第24話 弱点
怜王は軽く驚いた、あの言葉は確実に警備員の心を打ち砕く筈だったからだ。それでも怜王に向けて指示を出したそれに怜王は驚いたのだ
怜王は振り向き軽くいつもの様に微笑み
「何です?何が用なのです?見た所警備員の服装じゃ無いですね。僕の予想が正しければ防衛省の秘書の人かな?まぁそんな事は別にどうでも良いです。で僕を止めて何がしたいんです?」
怜王を呼び止めたのは防衛省大臣の命によって来た秘書劉だった
「話が長いですね、聞いてて疲れます。まぁ本題に入ります投降してくださいこちら側はあなたを怪我させたくありません。軍の出動も確認されてるので勝ち目は薄いかと」
怜王はポケットに手を入れたまま
「投降?すると思いますか?それに軍もこれない事は確認済みですよ、そう用意したんですから。それにあなたも大変ですね仕事でこんな事やらされて。ホント同情しますよ」
劉は眼鏡を軽く直し
「交渉は決裂ですね。では武力行使ですか」
劉が手の平を開くとそこに一瞬でナイフが用意された
その手にあるナイフを大振りに怜王に投げつけた
投げられたナイフは音も出さず5メートル以内に入ると消えて無くなった
「報告通りですね。ただやり方は幾らでもありますから」
劉の手に再びナイフが握られた
握られたナイフは投げる訳でもなく手にあるままだった、ただ次の瞬間手にあるナイフが一瞬で消えた
手からナイフが無くなり予想もしてなかった所から金属が落ちた音がした
「これは予想外ですね・・・」
怜王は嘲笑うかの様に劉を見た
「やっぱりあなたは瞬間移動系の能力者だったんですね。これなら辻褄が合います、こんな速く僕の元に着けたのもあの攻撃も。ただ僕が消せるのは物質だけとは言ってませんよ。全ての確立、候補、未来、これらの最悪なケースを考えて対策を取らなきゃ無意味ですよ。運命はいつも自分の考えてる事より残酷な結末しか訪れないんですから」
劉は再び手にナイフを転送させた、その数10本
10本全て転送させるが
カランカランカランカランカランカランカランカランカラン
と音を立てて地面に落ちた
(やっぱりですね。座標を削除されてます、それで近くの所に誤転送されてのですか・・・)
劉の能力は瞬間移動で決められた場所から場所へは手を触れなくても大丈夫だが決められて無い所は直接手で触る必要がある
例で言えばナイフを置いてる所から手までは決められた場所なので直接触れる必要は無いが、手からナイフを怜王のお腹に転送させるのはは決められた場所じゃ無いので手で持ちそこから自分で座標を合わせなければいけないのだ
それでも怜王は座標と言う概念そのものを自分の周囲から一旦消して自分にナイフを転送出来ない様にしたのだ
怜王は首を左右に振りやれやれと一言置いて
「無駄って分かりましたよね?時間稼ぎとかならやめてください、殺しますよ。僕は折角見逃そうと思ったのにがっかりですよ。奇跡って言うのはですね待つ物じゃなくて起こすも何ですよ。それを簡単な待つだけにしてあげたのに・・・まぁ意味は分からにでしょうけど」
それを聞いた劉は眼鏡を直し
「それは慢心ですよ。何かアクションは起こしてます、そのお陰で奇跡でも何でもない事象と結果が得られました。そしてその結果の考察であなたに勝てます」
「面白い」
怜王は短く言葉を吐きポケットから手を抜いた
怜王が臨戦状態に入ると劉は自分の体を破壊された管制塔に転移させた
そしてナイフを30本程度怜王に投げつけ管制塔の瓦礫も怜王に転送させた
それらは怜王の5メートルより外に出されるが劉は続けて壊れたセスナを転移させた
大量の瓦礫が落ちた所為で土煙が立ち怜王から劉の場所を認識することは出来なくなった
(何をするつもりなんだ?)
