店舗運営に当たり

 お店を運営するにあたって、いろいろと確認してみた。ステータス画面には店の状態が出てきた当たりで飲みかけのお茶を噴いてしまった。資金は日本にいたころの残高がそのまま反映されているようで、売掛金400ゴールドはさっきのやくそう仕入れ分であろうか。

 レジは自動釣銭機を入れていたが、お金を入れると消え、お店の所持資金が増える。バルドさんと話した後、試しにレジを使用してみて、やくそう一つを売り上げてみた。というか、電子マネーが仕えたときはさすがに呆然とした。ウォレットスマホで決裁ができ、スマホの残高もゴールドになっていたあたりで思考を停止した。さすがにこれで決済することは多分ないだろうと思いつつ。


「ふむ、実に興味深い。魔導の深淵はいまだ見えぬのう」

「あーもうそういうことでいいです」

「なんだ、ケイタ殿はそういうのに興味はないのか?」

「んー、深く気にしたらなんか負けそうで」

「それはいかん。ヴァラキア家の家訓は、勝つまで負けるな! じゃ。覚えておくように」

「はいはい、わかりましたよー」

「気合が足らん! そんな事じゃから負けるのじゃ!」

「いやあのその、そういう意味では……」

「まあよい。この世界は弱き者であることは悪じゃ。何かの力を身に付けねばならぬぞ」

「えー……わかりました」

 不承不承頷くとバルドさんは満面の笑みで頷く。何このイケメン。爆破したい。


 現代日本で便利なものも、ファンタジー世界では無用の長物でした。とりあえずスマホ充電器とかカットアイスとか、衣類の類を返品する。なんかタブレットの説明通りに返品商品を打ち込み、発行された伝票と一緒にコンテナに入れ、事務室になぜか描かれていた魔方陣っぽいものに乗せる。一瞬閃光が走るとコンテナは消失しており、チャリンとコインが降ってきた。コインはすぐにレジに投入すると、ステータス上で資金が増える。そして開いた棚にやくそうとかどくけしそうとか、せいすいを並べる。

「この聖水は素晴らしい品質だな。王都の聖職者が祝福したものとまったく引けを取らぬ」

「そういうものですか?」

「うむ、やくそうも質がいい。HP回復量に普通はばらつきが出るのだが、これならば常に最大値の回復が見込めるな!」

「ほうほう、すごいっすねー」

「なんじゃ、せっかくほめているのだからもっと喜ぶのじゃ」

「えーっと……、スゲーッス! バルドパイセン! パネーーーーッス!」

「ケイタ殿、大丈夫か? おもに頭?」

「やめてください、キャラに合わないのはわかってるんです。ていうか素で返されるときついです」

「うむ、よくわからんが気を付けるのじゃぞ?」

「……はい」


 さて、こっちの世界に飛ばされてすでに七日が過ぎていた。フルプレートを着たごついおっさんとか、犬耳つきの弓兵とか、ローブに身を包んだ爺さん(耳とんがり)とかまあ多種多様な人々が訪れた。彼らはやくそうとかやくそうとかどくけしそうとかを購入してゆく。そして古い装備品などの引き取りを要求され、バルドさんと相談して時価で引き取った。POSに買取メニューがあることを初めて知った。

 そういえばコンテナに痛んだ装備品を入れて、タブレットからリペア依頼をかけると、魔方陣で一瞬消えた後再度コンテナが届く。請求書とともに新品になった装備品が入っていた時はぶっ魂消た。買取価格プラス修理費用を引いた利益ではあるが、戦場に近いということもありよく売れた。

 そしてさらに十日ほどが過ぎたころ。ふと客足が途切れたときにタブレットにメッセージが表示された事に気付いた。

「取引金額が規定値に達したので店舗をレベルアップできます。実施しますか?」

 Yes Noの表示があり、特に何も考えずにYesをタップした。するとタブレットから凄まじい光が溢れコンビニ店内を照らす。くらんだ目が戻ったとき、見慣れたコンビニはフロアが増床され、イートインスペースが増えていた。店舗入り口の横にはポーションの自販機が設置されている。

「なんじゃこりゃあああああああああああああああああああ!」

 とりあえず俺の絶叫がむなしく店内に響いていた。

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