かその方がよいと思う」


 タブレットを見ると仕入れ可能商品LV2という項目が追加されていた。上やくそうとか徳やくそうとかが増えていた。後は武具類も品ぞろえが増えている。入ってすぐの目立つエンドにディスプレイしてみた。そんな装備で大丈夫か? とPOPを付けるのも忘れない。そういえばタブレットの発注メニューに店舗備品の項目があったので、雲形POPとか取り寄せてみた。後魔法薬の品目が増えているので、ドリンクコーナーの半分を入れ替え、ポーションとかマジックポーション(MP回復)を入れてみた。これが好評を呼び、売り上げが伸びた。後、日本のコンビニ弁当も仕入れられたので、イートインスペースにレンジを設置したところ、ここで食事をする人が増えていた。干し肉ばっかりで飽きてたんだよなーとか髭もじゃの戦士が相好を崩す。このスープうめえとカップ麺をすする。ちなみに、カップ麺はお湯だけで作れることと軽いので非常に好評だった。


「なんだこれ?」

「うむ? ほう、これは面白い」

「バルドさん、わかるんですか?」

「神の雫と言われる回復薬じゃ。死の咢からすら呼び戻すってやつじゃな」

「ふえー、うーん……ぽちっとな!」

「なに!? 注文したのか? あれは精製してから三日しか持たんのじゃぞ?」

「えええええ!? 聞いてないよ!?」

「一万ゴールドもするものをぽちっと押す奴がどこにおるか……」

 だがこの時の選択を俺はあとで神に感謝することになる。消費期限の最終日に彼らはやってきたのだった。

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