第22話 先手

蒼時は神無を寮に置き風紀委員本部仮拠点に戻って居た


本部の中は人が絶えず動いている一目見てブラックだなと思う様な現場だった


その中に入り書類を運んでる人に話しかけた


「あの、ちょっと良いですか?」


「何?見て分かると思うけど今忙しいんだよね、それを見ても止めなきゃいけない用事なの?道案内とかだったら半殺しにするよ」


元ヤン感漂う女性に気迫で少し押され苦笑いしながら


「委員長今不在ですよね?」


「そうだけど、何?今の会議が終わったら即風紀委員副委員長の5人の出動命令が出るからこおの会議を1秒でも早く終わらせたいの。それを聞いても用があるの?」


「はい、黒神の次の目標が分かりました」


周囲の喧騒が止み一瞬の静寂が訪れさらに大きな喧騒が始まった


「おい!机持ってこい!」


「地図も忘れるなよ!」


「今ある全資料持ってこい」


蒼時を囲う形で新たなブラックな職場が完成した、これで蒼時も社畜の仲間入りだ


新たな机の上に電話が置かれスピーカーにして周囲が静まり返った


7コール程して委員長の声が聞こえた


「何だ?!今は重要な会議中だって知ってるだろ?!」


周囲が冷や汗を流して


「2回は俺ら殺されたな」


全員が頷いた所で


「碧空蒼時です。黒神の目標が分かりました」


「っな何?それはホントか?!」


「はい俺の知人の家に黒神が殺害したと思われる男性の制服が落ちていると連絡がありその中にある遺言で分かりました」


「制服?学校の運営に1年生はまだ関わって無いだろ?なのに何で制服なんだ?」


周囲の人が一斉に思った


(そこじゃ無いだろ・・・)


「その日模擬戦があったので制服なんですよ」


学園の制服は頑丈に出来ており防弾、防刃だけでなく防寒、防熱、防刃も備わっている戦闘服に近い物だ。それで生徒の身を守るのだが能力と武器を合わせると大抵貫通してしまう、その為に医療棟がある


そして一番は支給と言う事だ。支給の為完全無償。修繕も無料だ。その為模擬戦等服が破れる、汚れる場合制服を使うのだ


それを委員長は知っている為軽く頷き話を戻した


「それでその遺言の中身は?」


携帯をポケットから出して


「関係のある物だけ説明します。黒神の今向かっている所は国連軍太平洋基地です」


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


周囲が息を呑んだ


「何故黒神は国連軍基地を狙う?」


「動機は分かりません。でもこれが事実なら全ての辻褄が合うんですよ」


委員長は大きく息を吸って吐いた


「成程・・・黒神が一枚上手だったのか、ッチ」


二人が納得していると周囲は?で埋め尽くされた


一人が代表して二人に聞いた


「何がどう進展したんですか?」


「俺が説明します。まず黒神が風紀委員本部を襲撃した理由です、風紀委員本部を襲撃しても警備が薄くなる所は無いと言う結論が出ましたね?」


「そうだぞ、そんな警備体制は作って無い」


周囲が頷きながら蒼時を見た


蒼時は手を後ろに組み


「それでもあるんですよ警備が薄くなる所が」


誰かが蒼時の言葉を遮った


「だからそれはどこなんだ?!」


その言葉を発した瞬間電話から怒鳴り声が響いた


「黙れ貴様ら!碧空が説明してるだろ!お前達が悔しいと思ってるのは良く分かる。私も同じだからだ。でも今それをぶつける時では断じて無い!だから碧空の言葉を聞いてやれ」


周囲の空気が一瞬で変わり蒼時を抜いた全員が敬礼した


「話を続けます、薄くなる所は東京学園国際空港。襲撃した理由はこの空港を封鎖させる為です」


「・・・・・・・・・・・」


「怜王は俺らに要人を狙わせるのが目的だと思わせる為に本部を襲撃しました。怜王の狙いは当たり空港は閉鎖して警備は薄くなりました、恐らく怜王は今滞在中の大将の航空機を奪って国連軍基地に向かうと思います」


秒針が聞こえる程部屋が静まり返った


そして蒼時が席に着いた瞬間部屋に声が木霊した


「行くぞぉぉぉぉ!」


「目標は空港だぁぁぁぁぁ!」


その話を聞き電話から重たい声が流れた


「それは出来ない」


「・・・・・・・?」


全員が理解しようとするが出来なかった


一人が椅子に深く座って下を向き尋ねた


「どうしてですか委員長?俺黒神に同僚怪我させられて今入院中なんですよ、怪我は治りましたけど黒神にやられたことがトラウマなのか未だに起きません。医師もお手上げです。だからせめて、逮捕したいんです。その気持ち分かりませんか?」