怜王がそう考えてると間髪入れずに次は管制塔が倒れた時に下敷きに成った警備室が転送させられた、そして次は廃棄予定だった航空機が2基、次は管制塔の上部、次はハイリフト車と呼ばれる飛行機に荷物を運ぶための車を転送させた
そして劉は怜王の近くに転送して誤転送されたナイフを再び転送させた
怜王が周囲の土煙を消すと目の前に劉が立っていた
そして怜王の頬には刃物で切られたような跡があり血が頬を伝わって垂れていた
怜王は自分の頬の血を振り払い服に着いた汚れをはたきながら
「何をしたんだ?」
また短く問いかけた
劉は眼鏡を直して怜王を見て口を開いた
「答えは自分で出す物じゃ無いんですか?}
「成程、分かりましたよ。確かに僕は慢心してたようですねあんな簡単な事に気付かないとは。随分落ちぶれましたよただ決定打が足りませんねやるなら徹底的にやらないと駄目ですよそれとも今のが限界ですか?それなら僕の事象と結果の観察の成果を見せましょう」
「無意味じゃないですか?あなたでは私を5メートル以内に入れる事は出来ない。それに今のは小手調べです」
そう言って劉は再び瞬間移動してその場から離れた
(気付かれましたねあれは、こんな速く気付くとは予想外通り越して論外ですよ)
「何が起きたか分からない読者の為に説明しますよ、まず一番最初のナイフを10本転送させた時地面に落ちたナイフの数が9本だっただからあなたはある仮定に辿り着いたそれは僕の演算限界、概念に近い物理法則を削除するのは脳に大きな負荷が掛かる。そしてそれは正しく10本の中の1本は5メートル以内に入って自動削除された。だから演算限界までさっきの猛攻で持って行き最後は近くにあるナイフを転送させた。近くにある分座標の計算は楽ですからね。それで僕は座標の削除を間違え頬を切ってしまった。そんな所ですかね?」
(読者とかがいまいち良く分からないがあっている、しかし、それが分かった所で私を5メートル以内に入れる事は不可能でしょう)
怜王がわざわざ説明したのは劉の動揺を狙う為だ、普段なら看破できるが今回は勝利が近く油断し動揺を誘われた。そしてその全ては怜王に仕組まれていた
怜王から50メートル程距離を取り次の手を劉は考え始めた
しかしその考えを嘲笑うかのように突然劉の体が怜王に引っ張られた
(なっ、何が起こった?まさか・・・)
劉は瞬間移動して距離をとろうとするが建物も何もかも怜王に向かって吹き飛んで行くため安全だと思われる座標が変わって行き計算できなかった
(ありえないだろ!空気、引力、慣性、ありとあらゆる力を適切に削除して自分の所に物体を引き寄せてる!それに5メートル以内に入れば強制削除だ!か、勝ち目がない・・・ん?でも待てよあの技は制限があるんじゃないか?じゃなければ本部襲撃でも使う筈だ。本部では出来ない事・・・?成程分かりましたよ)
そう考えていると引っ張られる力は更に大きくなり大きな瓦礫すら飛ぶ状態に成って居た
「一か八かです!総力転移!!」
劉が言葉を放った瞬間ナイフだけじゃないありとあらゆる小さな物質が劉の背後に転移されたその数は軽く1万は超えていた
劉を含めたその全ての物質は怜王の方に引っ張られた
殆どの物質が削除された所で劉は怜王の5メートル以内に入った
救急車が大きなサイレンを鳴らしながら空港を出た
そしてその救急車の中には劉が居た
(作戦は失敗ですか・・・でも生きてたら成功ですかね?)
劉は最後に本部では出来ない理由を思いついたそれは物が多すぎる事だった
引っ張る技は演算領域を大きく使う為大量の物質が怜王に向かって行くと削除しきれなくなり自分にぶつかってしまうのだ。これは仮定でしかなかったがそれは事実で劉の事象による結果の観察の勝利と言えた
ただ
「あの、黒神はどうなりましたか?」
救急車に乗って居る看護士が言いにくいような顔をして口を開いた
「飛行機を強奪して離陸しました」
劉は顔を下に向け
「そうですか・・・そういえば私を発見したのは誰ですか?」
看護士は顎に手を当て
「確か碧空蒼時って言ってましたよ」
「あの少年か・・・」
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