ファンタジー世界でコンビニを経営したら

響 恭也

目覚めたらそこは異世界でした

 ここは何処とも知れない世界。少なくとも今まで生きてきた世界とはルールが違う。周囲を見渡すと亜人と呼ばれる人々、普通に見える人間、耳がとがってる人、様々だ。

 さて、自分はどうしているかというと、自身が経営していたコンビニ店内にいたのだ。そして唐突に起こる地震、揺れに耐え切れずコケて頭を打って気絶した。そこまでは何となく覚えている。そして目が覚めると……そこは異世界だった。


 唐突に自動ドアが開いた。電気とかってどうなってるんだろうなー? という疑問はさておき、条件反射的に、いらっしゃいませ! と声をかけてしまった自分は訓練されたコンビニ店員なのだろう。

「すまん、ここはどういう店だ? あといきなり扉が開いたんだがどんな仕掛けだ? というか……」

 唐突に店内に入ってきた少し顔色の悪い青年はマシンガンのように言葉を紡ぐ。それにこたえるすべを持たずただ呆然と立ち尽くしていた。そして出てきた言葉がこれだ。芸の一つもありゃしねえ。

「えーと……ここってどこなんですかね?」


 二人そろって呆然とした後、青年が口を開いた。

「ここは神に愛されし大地、エルガルズ。このあたりはラグラン関門のちかくじゃな」

「えっと、地球ってご存知ですか? 日本とか?」

「聞いたこともない」

「あなたが知らないだけってことはないですよ……ね?」

「あり得ぬ。我は誇り高きヴァンピール族の一人、ヴァラキア伯につながるバルドというものだ。この大陸を何度も回っておる」

「お、おう、そうなんですか。それは失礼しました」

「なに、よいぞ」

「すいません、失礼いたしました」

 うん、どうやらよくある異世界トリップというやつのようである。少し戸惑っているとバルドさんが声をかけてきた。

「それでだ、話を最初に戻してよいか?」

「はい、何でしょうか?」

「ここは何の店じゃ? 何やら見慣れないものがたくさん並んでいるが」

「あ、ああ。うちはコンビニです。コンビニエンスストアってやつですね」

「こ……こんびに?」

「便利なって意味ですが、とりあえず何でもそろうって意味ではあります。もちろん限界はありますが」

「そうか、なればこれからここは戦場になる。やくそうとかせいすいとか後は武具を揃えておくべきだぞ?」

「はがねの剣とかですか?」

「そうそう、わかっておるではないか!」

「いえいえ」

 どこのRPGだよおい。誰にも聞こえない内心の突込みだったが、ここがファンタジー世界だということを失念していた。

「あーる、ぴーじー??」

「え?!」

「ああ、すまぬ、お主の思念が漏れ出てきていたようじゃ。今後は気を付けるゆえ許せ」

「あ、はい。こちらこそ」

「して、仕入れは大丈夫か? 戦争が始まれば行商人も近寄るまい」

「ああ、そうですよねー、どうしたらいいんだろうか……?」

「いつもはどうしておるのじゃ?」

「えっとですね、このタブレットから商品を選んで、メインPCに転送するんです……が……ってええええええええ!?」

「なんじゃ騒がしい」

 タブレットがなぜか動いていることも不思議だったが注文推奨商品には、メーカーが新発売した怪しげなドリンクとかお弁当とかは並んでいなかった。見慣れない、やくそう、せいすい、銀のナイフなどの文字が並ぶ。試しにやくそうを選択し、数量100を入力して注文を確定する。すると自動ドアの外でどさっという音が響いた。

 慌てて外を見ると、見慣れたプラ製のコンテナがおいてある。見慣れた配送伝票もそのままだ。そしてさらに見慣れた納品伝票を確認すると、そこにはやくそう×100の文字と単価、売価が書かれていた。単価4ゴールド、推奨売価10ゴールド、利益率6割は良いなと半ば現実逃避した思考が頭を占める。

「ほう、転移による配送か。なかなか良い取引先ではないか。モノの質もよい。これは売れると思うぞ!」

「そうなんですか?」

「なんじゃ、お主は商人のくせに目利きスキルもないのか?」

「スキル……?」

「ステータスと言ってみなさい」

「は、はあ……すてーたす!」

 するとタブレットの画面が変化した。俺の名前と身体ステータス、後スキルが表示されているようである。


名前:ハヤシ ケイタ

レベル:1

STR:5 筋力-武器安手の攻撃力に影響する

DEX:8 器用さ-攻撃命中度に影響する

VIT:7 体力-生命力、防御力に影響する

INT:15 知力-魔法攻撃力に影響する

MND:14 精神力-魔法防御力、神聖魔法の威力に影響する


HP:32 MP:37

物理攻撃力:5

魔法攻撃力:15

物理防御力:7

魔法防御力:14


スキル:成長促進大:レベルアップ時のステータス向上にボーナス大

    商機の閃き:カンで発注した商品が売れる可能性が高い

    言語能力:すべての種族とコミュニケーションが取れる


「なんじゃと、お主未だレベル1か!?」

「そうみたいですね……」

「そうか、わかった。儂がここで働くとしよう!」

「うえええええええええ??」

「儂はそれなりの力を持つし、ヴァンピール故夜にも強い。どうも休みなしに店を開け続ける商売なのじゃろ?」

「それはそうですが……」

「なればさらにちょうどよい。それに路銀が尽きておってのう」

「うっわ、絶対そっちが本音でしょ!?」

「それもあるという程度じゃ。いざとなれば傭兵をやればよいが、一応高貴なる身ゆえにな」

「商人やるのはいいんですか?」

「なに、商いがなければ世は回らぬ。そのくらいはわきまえておるぞ」

「は、はあ……」

「うむ、ではよろしく頼む。あと、何をしたらいいか教えてもらおう。その代わりと言っては何だが、お主は流浪人じゃろう? なればこの世界の事を教えて進ぜようほどに」

「あー、なんかそうみたいですね。んじゃお願いします」

「うむ、よろしく頼むぞ、ケイタ」

「はい……って、名乗りましたっけ?」

「いや、ステータスを見たのじゃ」

「ああ、さっきレベル1とか言われましたね、そういえば」

「できたら定休日を作るかしてレベルを上げたいところじゃな。流れ弾一つでおぬし死ぬぞ?」

「うへ……その時はお願いします」

 背中を冷たい汗が伝う。なんかいろいろありすぎて頭が回らないが、どうやらひとまず現状で生きるしかないようだ。

 ふと手に取った薬草はビニールでパッキングされており、JANコードとバーコードがシールで張り付けられているのを見て、俺はひとり脱力するのだった。

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