「お前の気持ちは痛い程分かる、でも認められない」


「ど、どうしてですか?!」


「総統内閣の決定だ。我らは今滞在中の人を守り3か国の軍が黒神の逮捕を行う」


「そんな、それはダメなんじゃ・・・」


「総統内閣が許可したら非常事態と言う事で出来るらしい」


「で、でも何で?」


「総統内閣は新入生歓迎会が失敗に終わるのが怖いらしい、内閣結成後初めてのイベントこれが失敗に終われば自分の家の恥さらしとなる。それに、会社の跡継ぎや政治家に成る事も出来なくなる。リスクが大き過ぎるらしい。その点外国なら失敗すればそれを名目に学園には入れなくなるリターンもある。」


周囲に重たい空気が流れる


「で、では、我々は出ることが出来ない・・・?」


「そうなる」


「そ、そんなのおかしいですよ!」


「私もそう思っている!でも生徒達の考えの殆どがその考えならその生徒たちを守る我々が従わない訳にはいかないだろう?」


委員長の声は重く誰よりも悔しがって居た


蒼時は仮設テントを出ようとしたすると電話から声が発せられた


「どこに行くんだ?碧空」


蒼時は首だけ捻り電話の方を向いた


「電話越しでも俺って分かるって凄いですね」


「話を逸らすな、どこに行く?」


「総統に会いに行きます、俺は何の役職もありませんだから俺の総統への訴えは小さな小さなデモに成るだけです。それにもし黒神を風紀員が逮捕出来たら3か国並みの軍事力が風紀委員にはあるって抑止力になりますから。可能性はゼロでは無いです」


「私達は一切関知しないぞ、要請が出たら逆に碧空を逮捕する立場に成る。それを分かってるのか?」


「はい、勿論です」


「では最後に先輩としてアドバイスしよう。無理はするな」


蒼時は返事をしないで仮設テントから出た


本部に来た時と同じ原理で総統官邸に着いた


(デモか~何から始めようか?)


考えに考え抜いた結果


「黒神を逮捕する手段を俺は持っている!!」


この発言を繰り返すだけだった


喉が潰れたら時間を戻して直すこれを30分程度続けてたら


「君、ホントにうるさいよ」


警備員に注意された


しかし外から一人の男性が走って来た


さっき蒼時を注意した警備員は敬礼して


「黒神を逮捕出来るってホントかい?あっ僕は防衛大臣だよ」


いきなり官僚のトップが来て驚くが蒼時は決意を固くして


「本当ですよ」



蒼時は大臣室に案内された


大臣室は言うまでもなく綺麗だった


「で、逮捕する方法は何だね?」


「まず怜王は空港に向かいます。そこで全勢力を投入する考えです」


「随分抽象的だね」


「怜王の能力がまだ確実では無くて・・・」


「ホントに逮捕出来るのかい?」


「良いんですか?」


「何君が驚いているんだよ」


「許可が下りると思わなかったので・・・」


防衛大臣は少し笑い腕を組んだ


「僕はね親も家も一般庶民なんだ。だからこの役職には付ける筈が無いんだよ」


生徒会長等の学校運営に携わる者の殆どがその後政治家をしたりするだから有力政治家の子供等お金持ちが多いのが現実だ


「でも、前大臣は僕の素質を買ってくれてね。反対が多い中僕を推薦してくれたんだよ。その時前大臣は自分の正しいと思う事をやれって言ってくれてね。僕はその言葉を裏切りたくないんだよ。だから了承したって訳だよ」


「成程、ではホントに良いんですね?」


「ああ、勿論だ」


防衛大臣の言葉が終わる前にドアが大きな音を立てて開かれた


「き、君は・・・」


「大きな音を立ててごめんね。あっそこの君は僕が誰か分からないか。僕は総務省大臣だよ名前は後で調べて。まぁ盗み聞ぎした事は先に謝るよ」


「何をしに来たんだい?」


開けたドアからゆっくりと歩きながら


「君がしようとしてた許可は認められない」


「な、何故だ?」


「生徒全員と君は同じなのかい?」


「それは、違うけれど」


「そういう事だ。もし許可を出したらその許可を消して君の役職は解雇だ。せっかく良い役職を貰ったんだから大切にしな」


総務省大臣が部屋を出た瞬間机を大きく殴りつけた


「クソッ!ごめん」


「良いですよ」


蒼時は部屋を出て風紀委員に連絡した


部屋の中では


「劉頼めるか?」


「承知しました、目的は空港ですね」


防衛大臣秘書の劉が動き出した


そして劉が空港に着く2分前に空港でテロが起きたと風紀委員に連絡が入った


それは間違いなく黒神怜王の仕業だった



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