第10話 昔話

二人はベンチの上に座っていた。


ベンチは座ると少しの冷たさを感じさせた


そんな中蒼時の方から初めに口を開いた


「俺はな、自分で言うのもおかしいけど何でも出来るんだよ」


神無はきょとんとした顔を作りその後軽く笑った


「自分で言うかな?」


蒼時は少し顔に風を煽り


「まぁ、聞いてくれ」


「うん」


「人はな何でもできる人間が怖いんだと思う」


再び神無は首を傾げた


「そうなの?」


「俺の推測だが、人は支えあって生きるだろ?」


「うん」


「食べるのも、食料を作る人が居て寝る所も着る物も一人では作れない。でもそれを一人で出来る奴が居たら嫉妬、妬みを通り越して恐怖に変わるんだよ」「えっ?でも蒼時君、食べるとかは人より我慢できるだけって言ってたよね?」


「今はな、ストレスで少し能力が劣化したんんだ」


「成程ね」


「話を戻すぞ、例を挙げよう。俺は新潟で生まれた1歳までは可愛がって貰えた、ただ2歳になると俺は自分の出来る事を探し始めたんだ、マズローの欲求5段階説に乗っ取ってな。服は破れても汚れても時間を戻した、言語も大人の会話を聞いて英語なら中学生レベルまで出来るように成った」


神無は素直に顔を綻ばせて感心した


「すごいね」


「ここまでならな、ただ俺は家の家計が厳しいから食べ物を食べなかったんだよ、その時は大丈夫だった、でも俺が食べてない情報がどっかから漏れたんだ。最初は親を糾弾するだけだった、でもある時殺人事件が起こったんだよ」


「まさかね」


蒼時は気にする様子もなく淡々と話した


「そのまさかだ、俺を疑われたんだよ、その死体の肉が食われてたから。後に分かったが動物が食べただけだった。けど大人達は俺を疑った。でも証拠が見つからないから警察は手出し出来ない。だから俺は隔離されたんだよ」


神無は空気を換えよと必死に言葉を絞り出した


「ご両親はどうしたの?」


「親は糾弾された事が切っ掛けで鬱に成り、こうなったのは俺の所為と恨み始めてたよ」


壮絶過ぎて言葉を失った


「・・・」


そんな神無の様子を見て蒼時は更に淡々と話した


「でも隔離されてたからその恨みはあまり来なかったけどな。それに隔離生活も悪くなかった。狭い部屋で誰も来ないで生活するだけだからな。そんな日々が何年間か過ぎた。けどある時町に災害が訪れたんだよ。新潟県中越地震だこれで村は全滅しかけたが、俺が部屋から逃げ出し村を救った。すると何て言ったと思う?」


神無は気を取り直して首を傾げた


「何で逃げ出した?とか?」


「違う、この子も助けてよや妻を助けてよって言われたんだ。家を直せても命は直せない、死んだら魂が無くなるそれを引き戻す事は俺には出来ないからな」


神無は自分が考えた最悪の結末より酷かった為言葉が詰まってしまった


「・・・仕方ないよ、蒼時君が悪い訳じゃ無い」


蒼時は神無の言葉を素直に受け取り軽く微笑んだ


「それを言ってくれると有り難いが町の人は違うんだよ、これは俺がやったことだって決めつけて来たんだよ、プレートの位置が分かれば時間を進めて出来るが俺は何年間も狭い部屋に居た、出来る訳無いんだ。でも人々は俺がやったと決めつけたんだ。俺は耐えれなくなり何年間か山に籠った、でも耐えれなくなって親にすがろうとしたら、さっき言ったように俺を恨んでたんだよ。」


言葉を紡ぐことが出来なかった


「そんな・・・」


「で、村を飛び出て今に至る訳だよ」


神無はその話を聞き終えると泣きながら


「私、そんな経験知らなくて、なのにあんな事言って。最低だね」


蒼時は首を左右に振りながら答えた


「俺は助かったよ、最初神無を助けるか迷った、けど助けたいって強く思うことが出来たんだ。それは神無のお陰だよ。」


泣き下を向いてた神無が顔を蒼時の顔を覗き込むような形で上に向けた


「私を許してくれるの?」


蒼時は気が付いた様子でクスリと再び笑った


「許すも何も俺は神無に恩を貰ってる、それでこのワンピースでその恩を返すよ。だから許すとか許さないとかじゃなくて。これからは友達として一緒に居てくれないか?」


「良いよ。今度は絶対離れないからね!」


その言葉を聞き蒼時はささやく様に


「ありがとう」


言った


「そういえば、神無は親どうしたの?」


神無は聞かれると少し顔を下に向けた


「行方不明」


「ごめん・・・」


蒼時の言葉を聞いた途端顔を上げて何かを決意して口を開いた


「いいよ、蒼時君が話してくれたんだから私も話すよ。私が幼い頃両親が行方不明に成ったの、警察はお手上げ何も出来なかった。そして家のローンが私一人で払える筈もなく、引き払う時一枚の写真があったの。それを見つけてから色んな人に狙われたの」


蒼時は疑問に当たった


「その写真持ってる?」


そう言われ神無はポケットから一枚の写真を取り出した


「これだよ」


蒼時は写真の男に見覚えがあった


「これ!アークじゃないか!」


神無は写真を再び覗き込み


「誰それ?」


「アーク、クラリスアーク。国連軍総裁。今の軍職トップだよ!」


神無は驚いて椅子の背もたれに引っかかった


「何でこんな写真が内にあるの?」


「知らない、でも神無の両親の秘密に繋がることは確かの筈だ」


「う~ん、でも国連軍の総裁何かに私たち会えるの?」


「無理だろうな。本拠地を襲撃しても2秒で殺される」


「まぁ、私が考える事だから」


すると蒼時は何かに気づいた


「あるぞ!アークに会える方法が!」


「な、何?」


蒼時は間をあけて口を開いた


「一年に3度12の学園で優勝校を決める。その優勝校が外国の優勝校と戦いそのMVPに輝いた人が、国連軍総裁に会えるんだよ!」


「それこそ無理なんじゃない?」


「確かに敗戦後日本は優勝した事が無い。でも一年の最後に行われる4人組で相手と戦う競技は行けるかもしれない!」


「何で?」


「団体戦だから強い奴が仲間に成れば良いんだよ!」


「あっ!成程!」


(そんな簡単に信じるなよ、まぁその意気で行くか)


「良し!そうと決まれば入学するぞ」


「うんって待って?!何で蒼時君も?」


「神無には大きな恩があるからそれを返させてくれ、あのパンの恩は絶対返すから」


神無はいたずらっぽく笑うと


「恩はワンピースで返してくれたでしょ?だから友達として助けてよ。もう絶対蒼時君を一人にしないから、私も一人にしないで」


こうして二人は神無の両親の謎を探るため学園に入学する

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